第3号:採用担当者の夏休み

今年の夏は台風と猛暑の繰り返しですが、暑中お見舞い申し上げます。殆どの大学では前期末試験も終了し、賑やかだったキャンパスも静けさを取り戻しているのではないでしょうか? この時期は就職情報企業から企業人事部向けにいろいろなセミナーが開催されるシーズンで、企業の採用担当者は夏休みのことを考えながらも、もう来年の採用活動の企画について急き立てられるように思いをめぐらせます。セミナーの内容は、以下の3通りのパターンが多いです。

1.この春の就職戦線全体の傾向分析

2.採用活動を順調に終えた企業の担当者を招いた事例紹介

3.秋から販売される新商品の紹介

採用担当者は、夏休み中にこのようなセミナーを参考に、春の採用活動の分析を行い、成功点・失敗点について、いろいろと議論をして夏の終わりから秋の始めにかけて来春の採用活動の計画を考えます。ちょうど大学の先生が夏休みに自己研鑽をされるような充電期間といえるでしょう。

ところが、最近の就職情報企業から紹介される商品には、就職シーズンの超早期化により、現在の内定者に対する研修システムや、内定者の辞退を防ぐようなフォロー対策を企画した商品も増えています。内容をみてみると、パソコンの使い方、決算書の見方、という実務的なものから、組織での行動、自己啓発の仕方、キャリアプランの考え方、という社会人教育に関するものまで多彩です。

更に加えて、ブームに火がついてきた、夏休み期間を利用したインターンシップ(多くは3年生対象)の企画商品も登場しつつあります。

というわけで、季節労働者と言われている採用担当者の、唯一のやすらぎ、ともいうべき夏休みも、もはや風前のともし火になって参りました。これはある採用担当者のつぶやきです。「通年採用というのは、1年中、学生の応募を受け付けるということではなく、採用担当者が1年中忙しいってことさ。」

 

第2号:内定者フォローのシーズン

7月になり、多くの企業は作用活動の大詰めに入ってきています。例年であれば、もう少し追加採用をしようか・・・と考える企業も、不透明な景気動向、今年の学生のレベルを考慮して、無理に追加募集をする企業が減っており、内定を出した学生へのフォロー活動を始めています。

今年の内定者フォローの傾向は、「入社意思再確認型」に加えて「キャリアカウンセリング型」が登場してきていることでしょう。今年は絶対的な求人数が少なく辞退先が減ったこともあり、内定者の相談は「他社と迷っているのですが・・・。」から「私のやりたいことは、本当にできますか?」という不安に変わってきています。職種別採用や、インターンシップという、採用のミスマッチを防止するための新たな採用手法の導入が進んでいるのも、本人のやる気重視という面に加えて、学生のそういった精神的不安に対応する効果も狙いです。

しかし、そういった就職に対する不安は、社会人となるために若者が必ず越えなければならないハードルであると思います。あまりに学生に対して用意された環境は、若者の本来の力である、未知なるものへの挑戦、不安な状況に対処する精神的強さを削ぐことになり、熱帯魚のような完備された環境でしか生きられないひ弱な若者を育ててしまうのではないかと心配になることがあります。多くのメディア情報や自己分析過多の影響で、自分のやりたいことも誰かに決めて貰う、という若者が出てこないよう願っています。

若者には人間的成長を支援するための、大人の対応が必要だと思います。家庭における父性欠如の役割を、採用担当者にまるごと期待されても困りますが、大学就職部のガイダンスにおいても、業界セミナーだけではなく、企業人からも現代の若者が陥りがちな点をアドバイスしてあげたいものです。