第284号:お客さん化する学生

私立大学では春学期(前期)の期末試験の時期になりましたが、私の授業を履修している学生から、「企業のインターンシップに行くので、試験が受けられません。どうすれば良いですか?」という相談が増えてきました。来年への布石として、企業による夏季インターンシップの早期コンタクトが増えてきているのを実感します。キャリア教育の担当教員としては、できるだけ学生の希望は聞いてあげたいのですが、学生の態度を見ていると悩みます。

 

私の昭和時代のノスタルジーかもしれませんが、こうした場合、学生から「スイマセンが・・・」という配慮の一言が欲しいと思います。期末試験期間というのは学期の最初から決まっていて、シラバスにも試験実施と書いてあるのですから。にもかかわらず、当然の権利のように自分の都合への対処を求めるのは如何なものでしょう?企業から一方的に呼び出されるインターンシップならまだしも、中には「サークルの合宿があるので」「友人と旅行に行くので」という私的な理由を臆することなく主張する学生もおります。

 

そこで頭に浮かぶのは、この学生は企業のセミナーでもこんな態度をとるんだろうなあ、ということと、ああ、またバブルの売り手市場と言われた頃の再来か、ということです。

 

好景気の際の企業セミナー開催では、多くの採用担当者が学生集客に躍起になります。如何に多くの母集団を形成するかが使命ですから。その結果、学生には無数の企業からセミナーから案内が届きます。ネット時代の学生側からは当然のことですが、多くの会社にエントリーをして、結果ダブルブッキングでドタキャン&ブッチ、無理してセミナースケジュールを詰め込んではセミナー会場に滑り込む・・・。

 

授業での学生の態度を見ていて更に心配になるのは、学生の態度は相手に対して相対的だということです。マナーとかモラルというしっかりした自分軸をもって振る舞う学生がだんだん減り、教職員の対応によって自分の態度を決める学生が増えています。学生に対してちょっと配慮をしてあげると、どんどん要求がエスカレートしてきます。つまり優しい教職員ほど、苦労が増えるわけですね。

 

私の授業でも、いつも遅刻する学生が居るので注意したところ、既に企業で見習いのように働いているとのこと。それは大変だとその時は不問にしてあげたら、どんどん遅刻時間が遅れるので再度また注意したところ「先生、何も注意しなくなったので、認めてくれたと思いました。今日は30分遅れましたけど、タクシー代、5000円使ったんですよ!」と主張されました(何処から来たんだ?)。

 

そういえば、第二次大戦における日英の外交に於いて、チャーチルが議会の無理な要求を日本に突きつけ続け、日本はいつかわかってくれるだろうと要求をのんできたところ、英国議会の要求はどんどんエスカレートし、日本はもう堪忍袋の緒が切れた!と開戦に至ったはずです。学生と企業が開戦する前に、しっかり大学で教えなくては、と意を決した春学期の終わりでした。

 

第283号:動活(動画を使った就職活動)2.0とは

皆さんは「ドー活(動活)」という言葉はもう耳にされていますか?この春の就職活動を終えた学生に様子を聞いたところ「最近、動活というものが出てきたらしいですよ。」とのコメント。さてはまたブラック企業に面接で脅された(恫喝)のか?と思ったところ、動画を使った就職活動(自己PR)のことだそうですね。

 

このサービスは、昨年の秋からチラホラ聞き始めました。上位大学の学生がスマホで自分のPRを撮影し、企業採用担当者むけの求人サイトにアップする仕組みです。いわゆる逆求人企画のネット版といえばわかりやすいでしょう。このシステムの最大の魅力は、動画の効果と言うよりも、上位校の学生に絞られているという初期選考の労力削減になるところです。いくら机の上で学生の生の姿が見られるといっても、膨大な応募者全部を見る時間は採用担当者にはありませんから。

 

一方、企業側も採用広報セミナーをビデオで収録し、オンデマンドで学生が時間や場所に囚われずに見たい時に見られるシステムも現れ、なかにはリアルタイムに学生とコミュニケーションできるサービスも出てきましたから、地方学生には朗報でしょう。こうした企業側の動画の活用は、今後ますます進んでいくのではないかと思います。動画のコンテンツは作成は手間がかかりますが、一度作ってしまえば何度も再生ができますし、ネット配信ならばセミナー会場の確保というコストもかかりません。どの程度見られたかという聴取率も測定することも可能です。

 

さて、では大学では動画をうまく就職支援に活用できているかというと如何でしょうか?キャリアセンターでは、模擬面接やグループ・ディスカッションの対策ビデオを用意して誰でも閲覧できるようにしているところもありますが、上述の学生・企業との使い方での大きな違いは、動画を一方向の情報提供だけで使うか、双方向のコミュニケーションとしても活用するかの違いです。手垢の付いた言い方ですが、動活2.0ですね。

 

そんななか、大学でも動活2.0的な使い方が出てきたと感じています。それは授業での動画を使った課題作成&報告です。経営学関係のゼミ等で、研究対象企業に協力して貰い、学生にビデオで調査報告させるものです。これはビデオ制作という作業を通じて企業と学生(大学)がコミュニケーションをとり、相互理解を深めることができます。そうしてできたコンテンツが、ゼミ報告だけではなく、大学の資産として活用されるようになれば、素晴らしいのではないでしょうか。採用活動が大きく変わろうとしている今、動活は大学と企業が直接に関係をもつために絶好の機会になると思います。

 

さて、今年も法政大学で新しいビデオ教材の研究報告会を開きます。今回はキラリと光る中小企業(製造業)と流通小売業(百貨店)を舞台にした新作2本と、新たに「ビデオ教材の活用法」という教職員向けのビデオ(参加者に差し上げます)も作成しました。動活2.0も話題にしながら情報交換をしたいと思いますので、ご関心のある方は、どうぞお越し下さい。

 

▼「新作教材ビデオ」ワークショップ(8月1日)⇒教職員向けです。

http://3dep.hosei.ac.jp/event/details/2014/06/16/id3290