第228号:楽観は性格ではなく意志と能力

いよいよ採用選考解禁が近づき、新聞雑誌上に毎日のように就職活動や雇用のテーマが取り上げられるようになりました。採用担当者も、エントリーシートの募集を締め切って書類選考をはじめたり、リクルーターを使ったりで、応募者集団の絞り込みに入りつつあります。街を行くリクルートスーツの学生さんの顔も、益々緊張感が高まってきたようです。しかし、こんな時だからこそ、学生の皆さんには得意の笑顔で頑張って欲しいと思います。それこそが採用担当者の求める「一緒に働きたくなる人」だからです。

 

採用担当者や社会人OBが、学生さんから「企業の求める人材は?」と尋ねられたとき、一番多い答えがこの「いっしょに働きたくなる人」ですね。これはかなり曖昧な表現で、採用担当者にとっては便利な言い方ですが、学生にとってはわかるようなわからない回答でしょう。それは人によってそれぞれ異なりますから。

 

しかし、これを「仕事仲間」という言葉に解すると、その包含する共通のニュアンスがわかりやすくなるのではないでしょうか?特に、新人としての仕事仲間とは、未熟でも大きく成長する可能性があり、将来、自分をサポートしてくれる、または会社を背負っていく期待の寄せられる人物です。具体的には下記のような就活行動をとる学生さんです。

 

・礼儀と元気がある・・・挨拶と笑顔がすぐに出る、初対面ですぐ名乗る

・成長意欲がある・・・セミナーや面接でノートをとりながら聴く

・学習能力がある・・・聴いた事に対して受け身ではなく積極的に質問をする

・対人能力がある・・・面接の質問を確認(会話)しながら進められる

・度胸と責任感がある・・面接で(正確ではなくとも)明確な態度で回答できる

・環境を楽しめる・・・面倒な作業もコツコツできる(行動することによって不安を消せる)

 

こう書いてみれば、なんだ当たり前のことじゃないか、と思われることでしょう。しかし、採用選考時期が近づいてくるほど、学生さんはこうした基本的なことを忘れてしまいがちで、選考会場に到着した時には緊張感でガチガチになっていたりします。当たり前のことが、当たり前にできなくなるのが、本番での状態なのですから。

もうひとつ採用担当者が求める人材をあげるとすると、可愛がりたくなる人です。それはどんな場面でも楽観的であろうとする意志と能力を持っていることです。人間は放っておくと(特に最近の若者は)悲観的になりがちで、失敗を極度に恐れています。しかし、失敗は未知の世界に挑戦した人だけが得られる成果であり、自分の限界に挑戦した人だけができる体験です。そして諦めずに続ける限り、それは失敗という結果ではなく、成功へのプロセスです。授業でも「大学生の失敗は財産だ、どんどんやれ!」というと学生は安心して逆に失敗をしなくなるものです。

 

日々の報道を見ていれば、学生を取り巻く環境は厳しいものに見えるでしょう。しかし、昨年の震災のことを思えば、環境ははるかに良いはずです。そうした楽観力で頑張れる人が、採用担当者の求める「いっしょに働きたくなる人」なのです。

第227号:KY学生のES

企業採用担当者のエントリーシート(ES)評価が忙しくなってきました。学生も大変ですが、採用担当者も大変です。中にはホテルに缶詰になって採点をしている方も居られます。ES評価に取り組む採用担当者のモチベーションは、会ってみたくなる学生のESを読むことに尽きます。しかしながら多くのESは、そうした採用担当者の気持ちを理解していないのでは、と思わされます。気持ちが読めない「KY」学生さんのESですね。

 

どんなESを書く学生なら会ってみたくなるのか?それはESの設問で定番の「学生生活で貴方が最も頑張ったことは何ですか?」という問いからも明らかです。つまり、難題を乗り越えて大きく成長した学生ですね。それも採用選考ですから、他者より抜きんでた能力や強味を期待しているわけです。ところが多くの学生がこんな書き方をしています。

 

「私は幼い頃から人見知りだったので、これではいけないと思い、あえて接客業のアルバイトに取り組みました・・・」

「私は人を引っ張っていくタイプではありませんが、周囲を俯瞰してから的確なアドバイスをするように心がけています・・・」

 

これを読んだ採用担当者は、どう思うでしょうか?会ってみたいと思うでしょうか?どうしてこのような自分の評価を下げる表現をするのか理解に苦しみます。自分の弱点が人並みなった、というものではなく、人一倍頑張って抜きんでた、という書き方をして欲しいものです。きっと書いた学生本人にとっては本当に頑張ったことなのでしょう。しかし採用選考は競争の場です。嘘はいけませんが、本当のことをまともに全部話すような人物は安心して採用できません。例えば営業の仕事では、顧客に対して自社の商品の欠点をすべて話すわけにはいかないように。(勿論、例外はありますが、それはベテランになってからの上級スキルです。)改めて学生さんに気付いて欲しいのは、就職活動というのは自分という商品の良さを一所懸命に売り込む場だということです。

 

確かに設問の「頑張ったこと」には、「弱点を書く必要はありません」とか、「強味を書いて下さい」とかは書いてありません。だからこそ、ここで読み手の気持ちを察しながら書く学生と、そうでない学生の差がつくのです。ESは面接に読んで貰うためのPRツールです。弱点は面接で突っ込まれてから話せば良いのです。勿論、ここでも本当のことを全部言うかどうかは考えるべきです。

 

もうひとつ気になる書き方があります。ESに具体的なことを書いていない学生が居るのです。本人に尋ねてみると「それは面接で会ってから詳しく話すつもりです。」とのこと。残念ながらそんな方には面接のチャンスが来るとは思えません。膨大なESを短時間で評価しなければならない採用担当者の気持ちを汲んで、出し惜しみせずに魅力的に書いて欲しいと思います。ES評価で不合格になったら元も子もありませんから。