メディア報道は一段落してきた気配ですが、その後の大学生の内定取り消し数は文部科学省によると732人(264校)になったそうです(1月24日現在)。昨年(302人)との比較では倍増とのことですが、経済状況の違いも比較しないと、どちらが深刻かは言い難いと思います。それよりも気をつけたいと感じるのは、どさくさに紛れて出てくる「便乗」内定取り消しです。
「赤信号みんなで渡れば恐くない」ではありませんが、日本人の行動特性に「バスに乗り遅れるな」があります。内定取り消し騒ぎが大きくなると、これに感化されて以下の3者の悪意に基づいた「便乗」型の内定取り消し騒動が現れる可能性があります。
1.企業の悪意によるもの
企業が第三者を使って内定者に内定取り消しの連絡をするケースです。直接内定者本人に電話があり、内定企業の社名を名乗り、一方的に内定取り消しを行うケースです。内定者が説明を求めても「理由を説明する必要は無い。」と早々に電話を切られます。法律知識に乏しく泣き寝入りをする精神的に弱い内定者を狙います。内定者が当該企業に改めて電話をしてみると、知らないふりをして「そんな事実は知りません。」と何も無かったようにしらばくれます。
2.内定者の友人の悪意によるもの
内定者本人になりすまし、内定企業に電話をかけて辞退を申し出るケースです。昨年あたりからチラホラ現れてきました。しっかりした企業であれば本人確認や内定辞退の理由まで求めますが、今年のように経済状況が急転して内定者数が過剰になってしまうと、企業も詳細を聞かずに喜んで受け入れてしまう場合があります。内定者本人は自分が内定辞退扱いになったことに気づかないでいることもあり、非常に危険な状態におかれます。ちなみに私が在籍していた企業では、内定辞退の連絡があった場合は、その場で受け付けずに必ず面接を担当した採用担当者に電話を代わり本人確認をしていました。相当大規模な企業でない限り、採用担当者は自分が内定を出した応募者はハッキリ覚えているものです。
3.内定者本人の悪意によるもの
まれなケースですが、内定者自身が「企業に内定を取り消された」と就職課等に訴えるケースで、内定者の狂言によるものです。何らかの理由で内定者が内定取り消しの身分を得たい場合です。精神的に問題があって(ノイローゼ)発作的に行動する、留年が決まって卒業ができなくなったとき等です。今年のように内定取り消し者向けに大学が授業料減免等の救済措置を行うようになった場合、後先考えずに飛びつく学生が現れる可能性があります。
いずれにしても犯罪になる可能性があり、関連3者(企業・大学・内定者)が冷静かつ早急に状況を確認して対応すれば、これらの悪意から逃れることはできるでしょう。振り込め詐欺のような悪質な犯罪が信じられないほど頻発する時代ですので、こういった可能性を考えた対応策を用意しておく必要がありそうです。いやはや寒い世の中になったものです。