第232号:ミドルレベル学生の成長機会

「ニュースなど見ていると、就職活動シーズンはもう終わりですね。就職浪人した方が良いかと親と相談し始めました。」今週、たまたま大学で耳にした学生と就職相談員の会話です。ああ、この学生も相談員も苦労しそうだな・・・。この時期はなかなか結果の出ない普通の学生にとって絶好の成長機会であり、ここでどう変われるかどうかが就活学生の人生を決めることになると思うのですが、意識や行動の切り替えはなかなか難しいようです。

 

この学生はハキハキとした対応をしており、一見、コミュニケーション力があるように見えますが、相手の気持ち・反応を見落とすタイプだと感じられました。自分自身の思い込みが強く、なかなか自分の失敗を認めずに環境のせいにすることが多いので、採用面接では注意して評価する必要のある応募者です。皆さんのご経験でも変に主張力のある学生より、素直に変わっていける学生の方が指導しやすいのではないでしょうか?

 

授業をしていても、最近はこうした学生が増えてきている気がします。その特長は以下の通りです。

1.情報に敏感であるが思い込みが激しい(耳年増満足型)

2.情報を鵜呑みにして根拠を調べない(コピー&ペースト型)

3.自己主張が強く発言力がある(一方向プレゼンテーション型)

4.自分の都合の良い環境を求めて移動する(ゲームリセット型)

5.なかなか行動変革(成長)ができない(発達障害型)

 

外部労働市場(転職市場)が発達した米国ではこうしたタイプは珍しくありませんし、寧ろ標準的なタイプかもしれません。いわゆるジョブホッパーではないかと中途採用面接でも慎重に判断します。こうした若者が日本にも増えてきたということは、グローバル化の影響なのかもしれません。最近、ビジネスの世界ではゲーム理論が流行っていますが、ゲームのように、ちょっとうまくいかなければリセットしてやりなおす感覚なのでしょうか。その価値観が変わらない限り、結果も変わらないでしょうし、安易な留年や転職は不利になるだけです。しかも今の就活シーズンの終わりは、トップレベル学生の終わりであって、ミドルレベル学生の本番はいよいよこれからです。

 

今週の授業で「採用担当者は敬語の間違いはあまり気にしないが、学生言葉は気にする。」と話しました。慣れない敬語の失敗は新しいチャレンジとして初々しく見えますが、学生言葉は場面毎で言動を切り替える能力不足と判断されがちだからです。それこそ仕事での即戦力性ともいえるでしょう。

 

最近、私が改めて認識を新たにしているのは、学生と教員とは襟を正した大人の会話ができなければならない、ということです。学生にフレンドリーに接するのは良いことですが、授業がすべてそのムードになってしまって友達みたいな先生だらけになってしまうのは困りものです。締めるべきところは締めて、大人の世界を感じさせなければならない、と思っています。

 

 

第231号:一般職に求められるものの変化

GWが明け、大手企業では総合職の内定出しが進み、辞退者対策(追加募集の有無)の検討に入ると同時に一般職の採用選考がヤマ場になってきました。一般職の採用選考基準について着目してみると、はレベルだけではなく求められる内容や環境が変化してきています。しかし、一般職を志望する学生の意識はあまり変わっていない気が致します。ここ数年のミスマッチの背景を整理して、採用担当者が求めている意識の変化について考えてみましょう。

 

一般職の就職活動の環境変化には主に以下の点があげられます。どれもこの15年ほどで大きく変わってきた点であり、景気が良くなっても元に戻らない構造変化です。

・仕事が減少・無くなった

⇒IT,アウトソーシング等による企業の業務改革(単純作業の削減)

・仕事が変化した

⇒準総合職の創設、コスト部門からプロフィット部門にして成果(売上)を求める

・代わりが増えた

⇒派遣社員導入による正社員の削減(人件費の固定費から変動費化)

・競合する強敵が増加

⇒総合職指向の非社会学系有名大学女子学生の参入(総合職を一般職の待遇で採用)

 

その一方、一般職を志望する学生はこうした環境の変化に気付かずにいるようです。この10年間、模擬面接をしておりますが、相変わらず「サポート役」として支援したいという意識に変化は感じません。(そもそも大手企業のセミナーもそうした点をしっかり伝えているようには感じません。努力しなくても学生が集まるからです。ハッキリ言って採用担当者としての努力不足を感じます。)

 

さて、こうした環境の中で一般職を志望する学生にはどんな意識を持って貰うことが必要でしょうか。私は売上向上意識と、経費削減意識の2点をもつことだと思います。

・総合職の仕事を知ろうとする努力をする

私自身、営業職時代に一般職の社員にサポートして戴いておりましたが、デキル一般職は、総合職である私の仕事を知ろうとし、自分のやっている仕事の意味や前後の流れを理解しようとしていました。つまり、言われたことを言われたとおりにやっているだけではなく、自分で理解/判断しているのです。その結果、トラブルを未然に防いでくれたり、トラブルがおきても対処が速いです。

・コストを下げる努力をする

これは自分の仕事を理解してきたら、いかに速く・無駄なくできるかを考えることです。これも言われたことを言われたとおりにやっているだけではなく、常にこの仕事は本当に必要なのか?もっと楽はできないのか?と考えることです。自分の仕事がなくなってしまうのではないか?などと心配する必要はありません。そうした人には必ずもっと高度な仕事が依頼されるようになりますし、逆にそうでない社員は、上述の派遣社員やアウトソーシングにいずれ置き換えられてしまいます。

翻って、皆さんの大学の一般職は、こうした意識をお持ちでしょうか?サポートしたいなら、サポートする人の仕事を知る努力をすべきです。是非、学生に問うてみて下さい。一般職のやり甲斐に改めて気付く学生も多いと思います。