採用担当者にとっては少し緊張感を伴う内定通知日(10月1日)が近づいてきました。今年は採用選考期間が長くなったので、この時期に内定先を迷っている学生は少ないようですが、リテンション(内定辞退者防止策)もしっかりしないと痛い目を見ることがあります。
外資系企業(特にコンサルティング業界)では昔から、集団形成・採用選考・リテンションの3つのプロセスをそれぞれに担当チーム作ってシステマティックに行われてきましたが、日本も採用の厳選化に合わせてリテンションにも力が入ってきました。しかし、一度決定権を応募者に委ねるとなかなか苦労します。攻撃より防戦の方が大変ですから、それが嵩じてオワハラなるものが生まれています。
リテンションというと以前は内定者の懇親会(食事会・飲み会等)を開くのが定番で、IT環境が整ってきてからは企業側が内定者のコミュニケーション促進のためにSNSを提供しますが、あまり有効ではありません。今は個人でSNSやLineを活用することができますし、企業とは距離をおきたい個人も居ります。密かに内定辞退を考えている学生であればなおさらです。そこで最近のリテンションもいろいろ工夫されてきました。例えば以下の様なものです。
・内定者の中で盛り上げ役を作って支援する
内定者の中にはイベントやコーディーネーター役が好きな人が居ます。このような学生は辞退をしない前向き第一志望者なので、「内定者の懇親会を開くなら開催費用(飲み代)を支援するよ」と伝えると、喜んでSNSやLineグループを立ち上げて仕切ってくれます。最近のSNSでは業者が直接に宣伝を流すのではなく、ターゲット顧客の友人が「いいね!」と言っていると間接的に宣伝する手法です。
・選考結果と将来の期待をフィードバックする。
先日、某大手企業のリクルーターの方に今期の内定者の様子を伺ったら「やたら自分の評価を気にする」とのことでした。大学の授業でも同じで、自分のレポートやテストの成績をとても気にします。アクティブラーニングが増えて学生と教員の距離が近づくと、ますますこの傾向は強くなる気がします。
大学教員には「リアクションペーパー」という短い授業感想を書かせる方がおります。教員にとっての「リアクション」は授業内容を学生がどのように受け止めたかという意味ですが、学生の中には教員が自分にコメントに回答(リアクション)をするためのものと思っている者がいます。
なので、採用選考結果(何処まで本当にことを言うかは別ですが)を伝え、更に将来の配属プラン(これも何処まで約束するかは別として)を本人に話します。
手間暇のかかることではありますが、本気で採用したい人物には努力を惜しむことはできません。厳選採用とリテンションはセットで扱うべきもので、収穫した後に丁寧に梱包して鮮度を保ってお客様(配属現場)に届ける高級生鮮食料品のようなものですから。