第336号:厳選採用&リテンション

採用担当者にとっては少し緊張感を伴う内定通知日(10月1日)が近づいてきました。今年は採用選考期間が長くなったので、この時期に内定先を迷っている学生は少ないようですが、リテンション(内定辞退者防止策)もしっかりしないと痛い目を見ることがあります。

 

外資系企業(特にコンサルティング業界)では昔から、集団形成・採用選考・リテンションの3つのプロセスをそれぞれに担当チーム作ってシステマティックに行われてきましたが、日本も採用の厳選化に合わせてリテンションにも力が入ってきました。しかし、一度決定権を応募者に委ねるとなかなか苦労します。攻撃より防戦の方が大変ですから、それが嵩じてオワハラなるものが生まれています。

 

リテンションというと以前は内定者の懇親会(食事会・飲み会等)を開くのが定番で、IT環境が整ってきてからは企業側が内定者のコミュニケーション促進のためにSNSを提供しますが、あまり有効ではありません。今は個人でSNSやLineを活用することができますし、企業とは距離をおきたい個人も居ります。密かに内定辞退を考えている学生であればなおさらです。そこで最近のリテンションもいろいろ工夫されてきました。例えば以下の様なものです。

 

・内定者の中で盛り上げ役を作って支援する

内定者の中にはイベントやコーディーネーター役が好きな人が居ます。このような学生は辞退をしない前向き第一志望者なので、「内定者の懇親会を開くなら開催費用(飲み代)を支援するよ」と伝えると、喜んでSNSやLineグループを立ち上げて仕切ってくれます。最近のSNSでは業者が直接に宣伝を流すのではなく、ターゲット顧客の友人が「いいね!」と言っていると間接的に宣伝する手法です。

 

・選考結果と将来の期待をフィードバックする。

先日、某大手企業のリクルーターの方に今期の内定者の様子を伺ったら「やたら自分の評価を気にする」とのことでした。大学の授業でも同じで、自分のレポートやテストの成績をとても気にします。アクティブラーニングが増えて学生と教員の距離が近づくと、ますますこの傾向は強くなる気がします。

大学教員には「リアクションペーパー」という短い授業感想を書かせる方がおります。教員にとっての「リアクション」は授業内容を学生がどのように受け止めたかという意味ですが、学生の中には教員が自分にコメントに回答(リアクション)をするためのものと思っている者がいます。

なので、採用選考結果(何処まで本当にことを言うかは別ですが)を伝え、更に将来の配属プラン(これも何処まで約束するかは別として)を本人に話します。

 

手間暇のかかることではありますが、本気で採用したい人物には努力を惜しむことはできません。厳選採用とリテンションはセットで扱うべきもので、収穫した後に丁寧に梱包して鮮度を保ってお客様(配属現場)に届ける高級生鮮食料品のようなものですから。

第335号:期末試験答案とエントリーシートの共通点-論外編

  • 期末試験答案とエントリーシートの共通点-論外編

夏休みも後半となりましたが今回は採点後のちょっとした笑い話で、答案で見た漢字の誤用をご紹介します。真面目に考えると笑っている場合ではありませんが。

 

▼読みが似ている間違い

「コーチの知事がわからない」⇒貴方のチームに「指示」しているのは県知事か?

「リーダーとして指切らなければならない」⇒約束は指切り、会議は「仕切り」が大事だ。

「即先して行動できる」⇒「率先」なら即戦力になれたかも。

「見内のなかでは」⇒「身内」は確かに見える範囲だが。

 

▼字形が似ている間違い

「主張には自分の陣をもつべきだと思う」⇒君は戦国大名か?自分の「軸」は大事にね。

「区悪犯による殺人事件の放動を見ると」⇒「凶悪犯」の「報道」だろうね。

「自分の椎格を変えたい」⇒まずは正確に「性格」を把握しよう。

「認耐力は身についた」⇒その「忍耐力」は認め難い。

 

▼字義が似ている間違い

「部活が急しい」⇒相当に忙しいらしい。

「錠破りなことをした」⇒「掟破り」か?オーシャンズか?

「討議の決論に至った」⇒気持ちはわかるが大事なのは「結論」だ。

 

▼間違えた理由が謎

「違ちがえた字で違ちがえた表現をした」⇒「間違え」に目がちかちかする表現だ。

「実じつを踏まえて」⇒「事実」は小説より奇なりです。

「悪魔で書き手は人間であるから」⇒あくまで?手書き試験で何故こう書く?

 

私の期末試験は持ち込み不可の手書き(記述式回答)なので、スマホ等での誤変換ではありません。漢字の誤用は昔からありますが、今は誤用というよりは、そもそも漢字の理解の仕方が昔と違ってきているのかもしれません。使う言葉の意味を頭で理解してから使うのではなく、見たり聞いたりした視覚・聴覚の印象で体感的に捉えている感じです。

 

さて、このように答案採点をしてきて思うのは2020年度入試改革のことです。周知の通り、この改革プランでは記述式問題が課せられようですが、果たして試験官は上記のような誤用についてどのような判定を下すのでしょう。

期末試験採点ならば、教員は教え子に単位を取らせたいという好意的な主観を働かせるでしょう。しかし、大学入試では客観性・公平性が求められ、なおかつ指定された期間内に膨大な処理(採点)をしなければなりません。外部機関(アウトソーシング)や人工知能(AI)による支援も議論されていますが、そうなると主観的な判断より、基本的語句、語彙数、記述量で評価されるのでしょう。こうした誤用が見られるのも今のうちかもしれません。