第92号:内定の取れない理由

この時期には内定の取れない学生の相談が多いですが、採用定員に満たず採りたくても採れない採用担当者の相談も多いです。この世に内定必勝法などあり得ませんし、採用担当者の考え方や方針も異なりますが、内定者に共通してみられる点、不合格者に見られる共通の点はあります。

経済状況が好転し企業はバブル期に負けない新卒採用意欲を示し始めていますが、春は大手企業に応募が集中し、辞退者数が多く追加募集が増えてきています。採用予定は増やしても選考基準は緩めないという方針は変わらず、正規社員と非正規社員の労働力を組み合わせるいわゆる「雇用ポートフォリオ戦略」で乗り切ろうという企業が多く、これからは第二新卒市場もますます本格的になることでしょう。早期退職(転職)の新卒社員がますます増えそうですが、これからはそれは決して悪いことだけはありません。

その結果、育成のための投資(能力開発投資)をされる正社員(新卒・中途採用)とされない非正規社員(派遣、契約)の待遇格差はますます広がり、日本社会では新卒採用されないと将来のキャリア形成がますます難しくなりそうです。

閑話休題、そうは言いつつも採用担当者は良い学生が居れば是非、採用したいという意欲はまだまだあり、これからの夏秋採用にチャンスは多いです。しかしながら、現時点で就職活動を継続している学生(最近就職活動を開始したノンビリ学生は除く)を見ていると、就職活動に対する大小の誤解(採用担当者の心の理解不足)により、結果の出せない学生が多いです。とある大学で「就職活動リターンマッチ」のセミナーのご依頼を受けたのですが、下記の10のチェック・ポイントをお伝えしました。是非、内定の採れない理由を明らかにして勝利をつかんで欲しいと思います。

チェック・ポイント10:

1.自分が通らない理由が推測できているか?

2.自己理解のための自己分析と就職活動のための自己分析を区別できているか?

3.業界志望、企業志望、仕事志望の違いは明らかになっているか?

4.面接者に元気・やる気は伝わっているか?

5.話す技術はちゃんと身につけているか?

6.話す内容の他社・他者との差別化はできているか?

7.話す内容の体系(論理関係)は考えているか?

8.ホンネとタテマエの違いを理解しているか?

9.「どう答えたら内定するか?」と考えていないか?

10.就職活動の最初と比べて人間が大きくなっているか?

*この時期、特に4番は大事です、採用担当者は元気な学生に出会える機会が無く困っています。

 

第91号:中途採用化する新卒採用

「4月から始めたばかりで・・・」「先月、留学から戻ったばかりで・・・。」「40社回っていますが、まだ1次面接が一つも通りません・・・。」「今の内定先で本当に良いのか迷っています・・・。」等々。

これはある大学で開いた就職相談で同じ部屋に集まった学生さんの相談内容です。相談内容がかなり多様化していますが、これは企業採用担当者にとっては今後の採用活動は中途採用化するということなのです。

昨年と比較してこの時期の学生の相談はかなり多様化しています。しかし、よく聞いてみるとそれは相談内容の多様化というより、相談時期の多様化であるようです。就職シーズンが早期化し、いろいろな情報が溢れているものの、あまり気にしないマイペースの学生が増えてきたということでしょうか。今年は売り手市場だから慢心しているというよりは、4月になってからやはり就職しようとという気になったという目覚めの遅い学生が増えているようにみえます。

さて、学生の就職活動のスタート時期が多様化するというのは、企業採用担当者にとっては悩ましいことです。企業の採用活動は効率化(いかに速く安く応募者と出会えるか)との戦いで、上述のようにスタートする学生がまちまちになると、採用活動の始期も終期も定めにくくなり、五月雨式に対応しなければならなくなります。そういう視点では、日本の新卒採用環境(新規学卒採用)は世界でもまれに見る効率の良い市場だったのですが、その環境が変わってきたのでしょう。

このような環境では、現在のような大規模な就職セミナーや広報活動を行って効果の出るのは大手企業に限られ、無名・小規模の企業の新卒採用は中途採用と同様に通年化するでしょう。場合によっては、新卒採用を中止して本当に中途採用だけに切り替える企業も出てくるかもしれません。現状では如何に内定者が出せても辞退者が多く、採用活動自体が水泡に帰することになっていますから。

3年ほど前のメールマガジンで、「早期化・長期化・集中化・多様化・通年化」というテーマで書きましたが、これがいよいよ現実化してきたということですね。採用担当者にとっては辛いことなのですが、そもそも採用担当者が長期化・通年化にもっていったのですから、自業自得ということなんでしょう。

もっとも、高度成長期の人手不足の時期は新卒採用ができるのは大企業に限られていましたし、少子化という大きな流れが時代を元に戻したのかもしれません。かつて人気だったサラリーマン(正社員)の身分の安定性が、いま改めて求められてきたように。