第125号:リアルな出会いに苦労する採用担当者

この時期は大学での就職セミナーに伺うことが多いですが、キャンパスを歩いていて昨年との明らかな違うを感じることは、リクルート・スーツの学生を良く見かけることです。昨年であれば冬休みに入る頃が多かったのですが、今年は11月に入ってから急に増えてきたようです。

 

おそらくその背景にあるのは、企業主催のセミナーが本格的に始まってきたことでしょう。特にこの時期の企業の動きで目立つのは、1~4日間程度の短期インターンシップです。昨年までは大学授業期間中である11月にはあまり見られませんでした。前回、「場つなぎに苦労する採用担当者」と書きましたが、それがこのような形で現れているのですね。

 

10月に就職Webサイトがオープンして企業の応募者受付が始まると、かなりの母集団(初期応募者群)が形成できて順調な滑り出しだ、と喜ぶ採用担当者がここ数年は多かったのですが、その後の実際の採用選考に関わるセミナー(1月以降)になると応募者がやってこない、と顔色を変える方が増えてきています。そのため、”繋ぎ止めるためのセミナー”を開催しているわけですね。ネットでの出会いを、早くリアルなフェイス・トゥ・フェイスの出会いにして少しでも応募意欲を高めたいということでしょう。

 

更に現在、実施されている短期インターンシップを見ていると、比較的小規模でセミナーの目的が特定の分野や特定の学部・専攻に向けて特化しているものが増えています。この時期、あまり大規模なセミナーを開催しても大学の授業で参加できない学生が多いのと、やはりフェイス・トゥ・フェイスの出会いを濃くするためには小規模な方が望ましいからでしょう。そして、その小集団も特定の目的を持たせた方が、企業も学生も無駄がありません。

 

ただ、こういった状況となると、やはり大学の授業への影響が気になります。前回、こういったセミナーが社会人教育とかキャリア教育になりうると、半分冗談・半分本気で書きましたが、そのためには授業期間中に開催する企業セミナー類も何らかのガイドラインまたは規制が求められてきそうです。

学生が教室から消えるのが、春先だけでなく秋にまで及ぶとは何とも悩ましい課題です。

 

第124号:場つなぎに苦労する採用担当者

スタートダッシュで始まった今シーズンも学生達の動きをを見ていると、やや落ち着きをみせてきた感じが致します。なんと行ってもまだまだ先は長いですからね。しかし、企業側にはこれまでに無い変わった苦労が生まれているようです。夏のインターンシップや早期の企業セミナーでコンタクトした学生達をいかに繋ぎ止めるかということです。

 

この夏に開催されていた企業のインターンシップやセミナーを見ていて一つの傾向があるのは、自己分析・自己啓発系のセミナーや、ビジネスマナーやコミュニケーション・スキル、更にはビジネスのイロハのトレーニングが多くなっていることです。学生の感想を聴いてみると、「とても社会勉強になったし就職活動の参考になったけれど、肝心の企業のことはあまりわかりませんでした。」という声が意外と多いようです。学生にとっては不満ではないですが、ちょっと肩すかしを食らった印象ですね。

 

これには企業側の理由があります。昨年の苦労から早期に学生にコンタクトしたのは良いものの、さてそこで通常の詳細な企業セミナーを行ったら、次に行うのは採用選考しかありません。しかしながら、この時期に面接を行っても、さすがに1年半も先の内定を出せる企業はまずありません。それを出せるのはアナウンサーや外資系コンサルタントのようなごく小規模の特定職種採用だけでしょう。そのため本番の企業セミナーに入る前に、ウォーミング・アップのイベントやセミナーを行い、とりあえず企業名だけは認知して貰おうという作戦です。

 

しかし、相当な大企業でもない限り、そういったプログラムのバリエーションは多くありませんからネタに困って、私のような外部講師や研修会社にキャリアアップやコミュニケーション・スキルのセミナーの依頼が来たりします。最近は就職に関係の無い芸能人を呼んだりした講演会まで見かけます。かつて早期の企業セミナーをあえて「業界セミナー」と呼んでいた頃を思い出しますが、今は本当に業界・社会セミナーになっているわけですね。

 

よく考えると、これは企業負担でキャリア教育(社会人教育)を行っているわけです。企業にとっては負担増ですが、それは早期に学生に火を付けた自業自得ということでしょう。こういった傾向がいつまで続くのかは分かりませんが、学生も賢くそのような機会を活用して社会の見聞を広げてしまえば良いと思います。企業にとっては、せっかく投資した(囲い込んだ)学生は逃がしたくないと思うでしょうが、仮にご縁が無かったとしても、いま流行のCSR活動と思って頂ければと思います。

(いやはや、採用担当者の心労はいつまでたっても耐えません。)