第133号:留年による内定取り消し

卒業式も終わりましたが、最後に就職課と採用担当者の心に残るのは留年による内定取り消し者でしょう。少数ではありますが、毎年出てきます。交通事故等による突発的な不可抗力ならともかく、履修単位数の不足や必修科目の不合格等ではなんとも憤りを感じます。

 

留年が確定した内定者から連絡があるのは、3月の初旬から中旬が多いです。大学側から本人への連絡はもう少し早いと思いますが、企業に連絡が来るのは学生側の万策が尽きてからなのでしょう。3月の入社直前に内定者が減るというのは採用担当者にとっても泣きたくなるような事態ですが、如何ともし難いです。多くの採用担当者はやるせない想いで配属プランを変更して調整に努めます。

 

しかしながら売り手市場になったいま、企業側ももう少し緩やかな対応を取るべきかもしれません。セメスター制度で半年後に単位が取れるなら、入社時期を半年ずらすとか、アルバイト採用(契約社員)にして単位修得後に正規採用する等の対応です。外資系企業のように、入社時期を選択できる企業であれば、このような対応はかなり現実的です。

 

よく考えてみると留年で内定取り消しになるというのは、卒業時期(入社時期)が一律で、卒業見込者だけを新卒採用とみなす、日本社会に特有の慣行なのかもしれません。海外のように、卒業後に就職活動を始める社会では、留年による内定取り消しというのはありえませんから。

 

私もかつて内定取り消しにした学生を採用したことがあります。なかなか優秀な内定者だったのですが、たった1単位を落としてしまい、泣く泣く内定取り消しをして見送りました。ところが、すぐ翌月(4月)に始まった採用セミナーにその本人が参加しているのです。セミナー後に個別に相談してみると、どうしても入社したいのでもう一度最初から受験して来年入社する、というのです。魚心あれば水心で、こちらもそこまで思ってくれているなら・・・、と人事内部で検討して簡易な面接だけで選考を済ませ、すぐに内定を出して翌年に入社してもらいました。

 

内定取り消しは個別対応になるのであまり表面には出てきませんが、実際はこういった対応を取る企業は少なくないと思います。売り手市場では1名の内定者を獲るのに莫大なコストがかかりますから。もっとも、あまり学生に甘くなるのは日本社会において良いことではありませんけどね。

 

第132号:エントリーシート締め切り前夜

4月からの採用選考開始のために、エントリーシート(ES)の締切日を3月中旬に設定している企業が多く、学生の方も必死に仕上げにかかっておりますね。この時期になると、いきなりメールでESの添削を依頼してくる学生さんが居りますが、私はESのメールでの添削は原則として行わないようにしています。いや、メールで添削を行うのは不可能だと思います。

 

メールでESを送ってくる学生さんは、藁にもすがる思いなのでしょう。面識の殆ど無い私に「是非、添削をお願い致します!」と書かれてきます。しかしながら、一度も面談やカウンセリングを行ったことの無い方では、書かれてきたESの語彙や論理のチェック等の「評価・訂正」はできますが、その内容までは改訂(添削)することはできません。学生さんが自己PRするテーマにアルバイトの経験を取り上げていたとして、そのテーマがその学生さんを最も良く表現しているかどうかはわかりませんし、もしかすると、サークル活動の方が良かったり学業の方が良かったりする場合も多いですから。つまりESの添削は、その学生さんとある程度の期間、面談を繰り返した後に初めて出来るものだということです。

 

就職課の皆さんも日々、同様の経験をされていることと思います。全く初めて相談に来た学生に「どう書けばよいのですか?」「何を書けばよいのですか?」と聞かれても、「それは自分で考えることです。」といった回答しかできないでしょう。逆に言うと、面談を3回か5回位繰り返せば、かなり学生の持ち味を引き出して、それなりに良い添削ができるようになりますが、そこまで根性のある学生さんも職員の方もなかなか居られません。(勿論、手取り足取りではなく学生自身にPRポイントを考えさせるのも就職課職員の大事な役割ですね。)

 

ES締め切り前夜に駆け込んでくる学生が居たら、なんとかしてあげたいと思うのも人情なのですが、こればかりは如何ともし難いです。ESの原稿を、400字から200字にして削減(添削の「削」)してあげられても、200字を400字に創作(添削の「添」)することはできませんからね。

そういう点では採用担当者も同じです。如何に採用担当者といえども「評価」はできても「添削」はできません。(その代わりに面接でESでは見えていない部分を聞き出していくのです。)

 

この世にESが登場して10年近くなりましたが、ESに追われる学生・大学職員・採用担当者を見ていると、果たしてこれで良いのだろうか?と思うこの頃です。採用担当者も罪なモノをつくってしまったものですね。