第103号:ハードルが若者を強くする

今年の就職戦線は学生有利の売り手市場が本格的に認知され、企業採用担当者の苦戦が続いております。セミナーや応募エントリー等もなかなか集まらないとの声が聞こえてきます。企業からの積極的なアプローチと反対に、学生の動きは昨年と比べると少々スローな気が致します。売り手市場になるとどうしても学生は受け身になり、「用意された環境」を「利用」する立場になります。それは学生にとって必ずしも良いことではないかもしれません。

 

就職環境のこの数年の劇的変化は驚くばかりです。学生の就職年次の違いによる運・不運は、本人の努力や能力を越えるほど激しいものかもしれません。ただ、何度も書いているように、こういった景気・市場の影響を受けるのは、上位・下位(という表現は妥当ではないかと思いますが、他の表現方法を思いつきません)の学生ではなく、中間層のごく「ふつう」の学生だと思います。上位・下位の学生はいずれも周囲の環境にあまり影響されないと言う意味では共通ですが、中間の学生はその逆です。

 

その中間の学生達を如何にその気にさせて企業に惹きつけるかというのが採用広報活動で、前回のメルマガのとおり、今シーズンは多くの企業が一般社員をリクルーターとして動員して大学に送り込んでいます。大手企業の中には数百人のリクルーターを組織化してターゲットとする(という表現も妥当ではないかもしれませんが、ご容赦下さい)大学を選んで送り込んでいます。面白いもので、企業によって動員されるリクルーターの意識は異なり、大手企業ほど「なんでこんな仕事をしなければならないんだ!これは人事の仕事だろ!」というクレームが多かったりします。

 

閑話休題、就職活動の学生はこんな恵まれた(?)環境になると、環境をなんとかしようという努力は少なくなりがちですが、逆に言うとこんな中で自分から環境を切り開いていく学生は目立ってきます。例えば個人情報保護法の影響で、自大学のOBに直接会って話を聞くハードルは高くなってきておりますが、何らかの手段を講じてOBとコンタクトしていく学生は間違いなく対人スキルの高い人でしょう。企業にとっては面接でなかなか測定出来ない行動力やコミュニケーション力の指標になります。

 

さて年も押し詰まって参りました。年が明けて試験が終われば、いよいよ就職活動の本番ですね。大学も企業もますます忙しさの渦に巻き込まれていきますが、就職活動がいつのまにか急成長する「就職産業」になっており、今が異常な就職早期化であることを忘れずにいたいと思うこの頃です。同じ労力をかけるなら、いかに大学との連携した人材育成&評価を考えるか、という点にかけたいものです。どうぞ良い年をお迎え下さい。