第145号:必要悪の採用活動

大学の新学期も始まり、就職課の方々も3年生向けの就職ガイダンス等で気を引き締める時期ですね。企業採用担当者の方も本来なら腕まくりをするところなのですが、どうも今期は怪しい雰囲気です。景気が下降局面に向かっているところに、突然の米国リーマン・ブラザーズの経営破綻です。日本へのインパクトはまだ大きくないようですが、これから少なからず影響が出てくるのではないと思います。

 

経営破綻やリストラは米国では珍しいことではありませんが、今回のリーマン・ショックはその規模が桁外れです。しかもまだその全容がわかりません。米国政府の不良資産買い取りの対応は非常に速いとはいえ、金融機関は各業界に深く絡んでおりますので影響の実態が現れてくるのにはもう少し時間がかかることでしょう。

 

こういった先が不透明な状況で採用担当者はとても辛い心境で過ごしています。採用予定数や採用予算が大きく変化することが予想されながらも採用活動を休止するわけにもいきませんから。採用担当者は心の中で「大丈夫かな・・・」という気持ちを抱えながらも、それを隠してこれからの就職セミナーでは精一杯の笑顔で対応します。

 

私も長年、採用予算を預かっておりましたが、採用数が少ないならば、できるだけ無駄な経費をかけずにいたいものです。採用活動予算の多くは広告宣伝費用なのですが、もし採用予定数がいきなり削減されるとそれまでの仕込みが水泡に帰します。それがわかっていながらも、やらなければならないのがこの仕事の辛いところです。経営の視点からみたら必要悪ですね。

 

この点、外資系企業の判断は非常に速いです。日本のような超長期の採用活動(就職活動)はありませんから、仕込み期間(広告宣伝・募集期間)も短期です。景気が良くないと見るや、すぐに予算の削減や場合によってはいきなり採用活動の凍結になったりします。実際、現時点でもいくつかの外資系企業には既に予算縮小の指事が本国から来ています。

逆に日本法人の外資系の採用担当者は、いきなりまた採用しろとトップダウンの指事が来ないか冷や冷やしています。今期も5月になってから新卒採用しろと言われて頭を抱えている採用担当者がおりました。

 

採用担当者はこれから市況がもっと厳しくなるのか、それとも復活するのか、リーマン・ショックのインパクトを見極めているところです。いっそのこと倫理憲章遵守を御旗の印に採用活動を遅らせてしまおうか・・・と考えながら。

 

第144号:リーダーの能力・資質

採用担当者が求める学生の能力・資質では、コミュニケーション力が圧倒的に多いですがリーダーシップもその一つでしょう。どちらも組織活動の一員としては不可欠なものであり、どちらも生まれながら兼ね備えているものではなく、後天的に開発されるものと考えるのが人事部の見方です。

 

採用面接で自己PRを求めたときにもリーダーシップをあげる学生は多いです。しかし、そのスタイルや体験談を聞いてみると、次の例のようにワンパターン化しているような気がします。

「私は引っ張っていくタイプではありませんが、メンバーの意見をよく聞いてまとめていくタイプです。」

まるで今の総理大臣のようなタイプですね。リーダーのスタイルは、その人の個性と属する組織によって異なるので優劣で語れるものではありませんが、仕事をするうえでリーダーの一番大きな役割は「調整」だけではなく「目標設定」や「意志決定」だと思います。それは最終的には自分で判断して自分で責任をとることです。

ですから、上述のような自己PRをする学生を面接したとき、はたしてこの人は会社組織の中でやっていけるだろうか?と心配になることがあります。そのため、面接では更に続けてこう質問します。

「メンバーの意見が統一できなかったとき、リーダーとしてどうしていましたか?」

(あまり大きな意志決定をしない組織では参考になりませんが。)

 

つまりリーダーの資質を質問するということは、その学生がどんな組織体験をしてきたのか、ということを聞いていることに他なりません。ゼミでもサークル活動でもアルバイトでも場面は何処でも良いのですが、誰かに言われたままに行動するのではなく自分で意志決定して実行してきたかがポイントです。更にその力はその組織のリーダー(先輩)や文化の影響がとても大きいです。

 

さて少々脱線しますが、リーダーの中のリーダーであるはずの「総理」と「理事長」が手本を見せられないと、我が国の将来が心配になってきます。総理と理事長も「日本の顔」で国民の手本であるべきだと思いますが、辞めではいけない時に辞める、辞めるべき時に辞めない、どっちもフツーの国民目線では理解不能です。それぞれに事情はあったとしても、それが子供や若者のリーダー像に与える影響は計り知れません。

 

若者が尊敬して真似したくなるリーダーが居て、そんなリーダーを目指す若者に次代を引っ張って欲しいものですね。リーダーは良い社会で育つものだと思いますから上も下も頑張らないと。