第143号:オリンピック選手から学ぶこと

北京オリンピックもいよいよこの週末で閉会ですが、今年も数多くのドラマを見ることができました。大きな重圧に耐えて期待通りの結果を出せた日本選手の輝きは、多くの人々に勇気を与えてくれますね。その選手のコメントにはこれから就職活動に向かう学生にも学んで欲しいことがあります。

 

今季のオリンピックだけではなく、また日本選手だけではないのかもしれませんが、水泳の北島選手をはじめメダリストのインタビューで多く聞かれるコメントは、自分一人ではなく大勢の人に支えられて出せた結果だということです。

これはまさに就職活動で内定を取れた時と同じでしょう。内定を多くとる学生にはいろいろなタイプがありますが、わりと共通して言えるのは豊かな人的ネットワークを持っていることです。大学の友人や先輩、就職課の皆さん、就職活動中に出会う企業の採用担当者や他大学の同志、そして家族まで。身の回りに居る人達から叱咤激励されて成長した末に、内定という結果が出るのでしょう。

その反対に、周りの人的ネットワークを使わずに自分一人で頑張り過ぎたり意固地になってしまうと、どうしても結果はでてきません。そういう方を採用担当者が面接で見ると、深刻なのはわかりますが、孤独な悲壮感が漂っているように感じます。

 

ところで、これはここ数年で感じることですが就職相談を行って後、その結果をご連絡戴けない学生が急増しています。ほんの4~5年前まではキャリアカウンセリングや大学での就職相談を行えば、その結果をメールや葉書で教えてくれるのが普通でした。こちらは特にご連絡を求めているわけではありませんし、教えて下さいと伝えているわけでもありません。しかも上記のように良い結果が出た学生からも音沙汰が無くなりました。偶然に大学で出会うと、「先生、内定決まりました!」と笑顔で話してくれるところを見ると、これは礼儀を忘れているということではないのでしょうし、周りへの感謝を忘れているということではないのでしょう。

 

しかし、オリンピックで選手のこのような発言を聞いたとき、「ああ、あの人にお世話になったから残暑見舞いでも出しておこう。」という気持ちをちょっとでも思い出して欲しいと思います。(最近はメール文化のせいか、暑中見舞いの葉書は減ってきましたね。)

 

良い結果が出せたとき、奢らずに周りへの感謝を思い出す、それが日本人の美徳だと思いますから。

そして、きっとそれは社会人になってからも成功する秘訣でしょう。

 

残り少ないオリンピックですが、日本人選手の堂々たる戦いぶりを期待しながら応援したいと思います。

 

▼北島康介選手の公式ブログ(8月14日のコメントが良いですね。就活学生に見せたいです。)

http://www.frogtown.jp/kosuke_mail/

 

第142号:いまどきの中学生

大学生の夏のインターンシップは珍しいものではなくなりましたが、最近は中学生にも「職場体験学習」というものがあるのですね。夏休み中に1週間程度、地元のいろいろな職場を見学してくるというものです。「企業訪問前に社会人の心構えを話して欲しい。」と知人の公立中学校の先生に依頼され、初めて中学生に向けて話をしてきました。

 

先生から戴いたお題は「会社で求められる人材とは」と、まるで大学の就職セミナーのようです。勿論、難しい話をしてもわかりませんので、もっとわかりやすく「面接試験で受かる人」と「採用担当者が好きな人」という話をしてきました。自分が中学生の頃を思い出しながら話をしたのですが、生徒の反応はそれぞれです。大学と違って(いや、今の大学生は中学生並かも?)、集団の水準の幅が広いのでどこにフォーカスするか難しかったです。冗談ではありませんが、中学生の言動を見ていると、今の大学生の言動を見ているようで興味深いです。いくつか感じた気になる印象をご紹介します。

 

・自分の意見を言わない、他者にふる

質問を投げかけて尋ねてみても自分の意見をなかなか話せません。何か言いたいことがあっても言葉にならないということはありますが、そうやって考え込んだり回答を迷ったりするのではなく、即座に他の子に話しかけて「××だってさ!」「××って知ってる?」自分の意見を「考える」とか「作る」とかではなく、「探す」「選ぶ」という思考停止状態を感じます。しかし、それ以上に怖いのは、自分で責任を負わずに誰かに押しつけようとする感覚です。

 

・回答しようとする子を冷やかす

質問された生徒が少し考え込もうとすると、回りの数人が「早く言えよ」「××って言っちゃいな」とすぐに突っ込みをいれてきます。昔の教室はそれほど賑やかではありませんでした。しかもその集中攻撃的なやり方では被害者・加害者(?)という立場がころころ入れ替わっています。気になるのは攻められた子が、相手に対して本気で(?)憎い目で見返して、次にやり返しているところです。もしかすると、こんな風に冷やかされるので自分の意見を言うのを避けているのかもしれません。

 

・相手の目を見て話せない

これは地方の大学でもわりと多く見かけるのですが、気が弱いのか大人が怖いのか、目を合わせることができません。その子に近づいて目線を下げて話しかけてみても、どんどん顔を伏せてしまって最後は机に突っ伏してしまいます(その間、ずっと無言)。

 

総じて、自己主張しない、自分の姿を明かさない正体不明系の子供達、という感じです。勿論、ハッキリ自分の意見を話すしっかりした子もおりました。しかし、相対的にそういった(真面目な?)子が少なくなって、Always三丁目の昭和時代とは勢力図が入れ替わった感じです。

 

ほんの短い時間でしたが、今回の体験で今の大学生の授業や就職セミナーでの態度がわかってきた気がします。やはり中学生の教育は大事だと感じた1日でした。