第282号:「夏採用」での課題とは

採用の人材ニーズというのはバーチャルなマーケットで、マスコミが作り出すムードに大きく左右されます。「夏採用」という文字がだいぶ増えてきたので、これまでやっていなかった企業も「周りが始めたからちょっとやってみるか」と動きだし、あれよあれよという間に市民権を得てくることでしょう。この動きは、来年の採用活動の時期変更に向けてのリハーサルのようなものかもしれません。

 

春採用(という言葉もこれから定着するかもしれません)の場合は、応募者の集団に大きなバラツキはありませんが、夏採用の場合は多くの学生が採用選考の洗礼を受けてきます。そのため学生の面接は、比較的に容易です。春先の就職活動でどんな企業を回ってきて、どんな結果が出たかを丹念に聴けば良いわけですから。それは募集の際に選考がある人気企業のインターンシップを受けてきた学生のようなものです。

 

しかし、夏採用での大きな課題は、春採用で良い結果を出した学生が、就職活動を継続してくれるかどうかです。春採用で内定を出した企業は逆に、必死に内定フォロー策を行って就職活動を止めようとするでしょう。採用活動の時期の移行(夏採用)は、今や国家政策にも上げられている程ですから、もし本気でこれを成功させたいなら、国の行うべきことは悪質なフォロー策に目を光らせることです。

例えば、法律知識のない学生に書面で誓約書を取って拘束する企業をブラック企業として告発することです。勿論、内定者懇親会というような良質(?)なフォロー策については問題ありません。

 

さて、夏採用といって思い出されるのは、キヤノンマーケティングジャパン社のことです。同社が春採用一抜けた宣言を行い、夏採用に移行して4年が経ちました。当時は「売名行為」「茶番劇」だと言った方もおりますが、同社はそのまま継続しており、そろそろ時代が同社に追いついたと言っても良いかもしれません。

 

同社のメッセージを見ると、学生の事情に合わせて理系学生には春採用も行うような対応をしており、更に改善しています。その中で、私が着目したのは、春採用も夏採用も選考基準は変わらない、という点です。これは、更に夏採用の向こうにある、「通年採用」へのステップのように感じられます。それは世界では当たり前のことですが、日本にとっての課題です。また長い目でみていきたいと思います。

 

 

▼参考URL:キヤノンマーケティングジャパン社採用メッセージ

http://cweb.canon.jp/recruit/students/message/2015-spring.html

 

 

第281号:広がってきた新卒人材紹介

大手企業から追加採用の求人がチラホラ出ています。比較的少人数の募集なので、景気浮揚で採用数が増えたというよりは、内定先を絞り込んだ学生に辞退され、欠員募集のようにみえます。しかし、こうした小口の採用を行うことは、簡単なようでなかなか大変ですが、新卒人材紹介は新たな流れになるかもしれません。

 

小規模な追加採用ニーズが出た時、採用関係費用を使い果たした企業では大規模ナビは使えず、また予算があったとしても、採用工数に手間ひま時間がかかりすぎます。そこですぐに浮かぶのは、今も昔も同じく、採用実績のある大学就職課に「良い人は残っていませんか?」という個別求人で、改めて求人広告を出したり、前回お伝えしたような大学内セミナーを開催してみるということですね。実際、私の方にもいくつかの企業から「良い学生居ませんか?」との問い合わせが来ておりますので、きっと皆様の方にも相当数の依頼が届いていることでしょう。

 

こうした状況の中で、私が最近、着目しているのが新卒人材紹介事業です。まだ新卒採用の本流ではありませんが、少しずつ世の中に広まってきているようです。試しに「新卒人材紹介」でググってみると、無数のサービスが検索できます。見ていて面白いのは、大手就職情報サービス企業が出ているの当然として、学生ベンチャー企業のような中小企業や、まった人材ビジネスとは関係のない大手メーカーも見つかることです。

 

リクルート社が学生の起業でスタートしたように、そもそも人材サービスは技術上の参入障壁が低く、ビジネスモデルもシンプルですから、取り組みやすい事業です。人材紹介の仕入れは、個人的な人脈でも可能ですから、ちょっと大規模なサークル活動をやっていた学生でも起業できます(周知の通り、職業紹介事業はオフィスの用意等が必要ですが、仕事の上のノウハウよりもはるかに準備は容易です)。就職活動がうまくいかない学生達が、もし大勢集まって協力したら、昔のドラマの「俺たちの旅」のような面白いことになるかもしれません。

 

もう一つの興味深い動きは、異業種からの参入です。私が外資系で採用担当者だった十数年前、数十社の人材紹介業者とお付き合いしておりましたが、オムロン社のようにまったく人材サービスとは縁が無いと思っていた企業が居ることに驚きました。翻ってみると、今は多くの大手企業が本業とは縁の無さそうな新規事業を始めてきています。JRが市場調査サービスを行ったり、ソニーの金融業が伸びていたり、ソフトバンクがロボットを作っていたり、DNAが医療事業に取り組み始めたり。仮に銀行が人材バンクを始めたら、いきなり業界トップになってしまうかもしれません。(やれるものなら大学就職課だった起業してみたいものですね。笑)

 

いまのちょっとした景気浮揚は、かつてのバブル期のようなムードを感じされるものがありますが、様々な人材調達手段が出てきているいま、かつてのように大手企業が一気に採用数を増やすようなことはないでしょう。新卒人材紹介のように、成功報酬型で堅実な方法を選び、もしかするとこうした形で新卒採用と中途採用の就職の形が融合していくのかもしれません。

 

 

第280号:夏採用開始

取り切れていない企業が多いようです。追加採用が多いです。

企業も小口の求人には苦労しますが、それは中途採用と同じです。

画一化された新卒採用しか知らない若い採用担当者が苦労することです。

こうした状況では、新卒人材紹介が流行る地盤ができます。

それは、新卒/中途の区別のない採用活動です。

 

 

手企業の採用活動もだいぶ目処がついてきて、学生からの内定報告も出揃ってきました。ダイレクト・リクルーティングの進行で、今シーズンの大学内企業セミナーはどちらでも盛況かと思いますが、教員

 

 

  • 結果の見える大学内企業セミナー

大手企業の採用活動もだいぶ目処がついてきて、学生からの内定報告も出揃ってきました。ダイレクト・リクルーティングの進行で、今シーズンの大学内企業セミナーはどちらでも盛況かと思いますが、教員から見ると日頃から知っている学生の結果がわかるところがとても参考になります。先日も、大学内企業セミナーでそれを目の当たりにしました。

 

教室に集まった学生の座り方を見ていると、殆どの学生がいつもの授業と同じ席に座っていたのです。これが企業の用意した初めての選考会場ならば、多少、様子を見ながら席を選ぶのかもしれませんが、日頃授業を受けている教室が会場の大学内セミナーでは、迷わずいつも自分が座っている座席エリアに着席します。窓側に座る学生は窓側に、後方に座る学生は後方に。習慣がしっかり身に付いています。

 

そして、後日選考結果を教えて貰ったところ、最終選考まで残った学生はやはり最前列に座っていた学生達でした。セミナーでの質疑応答を見ていても、前列側の学生が最初に手を挙げて、後方の学生は周りの様子を見回しながら手を挙げます(手を挙げないで質疑応答を聞いているだけの学生の方が多いですが)。後方に座る学生のもう一つの共通点は、友人達と一緒に固まっていることです。前列に座る学生は、逆に一人でやってきてサッと座ります。

 

こうした現象がすべての学生に当てはまるとは思いませんが、日頃の行動が習慣化してその人の将来を決めることは間違いありません。だとすれば、学生は嫌がるかもしれませんが、授業では着席を指定して、顔見知り同士で固まらせず、知らない者同士で座らせて積極的に、いや、強制的に質問させるべきですね。着席位置を変えるだけで人生が変わるのならば、教員としてはお安い御用です。

 

・・・とはいうものの、イマドキの学生の習慣を変えるのは、至難の業です。企業研修においては、業務命令という伝家の宝刀がありましたが、大学では学生の頭と心に訴えかけて自発的に変化して貰わないと意味がありません。そこで、最近の授業で学生に影響を与えた言葉をひとつご紹介したいと思います。

 

それは、「性格は行動の結果である。」です。学生が性格だと考える背景には、変えられないもの、仕方ないもの、と思い込むことによって、無意識に面倒な努力を避けていることがあります。しかし、続けて「確かに性格はすぐには変わらないけれど、行動なら一瞬で変えられる。試しに(いつも)最後方に座っている学生は、今日だけ最前列に来なさい」と話し、座席移動をさせてみると、学生自身が授業の聞こえ方の変化に驚きます。

 

なかなか面倒なことですが、それで学生が気づいて行動を変え、人生の舞台の傍観者から登壇者になってくれるなら、ウルサイ先生と思われても教育的指導をしたいと思います。