第19号:応募者の評価と面接者の評価

なかなか応募者の側から分からないものが、採用面接者の評価ポイントです。自己分析も企業研究もしっかり行い、志望動機もまとめて面接に臨んだのに、期待通りの結果が出ないと応募者の方は納得がいかないことでしょう。そんな時にまず気をつけたいことは、「生きた回答」をしているかどうかという点です。

就職活動も選考シーズンに入り、学生さんもそろそろ面接に慣れてくる頃ですが、準備万端で何度か面接を受けても、思わしくなく、面接者の評価に悩む学生さんがおります。先日、大手企業の採用担当者の協力を得て、ある学生コミュニティで模擬面接を実施した際にもその現象が現れていました。

応募者役の学生さんは緊張しながらも、「私の志望動機は、一つには・・・、二つ目には、そして三つ目には・・・です。」との流暢な話し方で、その後のいくつかの一般的な質問にもスムーズな返事です。見学をしていた学生さん達にも評価をして貰いましたが、「ちょっと早口だけど、面接者の質問にスラスラ答えていた。」ということで概ね、良い評価でした。

ところが、面接者側の評価は芳しくなく不合格でした。面接者の視点は、「話し方は自然体で良いが、内容は用意してきたものを一方的に話しているだけで、会話が成立していない。」というもの。学生側としては、質問に対して必要十分な回答をしていたと思っていたのに対し、面接者の視点はその内容をベースに会話がはずむかどうかにあったようです。つまり、以前にも触れたとおり、学生はしっかり「解答」はできたのですが、面接者の期待する「回答」にはなっていなかったようです。

面接者から見て、学生を早期の段階で不合格にする場合は、基本的なスキルができていないか、今回のケースのように、コミュニケーションが成立していないかのいずれかです。準備をしっかりしている真面目な学生さんほど、この悩みを持つことが多いようで、特に今は数多くの企業を受ける時代ですから、知らないうちに回答が型にはまってしまって「死んだ会話」になっていることがあります。面接者は、志望動機を経て行われる質疑応答をしたくてうずうずしているもので、「生きの良い回答」を楽しみにしています。それこそがコミュニケーション能力を見るということなのでしょう。

第18号:早期化、長期化、集中化、多様化、通年化

3月に入り、いよいよ企業の採用活動も本番です。エントリーシートを提出して返事を待っている応募者にも結果が出始め、面接のスケジュールが通知されはじめました。企業では一斉に広報活動から選考活動に入り、街ゆく学生さんの顔つきも企業セミナーの時期より心なしか緊張感が高まっているようです。多くの企業が動き出している中で、いつもと違う動きを見せている企業も出てきました。

ここ数年、就職シーズンは「早期化」と「長期化」の傾向にあることはご周知のことですが、昨年はそれに加えて選考時期の「集中化」がおきました。1~2月の広報活動の後、3月に多くの企業が選考活動を始めたため、応募者においては面接スケジュールが重複し、多くのエントリーを行っていた学生は日程調整に非常に苦労しました。その結果、広報活動時には学生からのエントリーを十分に集められたと安心していたところ、いざ蓋を開けてみると欠席が多く、面接応募者を集められなかった企業が続出しました。昨年、選考活動の時期にも多くの学生を惹きつけられた企業は、広報活動からこまめにいろいろなメールを送ったり、インターネット上でのコミュニケーション活動(バーチャルOB訪問等)を行ったり、応募者との距離が離れないように配慮していたそうです。

今年は、そういった企業の更に先を行こうと1月から選考を始めた企業もあれば、逆に3月~4月の選考集中期に第一希望の企業を不合格になった学生を狙って、今から5月~6月の募集があることを告知し始めた大手企業も出てきています。また採用選考方法も、通常の面接をやめてインターンシップ応募だけに切り替える企業が出てきており、今年の企業の採用活動は選考時期と選考方法に「多様化」の傾向が出てきているようです。

こういった企業が増えてくると、これから採用市場の「通年化」が起きてくることが予想されます。「通年採用」という意味は、一企業において新卒採用と中途採用の区別が無くなり募集人員が出た時だけ求人を出す、良い人材を見つけた時だけ採用を検討する、というやり方を指してきましたが、今後は年間を通して採用活動を行っている企業が就職市場に居る、という意味に考えた方が良いのかもしれません。学生にとっては選択機会が増えることになりますが、ストレスに耐えて視野を広げるという能力が求められてくるでしょう。マラソン・ランナーのように頑張って欲しいものです。