第236号:期末レポートの採点基準(常識編)

期末試験のシーズンになりました。私も前期授業が終了し、これから文字通り山のようなレポートとテスト答案の採点を行いますが、その採点基準は、企業におけるESの選考基準と同じです。私が学生に伝えている採点基準(常識編)は以下の通りです。正直、ここまで教えなきゃいけないのかと悩みます。企業に提出するESほどの緊張感が無いせいでしょうか。どうお感じですか?

 

1.量があること。

用意された解答(回答)スペースは、暗にこれだけ書きなさいという期待です。レポートは、相手の期待に応えるように書くものであり、書くことがトレーニングです。

 

2.見やすいこと。

読む前に判別不能な文字が増えてきました。これはビジネスマナーと同じで相手に対する配慮不足です。薄い鉛筆ではなく、黒のボールペンを使い、文字の大きさは設問文と同程度かやや大きめで。

 

3.漢字を使うこと。

最近のレポートは、ひらがなが多く大学生としての知性を感じません。たまに絵文字まであります。それはそれで面白いで減点はしませんが、内容が無ければ加点できません。

 

4.自分の意見(学んだこと)があること。

ただ授業の内容を書き写すだけでは、講義を聞いていたことはわかっても何を学んだかわからず加点できません。高校の授業とは、もっとも異なる点で、解答ではなく回答を求めます。

 

5.事実+意見であること。

ただ「参考になった」「役だった」だけではわかりません。何がどう良かったのか、どう参考になったのかを書きましょう。たまに授業とは全く関係のないことを書く人が居りますが、それが授業とどのように関係しているかがわからないと加点できません。

 

6.前向きであること

ゲスト講演者やビデオ教材では、自分との相違点を見つけ、それにどのように近づくかを考えるのが学習ポイントです。できない理由ではなく、できるようになるにはどうすれば良いかを書きましょう。

 

7.品格があること

乱暴・下品・不遜な表現は論外です。減点対象になります。

 

上述の通り、これらはESの評価基準とも同じです。ここまで伝えても、ただひと言「ありがとうございました。」とだけ書かれた回答用紙を提出してくる学生には、それなりの評価しか与えられません。個人のキャリアには点数は付けられませんが、学ぼうとする姿勢(書き方)は採点できますから。

ちなみに、この採点基準をある企業人事部の方に見せたら、「うちの社員に見せたいので下さい。」と持って帰られました。社会人も大丈夫なんでしょうか?

第235号:就業力育成ビデオの効果

春にお伝えしていた法政大学にて制作した就業力育成のための教材ビデオが完成し、6月から授業で使い始めました。受講生の反応は想定内外のものがありますが、非常に有効なキャリア教育のツールになりそうです。そして、これは授業だけではなく、就職課の指導ツールとして、そして企業の新人研修としても相当に応用が利くということが確信できました。

 

受講した学生の声をそのままお届けしましょう。

<1年生>

「今年入学したばかりで、仕事に対してあまり意識はしたことがなかったのですが、ビデオを見て、社会の厳しさを学べて良かったです。グループ・ディスカッションをして4年生の方々が仕切って話を進めている姿を見て、自分にはまだできていないことなので、私もあと3年したらこのようになれるのか、ハキハキと意見が言えるようになるのか不安です。就活までに今日学んだこと(コミュニケーション力)を身につけられたらいいなと思います。」

この教材は複数の教員で活用しておりますが、進行に当たっては受講者間でグループ・ディスカッションを取り入れております。学生をランダムに組ませることによって、知見を広げると同時に、コミュニケーション力の向上も狙っています。見知らぬ学生同士の話し合いは緊張するものですが、授業後の感想では新しい友人が出来て良かったという副産物までありました。

 

<3年生>

「アルバイトと社員の違い、応用力がある人が正社員としての能力を見込まれること。過去のものをインプットして加筆し、アウトプットすること。下調べの重要性、誠意の見せ方。今までの授業とは異なって、行動的な授業だったので今後のためになりました。」

多くの学生が面接の自己PRでアルバイト経験を語りますが、そこで得られる資質が企業の期待とはかなり異なるものであることが多いです。この教材ビデオでの重要な狙いは、そうした社会のニーズを気づかせることと、その力は大学の授業からでも身に付けられるということです。こうしたアクティブな教育手法をとることによって、学生の就業力は飛躍的に向上いたします。

 

更に、この教材ビデオは授業だけではなく、企業の新人研修や内定者研修でも活用が可能です。お陰様で多くの大学教職員からご関心を戴きました。そして企業の採用担当者の方からも、今後の教材ビデオについて産学連携の可能性を戴きました。これからはビデオだけではなく、こうした運営ノウハウも開発も進めて行く予定です。

早速、法政大学での活用状況をお伝えするワークショップを開催することに致しました。ご関心の有る方は、どうぞお越し戴き、意見交換をさせて戴ければと思います。

▼8月8日(水)法政大学市ヶ谷キャンパス(ご参加者には教材ビデオを差し上げます。)

ワークショップ「ビデオ教材を用いた就業力育成を考える」

http://3step.hosei.ac.jp/event/details/2012/06/20/id1781