第88号:辞退対応七然

今年も大手人気企業の最終選考結果が出る時期になり、採用担当者にとって胃の痛い季節がやってきました。今シーズンは売り手市場と言われることもあり、大手金融機関や製造業の採用増加数を目にすると、中堅企業の採用担当者はそれだけで目眩がしそうになります。普段は愛想良く会社説明会を開いている採用担当者も、連日学生からの辞退連絡を受けると気持ちが滅入り、段々と人間不信に陥ってきて態度が変わってくることも珍しくありません。

採用担当者の内定辞退連絡に対する態度と採用担当者のタイプをいくつかあげてみましょう。

・態度泰然:辞退をものわかりよく受け入れ、激励までしてくれます。相当な人格者です。

・態度平然:辞退に動じることもなく淡々と受け入れる。無駄なことはしないタイプです。

・態度冷然:辞退者に対し急に冷たくなります。冷静に見えていても意外と根に持つタイプです。

・態度唖然:辞退に言葉を失ってしまう。新人の採用担当者か、人を信じすぎてしまうタイプです。

・態度騒然:辞退の怒りを回りの社員にぶつけて発散します。ストレスを自分の中に貯めないタイプです。

・態度猛然:辞退に燃えて説得して翻意を促します。諦めの悪いタイプです。

・態度憤然:烈火の如く怒り、学生を呼び出して説教します。感情的で一番怖いタイプです。

応募者の内定辞退に対する企業の態度は、基本的には採用担当者個人の考え方(精神状態?)で異なるものですが、全体的にみていると業界によってカラーが見られます。大きく二つに分けると「信用重視業界」と「契約重視業界」です。お察しの通り、前者の代表は金融業界、後者の代表はIT業界です。日本型・米国型と言っても良いかもしれません。日本型企業は基本的に信用重視で社員も新卒中心で転職も少ないですから内定辞退と聞くとかなり厳しく説教されますが、IT業界は元々中途採用の転職組が多く「去る者は追わず」という考え方が強いので内定辞退にも比較的あっさりしています。

最近は内定防止のために入社承諾書・誓約書の提出を求める企業も増えてきているようです。法的拘束力はありませんが、法律を知らない学生には十分な辞退防止の威力があることを採用担当者知っていますので、この書面の意義は契約重視ではなく信用重視のために用いられているということなのでしょう。

日本は急速に信用社会から契約社会に向かっておりますが、内定辞退について学生と採用担当者が悩んでいるということは、まだまだ日本には信用が残っているということかもしれません。辞退連絡に七変化する採用担当者にとってはたまりませんが・・・。

 

第87号:就職ガイダンスからキャリア教育へ-2

新年度になりました。日本の春は国を挙げての人事異動の季節ですね。大学にも初々しい表情の新入生が溢れています。いつもお世話になっている就職課の職員の方々からも異動のご挨拶をいくつか頂戴致しました。さすがに企業の採用担当者は戦線真っ盛りで異動は少ないようです。私事で恐縮ですが、私も今月から大学デビューを果たすこととなりました。就職ガイダンスからキャリア教育へ一歩踏み出します。

倫理憲章の解禁日も過ぎ、日中のビジネスタウンはリクルート・スーツの学生で溢れています。企業の採用担当者はドキドキしながら学生の応募状況を見ています。どれだけ事前のエントリーがあっても、本番の面接にやってきてくれるかは未知数ですから。採用担当者も選考開始の時期は慣れていないこともあります。特に現場職員を臨時に面接担当を配置する大企業では、学生との会話になれていなくて、慣れてくるまで多少の時間を要します。まさに4月は誰もが初心者なのですね。

さて、最近の面接の傾向としてコンピテンシー面接が増えてきていることは皆様もご存知だと思います。将来への志望動機よりも過去における活動実績を重視してカウンセリングのように聴きだしていく手法です。コンサルタントの方によると、過去の行動事実を質問していくので面接者の主観による個人差はなくなり、本当に行動できる学生が的確に選別できるとのこと。この手法の是非はともかく、大学生活が如何に充実していたかというのは就職面接でも最も合否を分けるポイントでしょう。どんなに面接テクニックがあっても肝心の話すべき内容が無ければ意味がありません。

年初から数多くの模擬面接を行ってきましたが、模擬面接でアドバイスできるのはあくまでも面接のテクニックです。個人差はあってもこのような対人スキルはわりと短時間で身につけることも可能ですが、やはり話すべき内容があって初めて活きるものです。ところが、こ高度に発達したメディアの影響によるものかもしれませんが、最近の学生たちの活動実績はますます画一化されてきていたり、企業や社会の見方もドンドン表層的なものになってきているのを感じます。やはり一番良い就職活動と言えば、キャンパスライフを如何に充実させるかということだと思いますが、そこに個性差が少なくなってきているのかもしれません。

ということで、小さな試みですが、いわゆる低学年からのキャリア教育というものに取り組んでみることに致しました。既に多くの大学で開始されていることありますが、日本の教育において最も重要なことではないかと思います。以前も書きましたが、良い学生が育ってこなければ良い採用活動はできないのです。特にこれからの本格的な少子化時代を迎え、一人でも多くの学生がキャンパスライフで切磋琢磨し、謳歌し、社会で活躍するステップとして欲しいと思うのです。何年か先に満開の桜とともに成果が花開くことを祈りながらチャレンジしてみます。

(2年前の春にこのタイトルで書いたのですが、まさか自分で取り組む機会がやってくるとは!)