第29号:キャリアになるサークル活動

冷夏ではありますが、夏休みに入った学生はサークル活動とアルバイトに精を出していることでしょう。現在、ある学生サークルから依頼があってビジネス・マナーのトレーニングを行っているのですが、これがなかなか実践的で、就職活動だけではなく就職した後のキャリアアップにもつながりそうな展開を見せていますので、ご紹介します。

このサークルはボランティア活動のスポンサー企業を開拓するもので、サークル活動の趣旨と提案を用意して、企業を回って説明しています。これまで企業訪問する際に必要な、挨拶、名刺交換、敬語の使い方などの基本的なビジネス・マナーをトレーニングしてきました。そして次の段階として、実際に企業を訪問して感じたこと、学んだこと、失敗したことを、サークル・メンバーで情報交換しています。この段階では、トレーニングでは想定していない多様な状況にぶつかり、学生は基本と応用の違いに戸惑いますが、それこそが「正解」が1つではない社会の実相を学ぶ良い経験になっています。

1企業で得られた情報をサークル・メンバーで共有し、全体としてどう判断すべきかを議論し結論を導き出すことは大事なことで、これは就職活動における一面的な企業情報やOB訪問の情報だけで全体を判断しないということ、つまりミクロ情報とマクロ情報の見分け方を学習しているのです。

さらに実地活動を続けるにつれて、このサークルの学生の関心は、効果的な資料の作り方・見せ方、わかりやすい説明の論理構成、質疑応答のスキルなど、どんどん高度なものに移ってきています。もうお分かりのとおり、この企業に対する提案を、自分自身に置き換えると、それはそのまま就職活動になります。企業における採用選考は、その企業が投資すべき人材の選択活動です。採用担当者は投資家の視点で応募学生を面接しており、ますますその目が厳しくなってきています。学生は応募した企業に対して自分自身がどれだけ投資価値があるかを上手にアピールする必要があります。

キャリアの正体は「専門性」と「人的ネットワーク」の組み合わせと言われます。学生生活にあてはめれば、それは「大学の授業」と「サークル活動」の組み合わせと言って良いでしょう。採用面接においてサークル活動についての質問はポピュラーですが、企業が知りたいのはその活動を通じて得た応募者の人的ネットワーク(コミュニケーション能力)です。このサークルの学生たちはまだ1~2年生ですが、この夏休みに企業を回ることによって、就職活動に臨んでも慌てることはないでしょう。そしてこのサークル活動での経験を、就職活動への応用だけではなく社会人になってからの渉外能力として、自分のキャリア形成に活かしていくのではないかと思います。

第28号:悩めるインターンシップ

8月に入り、大学も夏休みに入られたかと思います。まだ4年生の就職活動も全て終わらないうちに、3年生はインターンシップを受講し始めています。同時に2世代の学生の対応を求められて忙しいのは、採用担当者だけではなく就職ご担当の皆様も同じですね。採用活動の期待の施策として導入され始めたインターンシップですが、一部の大手企業ではそのあり方を見直そうとしています。

大学と企業の「共同教育」として位置づけられるべきインターンシップは、日本においては企業広報活動または直接の採用活動として位置づけられることが多いことは周知のことです。目的が広報であれ採用であれ社会貢献であれ、欧米諸国に比べて社会と学校の距離が遠いと言われている日本において、インターンシップが段々と増えている傾向は望ましいことでしょう。大学における専門教育が、社会のどこでどのように活きてくるのか、ということを今の学生の多くは気づいていません。良いインターンシップに出会うことにより、少しでもそれを理解することができれば大学の講義が一層面白くなるものです。

ところがインターンシップを採用手段と考えている大手企業では、その効果について疑問を感じ始めているところがあります。自社のインターンシップで高い評価を受けた学生には、内定をたくさん取るが如くに、他の多くの企業のインターンシップを受ける方が居ります。一部ではインターンシップ・メンバーが顔見知りになり常連化しているところもあります。そういった学生たちは就職シーズンになると、履歴書に勲章を並べるように誇らしげにインターシップの成果を記載してきます。確かに優秀な学生なのでしょうが、採用担当者としては複雑な思いで「この学生は本当に我が社に入社してくれるのだろうか?」と考えてしまいます。

そもそもインターンシップにおいて採用直結と期待することが間違いなのかもしれませんが、採用関係費用の投資効果をますます問われている採用担当者としては、受け入れ人員を削減したり中止したり苦悩は続きます。