第129号:採用活動に関する大学との共同研究-3

昨年末にこちらでご紹介した、商学部のゼミ学生と企業の採用活動に関する共同研究(大学生の内々定辞退)の報告会が行われましたので、その調査内容を少々お伝えしたいと思います。この報告会は大学に企業採用担当者(約10社)を招き、学生のプレゼンテーションに対して質疑応答を行うという形式で行われました。今回で4回目になります。

 

1.採用予定人数を確保する為に採用基準を緩和することはありますか?(回答数48社、以下同じ)

・よくある           ⇒ 2.1%

・時々ある           ⇒31.3%

・あまりない         ⇒39.6%

・全くない           ⇒27.1%

⇒これはインタビュー調査でも明らかになったことですが、景気が良くなっても採用基準を緩めることは殆どないということです。どんなに厳しくても最低限の基準は守りたいということでしょう。

 

2.他社が採用予定人数を確保するために採用基準を緩和していると感じますか?

・そう思う           ⇒33.3%

・まあそう思う              ⇒47.9%

・あまりそう思わない ⇒18.8%

・全くそう思わない      ⇒ 0.0%

⇒ところが、これを他社の状況として聴いてみると意外にも、他社は緩和しているという感想の企業が殆どです。詳細にインタビュー調査してみると、これは大量採用を始めた特定の業界・企業の影響が大きいことが明らかになってきました。

 

3.学生は内々定辞退をする際に企業を充分に理解した上で辞退していると感じますか?

・そう思う           ⇒ 2.1%

・まあそう思う              ⇒22.9%

・あまりそう思わない ⇒72.9%

・全くそう思わない   ⇒ 2.1%

⇒さて、研究の本題である内々定辞退の理由ですが、採用担当者は内々定者に充分に企業を理解して貰ったとは感じていません。これは単なる「滑り止め」にされたということと、充分に自社のことを伝えきれなかったという採用担当者の辛い想いが現れています。インタビュー調査でも、充分に理解して貰った上で辞退されるなら仕方ない、というコメントが多く伺えました。

 

売り手市場になったため学生には洪水のように情報が流れておりますが、こういった環境では自分のペースで1社1社をしっかり考えることは困難になってきました。そのため、「取りあえず」就職活動で「取りあえず」内定取得となることも仕方ないことでしょう。知名度の低い中小企業の採用担当者にとっては悩ましい時代が当分、続きそうです。

 

第128号:大統領選挙と採用活動

1月になり、大学は期末試験やレポートの準備に追われる学生で活気に溢れています。通常、この時期の採用担当者は嵐の前の静けさというか砂漠のオアシスというか、エアーポケットのような時期なのです。しかし今シーズンは学生の都合に一切関係なく採用活動を継続する企業も出てきているので、秋からそのまま息つく間もなく走り続けている学生さんも目にするようになりました。取り乱している学生を見ていて、ふと、盛ん報じられている米国大統領選挙のことが思い浮かびました。

 

米国大統領選挙は11月の本選挙が本番です。例年であれば候補者選び(党員集会)の開始は春以降ですが、今年は既に口火を切りました。これから全米各州を回る壮大な選挙活動が始まります。各州の党員集会の最初は例年通りアイオワ州が最初でした。私はてっきりアルファベット順に行われるものだと思っておりましたが、これは各州から開催日が出されて早い順に決定されるのだそうですね。アイオワ州はトウモロコシ畑しか無い地味な州なので(と、言ったら怒られますが)、毎年大統領選の時だけは脚光を浴びるようです。大学対抗の駅伝大会などで、最初のスタート・ダッシュで飛び出してTVカメラに大学名を映させるという戦略と同じですね。採用活動でも就職シーズンの最初の方が目立ちますし、学生も集まるので企業が先を競って大学訪問を始めるのと同じことかもしれません。

 

米国をドライブしていると、候補者の名前の看板を市中の住宅街アチコチで目にします。(日本の選挙ポスターと違って候補者の顔写真がありませんので、初めて見た時は何かのフェスティバルかスーパーマーケットの広告だと思ってしまいました。)これも駅伝大会に例えるなら、ランナーが走る沿道で大学や企業名の旗を振って応援することでしょうか。採用活動なら、各種メディアに採用広告をだすことでしょう。(原稿作成って、結構、大変なのです。)

 

ところが、先日みた米国内のニュースでは、既に国民は大統領選挙の過熱ぶりにウンザリしてきたと報じられていました。運動資金の調達とそれを使った広告活動の膨張により、既に「選挙疲れ」をしているとのこと。有権者の70%が選挙の短縮化を望んでいるという調査結果もあるそうです。

 

大統領選挙や採用活動が無駄とは言いませんが、今のメディア過剰・情報過剰の時代では、誰もが気づかぬうちに混乱・混沌の渦に巻き込まれます。21世紀が環境の時代で、日本の節約文化が発揮されることは間違いないと思いますが、エネルギーや物質の節約だけではなく、人間の心や精神活動も節約して、本当に大切なことに使うことを忘れないようにしたいものですね。企業も大学も。