第351号:学生と採用担当者の認識差

ダイヤモンド・ヒューマンリソース社からは就職活動に関するビデオ(ダイヤモンド就職DVDシリーズ)がリリースされていますが、お使いになったことはありますか?私は授業でプレゼンテーション演習の教材として利用することがあります。先日、企業採用担当者の方をゲスト講師に招いて視聴したのですが、学生と採用担当者の受け止め方が真逆になりました。

 

今回使ったのは2種類の模擬面接の映像ですが、まず学生に何も説明せずに視聴後、グループディスカッションをさせ「皆さんが採用担当者ならこの応募者をどう評価するか」を発表させます。その後、企業採用担当者と私がそれぞれの評価をコメントし、解説します。

 

その結果、大変面白いことに、ほぼ学生全員(約100名)が不合格判定をした応募者を、採用担当者と私は(条件付き)合格にしました。同様に、2本目の映像では80%の学生が合格判定した応募者を私達は不合格にしました。あまりの認識差に、採用担当者の方もビックリしておりました。学生と採用担当者の認識は以下のような点で、対照的です。

 

▼学生

・面接は完璧でなくてはならない。

・話し方(印象)で合否を判断する。

・悪い点を中心に見る(あら探し)。

・即戦力を求めている(短期の視点)。

▼採用担当者

・面接で緊張するのは当然なので細かな失敗は気にしない。

・話す内容(論理の組み立て)で判断する。

・長所短所を見て、採用の可能性を探る。

・即戦力より成長能力を見ている(長期の視点)。

 

総じて、学生は「できあがった人」を求めているのに対し、採用担当者は「可能性のある人」を求めています。それも、学生の言う「できあがった」は人間性ではなく面接テクニックです。

 

どうしてこんなに学生と採用担当者の認識差があるのでしょう?学生からはいくつか意見が出ましたが、「先輩達の話しからは恐怖感しか与えられなかった。」というのは考えさせられました。大学でもよく内定者の就職体験談が開催されますが、「こう言って内定した!」「こう言ったらオチル」と熱く語るのを聴く度に、上記のような採用担当者との認識差を感じます。

 

いろいろなことが推測されますが、それは学生への宿題として後日プレゼンテーションさせることにしました。さて、この認識差の問題、原因、対策は明らかになるでしょうか?しっかり分析して論理的に説明できるかでどうかで、私の授業の単位が取れるかどうかが決まります。

 

第350号:レポート提出とエントリーシートの共通点

6月の採用選考開始を前に、学生からのエントリーシート(ES)を見て欲しいという相談が相変わらず多いです。たまたま授業でレポート課題を出したのですが、私の場合、採点基準はES選考の視点と同じです。今回のレポートをみて、このままでは苦労する学生が多いだろうなあと思わされました。

 

採用担当者はよく「自分の頭で考える人が欲しい」と言います。社会では正解のない(または正解が無数にある)問題に取り組むわけですから、そうした状況に一人で判断して対応できる能力が求められます。

一方、用意された環境(正解が決まっている)でしか考えたことのない学生は、そうした問題にぶつかると戸惑ったり自分本位の考え方をしたりします。例えば以下の様なものです。

 

1.回答文字数を決める

レポートの文字数の指定が「1000字以内」とされた場合、皆さんなら何文字書きますか?私の授業で多かったのは850~950字位ですが、700字位のものも意外とありました。勿論、指定内なのでどちらも要件を満たしていますが、ここで学生に自分の頭で考えて欲しいと思います。レポートでもESでも出題者には「この位は書いて欲しいな」という気持ちがあります。それが指定されている文字数です。つまり、700字しか書かない学生は、100点満点の問題を自ら70点満点にしているのです。

 

これは、企業のセミナーで学生にアンケートを書いて貰う場合も同じです。アンケートには文字数の指定は殆どありませんが、指定された記入スペースがあります。採用担当者は同じく「この位は必要だろうな」と考えながらアンケート用紙を作っています。しかし、文字数指定がないとスペースの半分も書かないという学生が結構おり、勿体ないなあと思います。

 

2.提出日時を決める

先日のレポートはネット経由の受け取りで、提出日だけを指定し、あえて時間の指定はしませんでした。結果、約60%の学生が締切当日提出で、90%が18時までに提出してきました。幸いなことに、相手は18時過ぎには帰ってしまうだろうと考えてくれたようです。

 

但し、ここでもう一歩考えて欲しいのは、締切当日には一気に提出が集中するので「先生も大変だろうな」「締切ギリギリではじっくり見て貰えないかな」という点です。教員にとって、締切数日前に届いたものはゆっくりじっくり見て何か不備があれば再提出のアドバイスも可能です。しかし、当日に届くものは到着の確認だけで精一杯で、後でまとめて処理をします。

企業のESの場合は、レポートと違って再提出を促すようなサービスはありませんが、扱い方の余裕度については同じです。なので、ホンの1日でも早く出すことをオススメします。

 

というわけで「自分の頭で考える」というのは、自分の都合で文字通りに受け止めることではなく、相手の状況を察して行動するということです。こういう点で学生の差は付くのです。なかなか日本文化的な視点ですが、学生にはしっかり理解して欲しいと思います。