第23号:企業の内定者拘束

企業採用担当者が内定した学生の入社意思確認を行う時期になると、決まって聞かれるのが内定の拘束についての相談や悩みです。多くの採用担当者は内定者と腹を割ってホンネで話し合い、お互いが納得できる接点を求めようとします。しかし一方で、旧態としたやりかたで内定者の拘束を行うところもあり、採用担当者の側から見ても、そんな企業は辞退した方が良いと思わされるケースもあります。

かつての内定意思確認というと、他社の選考日や内定式の日に一斉に内定者を呼び出し、その出席によって入社意思をみる、というやり方でした。しかし今では就職シーズンの長期化によって日程も分散してきましたし、企業側の経費削減ということもあって殆ど見かけなくなりました。その代わりに出てきたのが、内定後の一定期間、その企業でアルバイトやインターンシップを求めるものです。日程を学生の都合に合わせてくれれば良いのですが、明らかに他社の選考が続いている期間中や学業期間中を指定してくる企業があります。また、そのアルバイトに参加しなければ内定は出さない、と言う企業さえあります。

内定者に納得して入って貰うために、企業の現場を見学や経験をさせるということは、とても大事なことで、そういった趣旨で行われるものは勿論、大いに行うべきことです。しかし、学生個人の意思や都合を一方的に無視するようなやり方には問題があります。

もうひとつの内定意思確認は、誓約書の提出を求めるものです。これもかつては10月1日の内定式の日に提出を求めるものでしたが、最近は内定時期が早くなったために、今頃から提出を求める企業があります。先日、ある学生から受けた相談では、本人の内定誓約書だけではなく親にもその同意書を求めている企業があり、流石に呆れました。就職部のみなさまには釈迦に説法ですが、書面による誓約書を提出したとしても解除はでき、法的な拘束力はありません。こういった企業には誓約書でも何でも出してしまえば良いと思いますが、内定受諾を再考すべきかもしれません。

私も企業採用担当者側の者として、やはり安易な内定辞退は行って欲しくありません。しかしながら、就職シーズンの早期化・長期化、現在の厳しい経済状況を鑑みると、もはや内定辞退をするなと学生さんに言い切る気持ちにもなれません。私の回りの心ある採用担当者達は今、入社後のキャリアプランを内定者と一緒に考えたりキャリアカウンセリングを行ったり、体ではなくハートを拘束しようと考えて頑張っておりますよ。

第22号:就職活動の目的

GWが終わりました。採用活動に区切りをつけた企業もあり、これからの時期は内定学生の意思確認を行い、その結果によって追加の募集活動の有無を決める時期です。順調に就職活動を展開して首尾良くいくつかの内定を取り付けた学生は、手持ちのカードの中から最終的な選択を行いますが、ふとこの時期に就職活動の目的を再考して悩む学生が増えてきます。

早いもので昨年の秋から続いてきた就職活動も半年以上経ちました。いざ内定を手にして自分の就職先を決めようという時に、はたと自分の就職活動の目的を見失う、というか学生が増えています。何かに追い立てられるように就職活動を始めたものの、ふと気づくと就職活動自体が目的になってしまっていることに気づくケースです。

あまりに多くの企業を回り過ぎて、知らないうちに就職活動を楽しんでしまっている学生もおります。こういった学生ほど、「就職活動戦略」とか「自分戦略」とかに熱心なのですが、「戦略」は「目的」に達するための手段であり、道筋に過ぎないことを忘れがちです。つまり、いつのまにか手段と目的がすり替わってしまっているのです。

では目的が明確でないままに、就職活動を行うことは良くないことでしょうか?勿論、目的は明確な方が良いですが、新卒の学生に限って言えば、それは必ずしもすれは十分でなくても良いと思います。むしろ就業経験の無い学生には具体的な目的が見えないままに就職活動を始める方が多いでしょうし、その活動の中で学生がだんだんと気づいて成長していく姿を、多くの就職部の方々はご存知のはずです。そのような学生は、必ずしも目的が明確ではなくても、それに近づくための道筋はハッキリしていることが多く、結果として志望動機が明確になっています。つまり自分の今の状態を分かっていれば、問題はないということですね。

一番、注意したいのは、自分の今の状態に気づかないままに、就職活動を続けている学生です。こういった方を面接してみると、秋の頃と志望動機の内容やレベルが変わりませんので、志望業界を変えてみても結果はあまり変わりません。企業採用担当者もこれからの後半戦はより厳しい目で見ていきますので、学生さんにも今一度、自分のポジションについて見直してチャレンジして欲しいと思います。