第85号:求める人材像と採用選考基準は違う

企業セミナーで学生から良く出る質問に「求める人材像」というのがあります。企業の方から積極的に伝えていることもありますが、これと採用面接で使われる「選考基準」は似て非なるものだと思います。

意外に思われるかもしれませんが、「求める人材像」はその企業での最大公約数的なものであって漠然となるのは当たり前です。だからどこの企業の「求める人材像」も「前例に挑戦する人」とか「問題解決力のある人」とかの似たようなものになるのも当然でしょう。

一方、「選考基準」の方は応募者の公平性のために社外秘になっているのが普通です。これは「求める人材像」を部署別に広く展開して求める人材像の要件を想定し、その人材であることを判断するための質問に落とし込みます。そして、更にその質問に対して理想的な答えを想定します(実はここまでやる企業はわりと少ない)。

しかし、その想定された答えを答えなくても不採用になることはありません。企業の求めているのは唯一無二の「解答」ではなく多種多様の「回答」だからです。実際、面接では想定外の回答をされることの方がはるかに多く、良くも悪くも「理想とする人材像」とはズレているのでそこをどう判断するかが採用担当者の最大の悩みであり、腕の見せ所でもあります。

経済産業省で「社会人基礎力に関する研究会」がこのテーマを調査しており2月の中間報告で、「企業の採用選考基準が明確でない」という点が指摘されました。就職のミスマッチがおきているのは企業が伝えている「求める人材像」と「採用選考基準」にズレがあるからという論拠ですが、私はこの視点には必ずしも同意できません。それは採用活動(就職活動)を大学受験や資格試験と同一視するものであり、面接において「回答」を求めるのではなく「解答」を求めさせるものになるからです。それは初期選考の段階では有効でしょう。しかし、最終的に企業の仲間として受け入れるにはアナログ的な「解答」だけでは割り切れない応募者と企業の価値観のマッチングがものをいいます。

ということで、企業セミナーで「御社の求める人材像とは何ですか?」という質問は上記の通りあまり意味がありません。それどころか、「ああ、この学生さんは解答を求めようとしているね。きっと面接ではそれに合わせた志望動機や行動実績を用意してくるだろうなあ。」という印象を採用担当者に与えます。

学生が面接を受ける際、企業の求める人材像や選考基準にあまり気を取られる必要はないと思います。それよりも、やはりその企業を研究してみたうえで自分のどの部分をその企業に売り込んだらよいだろう?と考えてみる方が良いと思います。それは「求める人材像」に合わせるという解答合わせではなく、その企業への「売り込む人材像」となり、「求める人材像」とは似て非なるものになるでしょう。

 

 

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