第148号:農耕型採用・狩猟型採用・養殖型採用

経済環境が大きく変わるときには企業の採用活動も変わります。私は1990年のバブル期前までの採用活動を「農耕型採用」、バブル期後を「狩猟型採用」と区分してきましたが、日本のITバブル崩壊の2002年以降を「養殖型採用」と名付けています。この造語は、このメルマガでは2年前に初めて使いましたが、大手企業を中心にだんだんと増えてきたようです。その動きはこれからのキャリア教育や就職セミナーは勿論、大学のアイデンティティにも影響を及ぼしてくるのではないかと思っています。

 

それぞれを簡単に説明すると以下の通りです。

「農耕型採用」・・・大学の勉強にはあまり期待せず、白紙から企業が新入社員を教育する。経済環境が良くて企業に人材育成の余裕があり、大学進学率がそれほど高くなかった売り手市場の時代の形態。

「狩猟型採用」・・・経済環境が厳しくなる一方で大学進学率が向上し、買い手市場の採用活動で企業が少数厳選採用を行う形態。新入社員の早期自立を求めて「即戦力を求める」という文言が流行る。

「養殖型採用」・・・経済環境が復調したものの大学の大衆化はますます進み、入社前から企業が大学生の能力開発に着手し始める。寄付講座、長期インターンシップ等が代表的事例。

 

つまり「養殖型採用」とは産学連携の人材育成のことですが、採用活動に直結しているわけではありません。間接的な特定企業と特定大学の関係強化です。つい先週もソニーと慶応大学による技術者育成の共同プロジェクトが報道されましたが、こういったケースはこれからますます増えてくると思われますが、以下のような問題も出てきます。

 

・大企業が有利になる。・・・寄付講座には相当な企業の資金負担や余力が必要です。

・大学のアイデンティティが変わる。・・・アカデミズム(学術中心)からプラグマティズム(実用中心)へ。

 

結果的に、大学が「職業予備校」に向かう可能性が高くなります。(私は、それはそれで一つの選択肢だと思っています。大学も大学生も増えすぎてしまった現在、全ての大学が同じアイデンティティでは存在価値が無くなるでしょう。)それが良いことかという議論はさておき、経済環境が厳しくなるこれからは、企業が大学に求めるものはプラグマティズムに向かわざるをえませんし、その期待に応えることによって大学もまた社会と連携した人材育成ができるようになるのではないかと思います。

 

とても難しい問題ではありますが、大学祭のようなお祭り騒ぎや受験テクニックのような就職活動はそろそろ止めて、今回の経済危機が企業と大学の良い関係作りのキッカケになればと期待しています。

それが企業の採用活動と、学生の就職活動を是正するものであれば尚、幸いです。

 

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