第156号:最低限の採用活動

3月決算が近付き、いよいよ経営者も来期の人員計画を出さなければならない時期となり、人事の現場にも採用予定数という具体的な数字が落ちてきました。先週あたりから大手企業の採用予定数が新聞記事に発表されてきておりますが、実際はこういった数字は本当の採用予定数ではありません。採用担当者はそれを知りながらも覚悟を決めて採用活動に取り組んでいるのです。

 

新聞発表の採用予定数が本当の数字でないという意味は、企業がいい加減な数字を新聞社に出しているわけではなく(そんな企業もたまにありますが)、本当に必要な人員数を計算して積み上げた「実数」ではなく、経営トップの判断でこの位の人数を採用したいという「意志」だということです。これは経営計画の売り上げ目標も同じで、1年先の売り上げ目標はかなり計算して算出しておりますが、3~5年先(昔、中長期計画が流行っていた時期は10年先まで発表している企業もありました)の数字は、「この位は売りたい!」という意志というか目標であるのと同じです。しかも今は超早期化した採用活動であることと、まれに見る経済の激変期なので、3ヶ月先だって予測は困難です。

 

しかし、それでも採用担当者はこれまでのしがらみから採用活動を始めなければなりません。既に広告もセミナーも行ってしまい、学生に選考案内やDMまで流しておりますし、もし万が一景気が急速に好転した場合は採用数が不足することになりますから。そんな想いを抱えながら、企業セミナーでは不安な顔をせずに笑顔でプレゼンテーションをするのはなかなか辛いものがあります。

 

こういった状況では当然ながら企業の採用選考ハードルは上がります。採用数を必要最低限に絞った場合、以下の5つ方法をとるのが普通です。

1.縁故だけ・・・どんな企業にも多少のルートはありますし、縁故者にも優秀な人はいます。

2.理系だけ・・・メーカーの場合ですが大学の勉強が重視されない文系は不況期に絞られます。

3.推薦だけ・・・「理系だけ」に含まれますが、理工系大学教授とのパイプを死守します。

4.都心だけ・・・不況では出張費用が真っ先に削減されますので近郊大学だけ訪問します。

5.有名校だけ・・・大学偏差値は不況期にこそものを言います。

 

これらの採用手法はコストがあまりかかりませんし、小規模な採用ならこれだけで十分な場合もあります。不況期になると縁故紹介も増えてきますが、断る理由も「不況なので」「人員整理中なので」と楽になりますし、縁故応募者のレベルも上がります。逆に、縁故応募者も1社では不安なようで、縁故で数社に応募する場合さえあります。かつて内定を出したら「御社は(縁故応募の)第3希望なので、ちょっと待って下さい。」と言われたことがあります。

 

さて、こんな不景気だからこそ大企業に入りたいという応募者の気持ちはわかりますが、今年は採用数が少なくなった上に応募者数は例年より2~3割の増加傾向なので、大手企業志望だけは非常に危険です。先日、経済産業省が新人の採用と教育に熱心な企業という報告書を出しました。不況期にはこういったところも是非、根気よく回ってみて欲しいものです。

▼雇用創出企業1400社(経済産業省)

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/sokeizai/kigyogaiyosyu.html

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