第158号:「新卒自宅待機」について

3月末に突然、内定取り消しや自宅待機(自宅研修)を企業側から伝えられて当惑している新入社員(まだ内定者?)が増えています。内定取り消しの不安を越えてようやく新社会人としての入社時期となったのに、今シーズンは本当に予期せぬ出来事が多いです。採用担当者にとっても慣れないことですが、この「自宅待機」というのがこんな形で使われたのはあまり記憶にありません。

 

これまでも大学卒業時期と入社時期がずれているというケースはいくつかあります。キャビンアテンダントのように採用募集時期にその内容を公示しているところもあれば、外資系企業のように、採用選考の過程において「いつ頃入社希望ですか?」と確認することもあります。(外資系企業の場合はそもそも卒業後に就職活動を始めることが多い。)なので、これらは厳密には自宅待機とは言いません。

 

「自宅待機」とは不況等によって正社員に仕事が無く、経営者から休業を命じられたことを言い、その場合には最低、賃金の6割が支給されます(労基法26条)。今回の新卒入社については、このケースを準用したものでしょう。自宅待機中に6~8割の賃金を支払うとしているところが多いです。

しかしここで注意しておきたいのは、その「自宅待機」が正社員として採用したうえで(社員としての身分を認めたうえで)支払っているかどうかです。入社時期の延期なのか、入社してからの「自宅待機」のどちらか?ということです。報道された事例を見ていると、入社時期を半年遅らせるだけではなく、半年後の入社も確約されずに曖昧な表現をしている企業があります。自宅待機になっていても、その賃金から社会保険がちゃんと支払われているかも確認すべきでしょう。

 

さて、こういった「新卒自宅待機」が起きた企業側の事情はどんなものでしょうか?

不況で当初の事業計画が変わり新卒の配属先が無くなってしまった場合、まずは4月に正社員として受け入れて、「現場実習」と称して工場の生産現場や販売現場に送り込んで一時期的に仕事をして貰うことが多いです。その期間中に景気の改善を期待して徐々に配属先を決めていくのです。ところが、今回の不況は派遣・請負社員を停止して正社員にその仕事を回しており、新卒に回せる仕事が無いという状態です。それに新卒社員の場合はすぐに仕事ができるわけではなく最低限の研修も必要ですので、言葉は悪いですが、必死に働く正社員の「足手まとい」になり生産効率を下げることになりかねません。正社員でさえ慣れない仕事に異動されて精一杯の状況なのですから。

 

余裕のある企業では、新人を現場から隔離して研修所にまとめてじっくり研修することもできますが、その場合は100%の賃金と追加の研修費用が発生します。そのため、採用担当者も断腸の思いで「自宅待機」を言い渡しているのでしょう。

 

内定取り消しのことでも同様ですが、こういった時世になると改めて新卒学生にも最低限の法律知識を教える必要があると思います。自由と自己責任の時代の労働者とはそういうことであり、それに合わせた就職支援が必要になると思います。大学を卒業されて一安心と思ったら、「自宅待機」について相談し来る学生がいたら、卒業生はサポート外と考えずに暖かくご支援下さい。

 

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