第166号:大学生研究フォーラム2009から

去る7月25~26日に、京都大学高等教育研究開発推進センターと電通育英会の共催で『大学生研究フォーラム2009』というセミナーが開催されました。私も大学で非常勤講師をする身であり、また企業採用の視点でも興味があって参加して参りました。

 

フォーラムの参加者は、キャリア教育やFDに関わる大学教員、教育センターやキャリアセンターの大学職員、そしてこの分野の研究者と企業の人材開発系の方々、在野の実務家(NPOが多い)が主でした。

今回のテーマのひとつは、「大学生の何が育っていて、何が育っていないのか?」というもので、大学のキャリア教育で学生は何を学び、そしてそれが社会に役立つのか?ということが、研究者の報告とともに各大学の事例やパネルディスカッションで討議されました。

 

議論は「学力志向」と「対人志向」についてが中心で、労働政策研究・研修機構の研究員の方の報告では、この二つの志向性の高い学生は、就職活動において第一希望の企業に決定する可能性が高いということでした。聴いていて、なるほどと思う点もあり、当たり前だなと思う点もありましたが、こうした研究は大学生の学びがどのように社会で活きるか、就職活動につながるのか、ということにもつながり重要なものだと思いました。採用担当者の流行言葉で言えば、「地頭」と「コミュニケーション力」ですね。

 

私が個人的に非常に感銘を受けたのは、弘前大学の先生のご報告です。ここで詳細はご紹介できませんが、要するに予習・復習をしっかりさせて(予習しないと授業に出席させない、図書館で文献を見るのを必須にする)、学問への関心と意欲を自然と高めるということです。授業重視で教育の本筋をしっかり極めていると思いました。

この授業を受けた学生自身からもここで何を学んだかという報告がありましたが、この回答を聴いていて、思わず内定を出したくなりました。知識が問題ではありません。学習の重要さと意志決定がしっかりできているのです。これこそが一番の就職活動ではないでしょうか。

 

さて、今回のフォーラムで残念に感じることがありました。それは、この会場に企業採用担当者が殆ど居ないことです。「大学生の何が育っていて、何が育っていないのか?」を考えるのなら、それを一番良く見ている採用担当者を引っ張り出してくるべきでしょう。企業側も大学の授業に対してもっと関心を持つべきだと思います。これが日本のキャリア教育の一番の問題なのかもしれませんね。

 

▼参考URL:

「大学生研究フォーラム2009」

https://www.dentsu-ikueikai.or.jp/forum/

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