第172号:巨大母集団の憂鬱

街中にリクルートスーツの学生が増え始めました。2011年卒業者向けのセミナーが始まってきたのだなとわかりますが、秋の風物詩として定着してしまったようです。例年ならば採用担当者も夏からの準備を整え、「さあ、やるぞ!」と気合いを入れる時期でもあるのですが、今シーズンの採用担当者の方々の顔を見ていると、どうも浮かない感じが致します。シーズン前から既に倦怠感や疲労感があるような。どうも初期応募者が多すぎてこれから始まる仕事量の多さにげんなりされているようです。

 

採用担当者にとって自社への応募者が増えることは喜ばしいことです。それだけ有望な人材と出会える確率が高まると思われますし、採用広報の手応えを感じられますから。ところが今シーズンは、未だに経済や経営の見通しが不透明のままで採用予定数も定まりません。昨年の今頃は、リーマンショックがあったとはいえ、「そんなに悪くはならないだろう」「例年並みなら大丈夫だろう」「新卒採用にはそれほど影響は無いだろう」というやや楽観的な気持ちでした。しかし今季は「内定者(2010年卒業者)の配属見通しも立たないのに、本当に採用するんだろうか?」という疑心暗鬼にかられています。

 

当初は2010年卒採用がボトムで2011年には回復するだろうと思われていたものの、現時点ではそれほど増えそうにない、場合によっては2010年以下になりそうだとの見通しさえあります。

勿論、企業では採用予算(特に広告宣伝費)を削り、昨年と比べれば相当に控えめな活動をしてきたつもりが、蓋をあければ必死な学生が大挙してエントリーしてきているわけです。しかも不況となれば、例年以上に学生の大手指向は高まり、最近のメディアでも「求人倍率はバブル崩壊時ほどの最悪ではないが、応募者が人気企業に殺到してミスマッチを起こしている」と報道されています。実際、ある人気企業の採用担当者に伺ったところ、「もう母集団形成(募集広告)は出さなくても十分だと思う」とため息混じりに語られました。

 

試しに前回ご紹介した文献『就活って何だ』に掲載されていた人気企業の初期母集団を集計してみたところ、人気企業12社で約40万人のプレエントリーがありました。その12社の内定実績数合計は約2000人程度ですから、実に平均200倍という倍率です(一番人気企業では700倍に近い)。

つまり、一人採用するために199人不合格にする労力が求められるわけですね。

 

エントリーシートやWeb試験で選抜し、実際に面接する集団はドンドン絞られますが、そうして絞りに絞って厳選選抜した応募者が、更に最終選考では役員の気持ちや春の経営状況によってバッサリ不合格にされてしまうわけです。この先のことを考えると採用担当者が憂鬱な気分になるのもおわかりでしょう。

企業の顔としての役割も担うので前向きで明るいタイプが多い採用担当者たちですが、流石にこの状況では伏し目がちになりそうなシーズンです。

 

 

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