第211号:東大の秋入学を考える

日経新聞トップ記事になるとは驚きましたが、東大が秋入学への全面的移行を本気で検討するそうですね。安倍元総理の置き土産だとの噂もありますが、採用担当者の視点で考えてみましょう。

 

採用担当者にとって、まず気になるのは入学時期の変更よりも卒業時期の変更です。卒業時期が半年延びることにより、またまた採用活動(就職活動)が延びるのか、それともこれを機会に採用選考時期が総合商社の主張の通り後ろ倒しになるのかということです。

結論から言えば、秋入学への移行が東大だけならば、採用担当者にとってあまり影響はないでしょう。なぜなら東大生というのは採用市場では特殊なマーケットで、全体からみれば少数であり、東大生の採用数にこだわるのは伝統的な大企業に集中していますから。他の大学が、東大に倣って一気に変更しない限り、たいしたことはありません。企業で言えば、パナソニックやソニーが既にグローバル採用に移行しているのと同じで、そうしたグローバル人材を本当に必要としており、本当に使いこなせる日本企業はそうは多くはありません。

 

次に、東大の狙いである海外の優秀な留学生が本当に日本にやってくるならば、それは採用担当者にとって有り難いことです。というのは、わざわざ海外のジョブフェアに出張しなくても、国内で日本語のできる優秀な留学生とコンタクトする機会が増えますから(数少ない海外出張を楽しみにしている採用担当者は別ですね)。

一般に海外からの留学生は、卒業後に母国にはすぐに帰らずに留学先で母国より待遇の良い就職先を求め、そしてキャリアを積んだ何年後かに帰国することが多いです。採用担当者にとっては、採用後にいかに定着させるかという努力が求められるようになりますが、日本国内に住んだ留学生は日本(企業)の良さがわかりやすいと思います。

 

さて、今回の改革に際し「秋入学は世界標準だから」という論もあります。日本の大学の入学時期が欧米各国とズレているから留学生が日本に来づらいという論ですが、ここで指摘したいことがあります。(本当は学問水準に魅力が無いのかもしれませんが、それは東大とはいえあまり明らかにしたくないことでしょう。現実的には日本語の授業が殆どなので来づらいことの方が大きな気がします)。

それは世界から優秀な人材を集める海外有名大学の殆どは「私学」であるということです。世界中から優秀な人材を集めて大学の研究成果をあげ、大学への寄付金・支援金を集めるというのが経営戦略です。しかし、東大をはじめとする莫大な税金を投入する日本の「国立」大学は、私益ではなく国益をしっかり意識して欲しいということです。つまり東大は設立基盤が世界標準型ではないということですね。だから海外の留学生への投資が簡単に海外流失しないように十分に考えて欲しいものです(ODAのように「世界益」という思想ならそれはそれで良いですが)。

 

最後に、入試時期の変更をせずに入学までの半年間をギャップイヤーとするならば、日本人東大入学者は全員、海外留学を必須にさせたらどうかと思います。税金で海外留学に行けば、多少は使命感や愛国心も感じてくれるでしょうし、国内で5月病にもならないでしょう。こうした機会が日本と世界の未来を背負う若者の成長機会になるのなら、堂々と税金を投入すべきだと思います。

 

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