夏休みもたけなわです。インターンシップの対応等がない採用担当者もこの時期は比較的のんびりされているようです。倫理憲章で広報活動の解禁が12月になったお陰かもしれませんが、来年は更にまた時期がズレます。採用担当者の方々に来期の対応を伺ってみると、異口同音に「まだどうして良いのかわかりませんが、何かしないことには・・・」という回答が返ってきます。採用担当者はすっかり休むことを忘れてしまったようですね。
採用担当者が「季節労働者」と言われていたのは、インターネットが世の中に広く普及する前、90年代後半まででしょうか。ちょうど就職協定が廃止になった頃ですね。私が営業部から人事部に異動したのは4月で、人事部が採用選考のピークでした。まだ採用活動のことを殆ど知らないままに、会社説明や面接の嵐に巻き込まれ、終電を追いかける毎日になりました。そんな時に先輩が言った言葉を今でも覚えています。「俺たちは季節労働者さ。今は大変だけど、夏になれば毎日(午後)5時に帰れるよ。」
20年近く前のことなのに今でも鮮明に覚えているのは、とても信じられないという強烈な印象だったのでしょう。しかし、その言葉は本当で、8月にはそれまでの騒ぎが嘘のように仕事がなくなりました。これも記憶に残っているのは、「本当に早く帰って良いのかな?」という感覚です。勿論、それなりの年代になれば仕事は自分で作り出すものですから、いくらでも新しいアイデアを出して主体的に仕事をすることはできます。しかし、考える間もなく作業に忙殺され続けていると、考えて仕事をする能力が衰えてきます。言い換えると、無思考に作業を続けるのは楽なのです。
就職協定がなくなり、インターネットが普及し、膨大な応募者がやってくるようになり、エントリーシートやセミナーの嵐、そして更には3年生向けのインターンシップの準備に留学生対応・・・。今の採用担当者は作業に忙殺されて考えて仕事をする余裕がなくなってきています。10年以上もこの状態が続いているのです。
そんな今、政府の方針でいきなり採用時期を遅らせろと言われました。これは「そんなに仕事をしないで下さい。」と言われたのと同じことです。本来ならば、喜んで季節労働者に戻り、今の仕事の問題を洗い出したり新しい企画を考えたり、余裕がないとできないことに取り組むものです。しかし、そうした考える仕事をする能力や感覚を忘れると、「まだどうして良いのかわかりませんが、何かしないことには・・・」というセリフが出てくるのかもしれません。
今回の倫理憲章の改訂にあたり、私は採用担当者に大事なことを考えて貰う時間にあてて欲しいと思っています。そうしたことができるのが採用担当者の夏休みであって欲しいと思います。
もし採用担当者がどうして良いか途方にくれていたなら、大学のオープンキャンパスにでも招待してあげてはどうでしょうか?オープンキャンパスはどこも盛況ですが、採用担当者が大学にやってきて、「大学の授業に期待すること」とか「就職活動と採用活動の今後の課題を考える・・・」といった対談の企画は見かけません。企業も大学も有意義なオフシーズンを過ごす季節労働者であればと思います。