第342号:キュレーションサイト炎上から学ぶこと

昨年から世界中で激変の出来事続いておりますが、最近炎上したキュレーションサイトについて大学生の関わりが気になっています。

 

私は大学時代に法学部で無体財産法(今は知的財産法と呼ぶのが普通です)を学び、知的創造活動に価値を認めるのはとても人間らしい学問だと思いました。しかし、その権利をグローバルに認めすぎると発展途上国は勝てなくなる矛盾もあり、ビジネスとして無制限に認めるのも悩ましい世界です。

 

知的財産は元々自分の財産を他者に使わせない(自分で独占して使う)権利だったのですが、社会が発展するに従って、その権利を他者に使わせることで収入を得るという公法から私法的な性格に変わってきました。そして現在の爆発的なネット社会の拡大によって、この権利が軽視されてきています。

 

この権利の意義や重要性は学ばないと価値も課題も理解できません。素人の実践は危険です。特に三次産業比率が高くなった日本では、ソフトの世界で働く人間ほどソフトについて高い意識が必要です。一般常識である善管注意義務以上のプロ意識が求められ、自分と他者の権利をしっかり尊重しなければならないのです。ところが、ネット社会はあまりに他者の知的財産の流通が激しく簡易であるため、いつしか大事なプロ意識や経営責任や順法精神が忘れられ、今回の事件を招いたのでしょう。

 

無体財産がローカルの問題からグローバルに、そして急速にネットに展開されている今、改めてこの世界の経営者は学び直さないといけません。知らずに従業員や社会を誤った方向に導いてしまいます。

 

カタカナは便利です。怪しいものもカタカナにするとイメージが良くなります。キュレーションといえばカッコ良いですね。しかし本職のキュレーターは目利きのできるプロで、博物館の膨大なバックヤードの財産の中から厳選して展示し、引用元を示すし複製品・模造品とも明記する専門家の仕事です。そうした能力や意識を持たずに、世間の情報を組み合わせて捏造したまとめサイトに広告まで貼り付けるなら、秘宝館・珍品館です。

 

この問題の裾野は大きいです。大学生にとっての関係では、卒論やレポートの剽窃問題、そして以下のURLに示したような綺麗なオフィスでインターンと名付けられたブラックバイトがあります。知らない間に学生がこうした世界に鈍感にならないように、キラキラ見える仕事の本質を見極める智慧や仕事へのモラル感を授けたいです。それが大学で学ぶ意義だと思います。

 

研究や教育や立法や行政よりも遥に速くこの世界が広がっています。原子力や遺伝子工学などと同じく、人間は未知で魅力的で危険なものとの付き合い方を学ばなければなりません。進化を止めるのではなく制御する智慧を期待したいものですね。慌ただしい授業や就職指導の中で、今年もしっかり学生を指導しましょう。本年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

▼「MERY」記事量産の現場 「90分に1本のノルマ」インターンが証言

http://withnews.jp/article/f0161209003qq000000000000000W00h10301qq000014399A

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