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第7号:応募学生の意志の低下(今年の就職戦線の傾向3)

前回は応募学生のレベル低下というテーマをお伝えしましたが、似ていて異なるものに、意志の低下という現象があげられます。筆記試験の結果も良く、面接の対応にもスマートな学生なのに何をしていきたいのか見えてこないケースがあります。

先日、ある学生との就職活動に関する会合で「貴方のやりたいことは何ですか?」と訪ねた時、彼の回答は「適性検査の結果によると、僕は○○と○○の仕事に向いているようなんです。」というご返事でした。私は彼自身がどんなことを目指しているのかを率直に聞きたかったのですが、残念ながらその後の会話の中からは感じ取れませんでした。

この現象の背景には、就職情報の洪水に翻弄される現代の就職活動学生の姿が浮かんでいると思います。10年前と比べ、はるかに応募企業情報は安価に大量に手に入りますが、その結果、情報収集に時間を取られすぎ、自分で取捨選択したり考えたりする時間を失っていると思います。これがIT時代の就職活動で最も危険な点でしょう。

釈迦に説法ですが、アセスメント・ツールは結果と自分の考えに差があって当たり前であり、何故そこに差が生じるのかを考えるキッカケにして、新たな自分の可能性を発見するものであります。被験者が自分の適性を理解するためのサブ・ツールなのですが、最近はこの点が本末転倒されがちなので、進路指導には要注意だと思います。

同様に、学生に自己分析の必要性を訴える就職コンサルタントの方や書籍は多いのですが、その分析結果に縛られすぎないように注意を喚起するのも大事なポイントではないかと思われます。エントリーシートでも、面接での志望動機でも、適性検査でも、同じことを何度も回答したり、書いたりすることは、本人にとって気づきを喚起させるための良いトレーニングになる一方、あまりに無意識にそれを続けると自己分析した自分に捕らわれていることに、本人も気づかないことがあります。

自分が何者かを改めて自分で考える力、決める意志を指導したいものですね。

第6号:応募学生のレベル低下(今年の就職戦線の傾向2)

今シーズン、採用担当者からもっとも多く聞いたのは、応募学生のレベルの低下の件でした。文部科学省もようやく子供の学力低下について、認識を新たにし始めているようですが、採用の現場の人間は危機的なものを感じ始めています。

長年、採用活動を行っていると、当たり年とそうでない年があるというのは経験してきましたが、ここ数年は明らかに連続して低下の傾向にあるようです。それも学力の低下という知識面だけではなく、挨拶・マナー等の常識に関する部分も目立ってきました。企業説明会に遅刻しても、「遅れてきました。」と当然のことのように遅れてきた対応を求められたりします。ついにある著名企業は、遅刻応募者を門前払いするようになりました。「大学4年生というよりは、高校7年生だね。」という採用担当者もおります。

この傾向には多くの複合的な理由があるのでしょうが、最近の高校生の就職率が減り大学進学率が上がっているところをみると、これまで大学進学しなかったタイプの学生が増加しているのではないか?ということは容易に推測されます。面接の現場の実感でも、有名大学の学生に対しても、「あなたは一般受験入学ですか?推薦入学ですか?」という質問が欠かせなくなってきました。こういった現象は、就職相談の現場にあるみなさまにも実感されているのではないでしょうか?

かつては期待するレベルの学生が採用できない時には、ボーダーラインの学生に内定を出す企業もありましたが、この経済環境下においては、定員割れしても無理に採用しない企業の方が増えてきています。その結果が、2001年の新卒無業者率21.3%(文部科学省学校基本調査)という数字を生み出す理由の一つになっているのかもしれません。コトはもう世代ではなく時代の問題になりつつあるといえるのではないでしょうか。

 

第5号:女子学生の健闘(今年の就職戦線の傾向1)

今春からの企業の採用活動における動向がまとまってきました。これから数回に分けて今シーズンに顕著だった傾向についてお伝えしていきたいと思います。

まず目立ったのは、今年の就職活動では女子学生が頑張っておりました。企業人事部によっては「今年は女子の方が優秀だ。」という言い方をされるところも多いですが、ダイヤモンド・ビッグ社の調査(男子重複内定社数:2.53社、女子重複内定者数:3.34)でも明らかになったとおり、男子学生を大きく上回る内定数を得ています。

Professional Recruiters Clubのメンバーの声を聞いても、「年々、女子の方が優秀なり、総合職の枠を変えた。」「女性ばかり採用するわけにはいかないので困った。」という声を聞きます。春先に私の方で何回か就職活動中の学生を対象にディスカッションを行いましたが、その中でも積極的な発言を行ったり、質問して食いついてくる女子学生が目立ちました。

女子学生が優秀かどうかはさておき、私が感心したのはその積極性と行動力です。男子学生に比べて、「一人で行動する力」が強いように見えます。インターンシップも積極的に探し、ドンドン自分で意志決定し、失敗しても立ち直りが速い。米国のドラマのキャリア・ウーマン(という言い方も古いですが)が、仕事と恋人との選択で悩みながらも迷わず仕事を選ぶシーンを彷彿とさせます。

来るべき少子高齢化時代、女性と中高年者の活躍が期待されていますが、10年先を見るとまさに今、元気な女性を採用することが、企業の基盤を支えることになるのではないでしょうか。10年後、優秀な女性社員に外資系企業へ転職されないような企業つくりをしなければならないと思います。

 

第4号:多様化するインターンシップ

採用担当者の新しい夏の仕事に、3年生向けのインターンシップの準備・実施があります。インターンシップは、厚生労働省やマスコミ等では持てはやされている感がありますが、ワークシェアリングの時と同様、その捉え方は企業人事部によって温度差があり、採用のための手段としている場合もあれば、採用手法としてはメリットがないと考えて導入に否定的なところもあります。

一方で、学生はインターンシップを採用応募のひとつとしてステレオ的に判断しがちです。インターンシップを行っていない企業は遅れている、インターンシップの選考に漏れたらその企業の採用選考を受けても通らない、という声をよく聞きますが、上記のとおり、インターンシップは企業によってまだ模索中のプログラムであり、今後ますます多様化していくことでしょう。

またインターンシップ経験者から、プログラムの内容や現場の受け入れ体制が十分ではない、という感想を聞くことがあります。しかし、実際に仕事をする際に環境が十分に整っていることなどあり得ません。与えられた環境の中で、如何にベストをつくすか、またはその環境を変える努力をするか、ということを学ぶのが就業経験の本質でしょう。大学の机上の学問では学べないことです。言い換えれば、社会の不合理(現実)に接する機会なのです。

かつてインターンシップという言葉を日本に初めて導入された、法政大学清成総長はこれを就職活動という視野の狭い概念ではなく、大学指導では困難な就業体験教育として紹介されました。現在のブームは本来の教育という概念からはずれつつあるのかもしれませんが、こういった機会を学生も企業も模索しながら、積極的な学生が増え、良いプログラムが増えていくことを期待しています。

第3号:採用担当者の夏休み

今年の夏は台風と猛暑の繰り返しですが、暑中お見舞い申し上げます。殆どの大学では前期末試験も終了し、賑やかだったキャンパスも静けさを取り戻しているのではないでしょうか? この時期は就職情報企業から企業人事部向けにいろいろなセミナーが開催されるシーズンで、企業の採用担当者は夏休みのことを考えながらも、もう来年の採用活動の企画について急き立てられるように思いをめぐらせます。セミナーの内容は、以下の3通りのパターンが多いです。

1.この春の就職戦線全体の傾向分析

2.採用活動を順調に終えた企業の担当者を招いた事例紹介

3.秋から販売される新商品の紹介

採用担当者は、夏休み中にこのようなセミナーを参考に、春の採用活動の分析を行い、成功点・失敗点について、いろいろと議論をして夏の終わりから秋の始めにかけて来春の採用活動の計画を考えます。ちょうど大学の先生が夏休みに自己研鑽をされるような充電期間といえるでしょう。

ところが、最近の就職情報企業から紹介される商品には、就職シーズンの超早期化により、現在の内定者に対する研修システムや、内定者の辞退を防ぐようなフォロー対策を企画した商品も増えています。内容をみてみると、パソコンの使い方、決算書の見方、という実務的なものから、組織での行動、自己啓発の仕方、キャリアプランの考え方、という社会人教育に関するものまで多彩です。

更に加えて、ブームに火がついてきた、夏休み期間を利用したインターンシップ(多くは3年生対象)の企画商品も登場しつつあります。

というわけで、季節労働者と言われている採用担当者の、唯一のやすらぎ、ともいうべき夏休みも、もはや風前のともし火になって参りました。これはある採用担当者のつぶやきです。「通年採用というのは、1年中、学生の応募を受け付けるということではなく、採用担当者が1年中忙しいってことさ。」

 

第2号:内定者フォローのシーズン

7月になり、多くの企業は作用活動の大詰めに入ってきています。例年であれば、もう少し追加採用をしようか・・・と考える企業も、不透明な景気動向、今年の学生のレベルを考慮して、無理に追加募集をする企業が減っており、内定を出した学生へのフォロー活動を始めています。

今年の内定者フォローの傾向は、「入社意思再確認型」に加えて「キャリアカウンセリング型」が登場してきていることでしょう。今年は絶対的な求人数が少なく辞退先が減ったこともあり、内定者の相談は「他社と迷っているのですが・・・。」から「私のやりたいことは、本当にできますか?」という不安に変わってきています。職種別採用や、インターンシップという、採用のミスマッチを防止するための新たな採用手法の導入が進んでいるのも、本人のやる気重視という面に加えて、学生のそういった精神的不安に対応する効果も狙いです。

しかし、そういった就職に対する不安は、社会人となるために若者が必ず越えなければならないハードルであると思います。あまりに学生に対して用意された環境は、若者の本来の力である、未知なるものへの挑戦、不安な状況に対処する精神的強さを削ぐことになり、熱帯魚のような完備された環境でしか生きられないひ弱な若者を育ててしまうのではないかと心配になることがあります。多くのメディア情報や自己分析過多の影響で、自分のやりたいことも誰かに決めて貰う、という若者が出てこないよう願っています。

若者には人間的成長を支援するための、大人の対応が必要だと思います。家庭における父性欠如の役割を、採用担当者にまるごと期待されても困りますが、大学就職部のガイダンスにおいても、業界セミナーだけではなく、企業人からも現代の若者が陥りがちな点をアドバイスしてあげたいものです。

第1号:変革の時は、機会の時

採用担当者の企業間コミュニティ、Professional Recruiters Club代表の鈴木と申します。これから大学の就職ご担当者向けに、メールマガジンの連載を担当させて戴きます。
既に皆様がお感じのとおり、今年の就職活動は例年以上に厳しい環境であります。国の経済見通しにおいては、やや薄日を感じさせる発表があるものの、日々人事採用活動に勤しむ私達は、今回の不況が一過的なものではなく、構造的なものであると痛切に感じております。

これまで長らく日本の強みであった、終身雇用慣行および新卒採用中心の人事政策が見直されつつある現在、私達、企業人事採用担当者の仕事も変革を求められており、それは同時に学生の就職活動および貴兄、就職ご担当者の業務にも大きな影響を及ぼしてくることでしょう。既にいち早く、「就職」部から「キャリア開発センター」と名称を変更し、これまでの学生支援体制の見直しを始めたところもあります。しかしこれから必要なのは、全体の底上げだけではなく、各学校にあった個性的、多様化した施策を考えることではないでしょうか。今年の採用活動において企業の採用担当者は、「基本的なマナーができない学生が益々、増えたねえ。」「みんなそこそこ良いけど、ピカイチは居ないねえ。」と異口同音に申しております。

こういった時代の変革期において、今ほど大学・学生・企業が新たな関係つくりを求められている時はないでしょう。そして変革期において重要なポイントは、如何に早く行動を起こすかです。ベンチャーの起業と同じく、7割成功の可能性があればいち早く始め、失敗したらそこから学んですぐに修正する、というチャレンジングなやり方こそが必要なスタイルです。つまり、今こそまさに「機会の時」なのです。これからお送りするメッセージが、新たな大学と社会の関わりとを考える皆様の一助になるように祈っております。では、宜しくお願い致します。