先日、私が昨年から担当している2~3年生向けの新しいキャリア教育で、提案力向上のために「学生が提案する採用活動」というプレゼンテーションを行いました。評価者には馴染みの企業採用担当者にご協力戴き、率直な意見を戴きましたが、学生にとって良い勉強になりました。
受講学生は約200名で、そのうち7チームがこのテーマに取り組みました(テーマは他にもいくつかある)。必ず定量・定性調査等を行い、調べた事実に基づいた提案をするというルールで、大学で身に付けるべき基本的な報告手法の実践がこの授業の狙いです。今回の各チームの提案内容は以下の通りでした。
1.服装自由で自分らしさをオープンに聴く面接
2.長期インターンシップを組み合わせた採用
3.学校推薦制度と面接官に質問する面接(逆面接)手法
4.RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)広報による離職率低減
5. 学生による合同プレゼンテーション会(逆求人フェスティバル)
6.部署別(職種別)採用
7.課題解決型プレゼンテーション面接
調査期間が2週間と短かったのと、まだ就職活動について殆ど知らない2~3年生たちなので、提案内容は拙いものが多かったです。自分たちの「要求」や「願い」を伝えることと「提案」することとの違いがわかっておらず、WIN-WINになっていないものが過半数でした。
しかし授業後のリアクションペーパーを見てみると、このプレゼンテーションを聴講していた他の学生達には、そこがよく見えていたようです。学生の主張を客観的に聴講し、企業の方から率直なフィードバックを貰うことによって、多くの学生が「提案」というもののあり方と、就職・採用活動という難解な社会問題に気付いておりました。
採用担当者の方にとっても、学生の気持ちをよく知る機会にもなったようです。ネット社会・セキュリティ社会になり、また採用担当者自身が年齢を重ねるに従い、学生の気持ちや現状が見えにくくなってきていますので、こうした授業が良い情報源になると思います。中にはキラッと光る提案もあり、ちょっと検討してみようか、というヒントも得られたようです。
さて、この授業での本当の狙いは、もう一つあります。それは、学生が企業の採用活動を研究すればするほど、就職活動に役立つということです。自分自身の課題を、客観的に見る、社会の中での位置づけを知る学生とそうでない学生では自然と発言が変わります。
私が10年前から行っている人事労務管理のゼミ生との共同研究ではこうした採用活動の研究を半年かけてじっくり行っておりますので、このゼミ生達はおそらく企業の採用担当者や下手な大学研究者に負けない知見を持っています。結果、ほぼ希望通りの進路に進んでいます。
大学は就職予備校ではありません。しかし、このように取り組む学生と企業が増えてくるならば、大学の学びを育みながら社会との自然な接点が作れると思います。