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第237号:なぜ成績表は採用参考で重視されないか

大学は夏休みに入りましたが、教員は前期末レポート・試験採点の佳境です。私もオリンピック中継を横目に答案の山と格闘しています。しかし、こうして一所懸命に行った授業の成績採点(成績表)は、企業の採用選考において必ずしも重視されておりません。この悩ましい事実について考えてみましょう。

 

最近大学の成績が重視されるようになったとの論がありますが、これは進学率が上がり多様化した大学生を選抜する最初のスクリーニング(初期選考)が必要になってきたことであって、企業採用担当者が成績表をちゃんとみるようになった(採用選考の必須基準にする)とは言い難いと思います。というのは、以下の理由から採用担当者にとって成績表はそのまま信じるわけにいかないのです。

 

・本人の成績かどうかわからない

適性検査(初期選考・非面接選考)での最大の課題は本人認証です。Webテストでは、複数学生が同時に回答する、本人以外の(有名大学の)学生による代理受験等、CIAやゴルゴ13に負けない対策をとる学生もおります。故に多くの企業は適性検査をテストセンターで行っております。

また、授業に一切出席せず、真面目な同級生や後輩からノートのコピーをとって受験する、レポート作成を友人に依頼するというのは、私の学生時代(前世紀)からあることです。

 

・教員の評価基準がマチマチ

仮に全て本人がレポートを書き、テストを受験したとしても、その課題の難易度、成績評価の基準の厳しさ(甘辛)は教員によってマチマチです。なので、私自身も採用担当者時代には、応募者の大学の中で代返のできない科目、テスト評価の厳しい先生の授業を把握して、成績表の中でもその科目だけを見るようにしておりました。

 

・大学での学びの本質が理解されていない

教員で民間企業での勤務経験がある方は稀少です。商学部や経営学部の教員なら研究活動の中で理解していけますが、文学部などでは企業で社会人が働くシーンを見たことも無い教員も多いでしょう。そのため「私の授業は社会で役に立つものではありません」と語る教員さえおられます。

 

こうした背景があるので、現状の成績表はそのまま採用選考基準にするわけにはいきません。(逆に言うと、そうした点も見抜けるのが上級の採用担当者です。)

更に、私は教員になって7年になりますが、私自身が教員側として成績評価をする際に、非常に悩んだことがあります。それは成績評価(結果)のもつ教育効果です。学生は、成績の結果によって学問への関心や意欲が変わります。特にキャリア教育は本人の人格に触れることが多く、かつ確固たる正解がある分野ではありません。そのためレポートを読んで、その内容自体は低レベルであっても、書き方に意欲や熱意を感じた場合には、その点を評価に加える場合があります。しかし、これは学生を知らない採用担当者にとっては困ったことでしょう。

海外の大学を模範に秋入学を導入するならば、海外で標準となっている成績表(GPA)評価を採用選考基準(応募要件)にする点も見習わなければと思います。

 

第236号:期末レポートの採点基準(常識編)

期末試験のシーズンになりました。私も前期授業が終了し、これから文字通り山のようなレポートとテスト答案の採点を行いますが、その採点基準は、企業におけるESの選考基準と同じです。私が学生に伝えている採点基準(常識編)は以下の通りです。正直、ここまで教えなきゃいけないのかと悩みます。企業に提出するESほどの緊張感が無いせいでしょうか。どうお感じですか?

 

1.量があること。

用意された解答(回答)スペースは、暗にこれだけ書きなさいという期待です。レポートは、相手の期待に応えるように書くものであり、書くことがトレーニングです。

 

2.見やすいこと。

読む前に判別不能な文字が増えてきました。これはビジネスマナーと同じで相手に対する配慮不足です。薄い鉛筆ではなく、黒のボールペンを使い、文字の大きさは設問文と同程度かやや大きめで。

 

3.漢字を使うこと。

最近のレポートは、ひらがなが多く大学生としての知性を感じません。たまに絵文字まであります。それはそれで面白いで減点はしませんが、内容が無ければ加点できません。

 

4.自分の意見(学んだこと)があること。

ただ授業の内容を書き写すだけでは、講義を聞いていたことはわかっても何を学んだかわからず加点できません。高校の授業とは、もっとも異なる点で、解答ではなく回答を求めます。

 

5.事実+意見であること。

ただ「参考になった」「役だった」だけではわかりません。何がどう良かったのか、どう参考になったのかを書きましょう。たまに授業とは全く関係のないことを書く人が居りますが、それが授業とどのように関係しているかがわからないと加点できません。

 

6.前向きであること

ゲスト講演者やビデオ教材では、自分との相違点を見つけ、それにどのように近づくかを考えるのが学習ポイントです。できない理由ではなく、できるようになるにはどうすれば良いかを書きましょう。

 

7.品格があること

乱暴・下品・不遜な表現は論外です。減点対象になります。

 

上述の通り、これらはESの評価基準とも同じです。ここまで伝えても、ただひと言「ありがとうございました。」とだけ書かれた回答用紙を提出してくる学生には、それなりの評価しか与えられません。個人のキャリアには点数は付けられませんが、学ぼうとする姿勢(書き方)は採点できますから。

ちなみに、この採点基準をある企業人事部の方に見せたら、「うちの社員に見せたいので下さい。」と持って帰られました。社会人も大丈夫なんでしょうか?

第235号:就業力育成ビデオの効果

春にお伝えしていた法政大学にて制作した就業力育成のための教材ビデオが完成し、6月から授業で使い始めました。受講生の反応は想定内外のものがありますが、非常に有効なキャリア教育のツールになりそうです。そして、これは授業だけではなく、就職課の指導ツールとして、そして企業の新人研修としても相当に応用が利くということが確信できました。

 

受講した学生の声をそのままお届けしましょう。

<1年生>

「今年入学したばかりで、仕事に対してあまり意識はしたことがなかったのですが、ビデオを見て、社会の厳しさを学べて良かったです。グループ・ディスカッションをして4年生の方々が仕切って話を進めている姿を見て、自分にはまだできていないことなので、私もあと3年したらこのようになれるのか、ハキハキと意見が言えるようになるのか不安です。就活までに今日学んだこと(コミュニケーション力)を身につけられたらいいなと思います。」

この教材は複数の教員で活用しておりますが、進行に当たっては受講者間でグループ・ディスカッションを取り入れております。学生をランダムに組ませることによって、知見を広げると同時に、コミュニケーション力の向上も狙っています。見知らぬ学生同士の話し合いは緊張するものですが、授業後の感想では新しい友人が出来て良かったという副産物までありました。

 

<3年生>

「アルバイトと社員の違い、応用力がある人が正社員としての能力を見込まれること。過去のものをインプットして加筆し、アウトプットすること。下調べの重要性、誠意の見せ方。今までの授業とは異なって、行動的な授業だったので今後のためになりました。」

多くの学生が面接の自己PRでアルバイト経験を語りますが、そこで得られる資質が企業の期待とはかなり異なるものであることが多いです。この教材ビデオでの重要な狙いは、そうした社会のニーズを気づかせることと、その力は大学の授業からでも身に付けられるということです。こうしたアクティブな教育手法をとることによって、学生の就業力は飛躍的に向上いたします。

 

更に、この教材ビデオは授業だけではなく、企業の新人研修や内定者研修でも活用が可能です。お陰様で多くの大学教職員からご関心を戴きました。そして企業の採用担当者の方からも、今後の教材ビデオについて産学連携の可能性を戴きました。これからはビデオだけではなく、こうした運営ノウハウも開発も進めて行く予定です。

早速、法政大学での活用状況をお伝えするワークショップを開催することに致しました。ご関心の有る方は、どうぞお越し戴き、意見交換をさせて戴ければと思います。

▼8月8日(水)法政大学市ヶ谷キャンパス(ご参加者には教材ビデオを差し上げます。)

ワークショップ「ビデオ教材を用いた就業力育成を考える」

http://3step.hosei.ac.jp/event/details/2012/06/20/id1781

第234号:リクルートスーツ再考

私はリクルートスーツには反対ではありません。むしろ賛成派だったのですが、最近は少し考え直しています。それは個性が表現できないとかグローバルスタンダードではないとかのよくあるベンチャー企業や新興産業の社員が語るような視点では無く、それを着る学生の精神が幼くなってしまったからです。スーツ着用がだんだん辛くなってきたこの季節に再考してみたいです。

 

元々、私はスーツが好きではありません。初職で就いた企業は、確かにスーツで仕事をするのが当たり前でしたが、個性重視の大らかな社風でしたし、外資系企業に転職してポロシャツにジーンズで通勤できるようになったのは天国でした。転職した10数年前、サンフランシスコでの新入社員研修に「ビジネス・カジュアル」で来いと言われて戸惑いました。当時NYに駐在していた友人にから「ジャケット着てれば何でも良いんだよ。」と聞きつけ、カジュアルなブレザーにカラーシャツ(ネクタイはしませんでした)で研修会場に向かったところ、ほぼ全員がジーンズで、中にはTシャツに短パンのナイスガイもおりました。(勿論、翌日から私もジーンズです。)

 

翻って、私がリクルートスーツを着るのに賛成するのは、次の二つの理由からです。

1.公私の気分転換をする機能があるから。最近の公私混同企業(かくいう私もそうですが)ではこうした点は逆に嫌悪されますが、女性の化粧のように、その準備をすることによって自由人である個人から社会人である仕事人になるのです。なので、私は授業では必ずネクタイをしています。

 

2.やはり中身で勝負と思うから。だったら服装は何でも良いという視点もありますが、どんな服装であれ、外見を先入観に入れたくはありません。これは特に採用担当者にとって必要なセンスではないかと思います。勿論、どんな服装をするかは個人の指向性把握の材料にはなりますが。

 

しかし、最近の長期化で1年中リクルートスーツを着させるのは残酷だと思うようになりました。大人への変身アイテムが、就職産業の奴隷服・囚人服に見えてきたのです。特にこれからのシーズン、リクルートスーツでビジネス街を学生に歩かせるのは酷なことでしょうし、学生によっては「私は今も内定がありません」という貼り紙を貼られている気分になるでしょう。

 

スーツ企業は「スーツデビュー」等とはやし立て2着3着と買わせますが、スーツを着用するということは、公式の場に出ること、個人の都合ではなく、社会の常識にあわせていくことだったはずです。つまり大人・社会人への変身アイテムのはずが、七五三の衣装になってしまいました。そんなものならジーンズの方がましです。

 

私がこのショートコラムを書き始めたのは、2002年6月からです。ちょうど10年となりました。しかしその間、就職活動というのは良い方向に向かってきたのでしょうか?就職活動がイベント化され、産業化されてきた現状を見直す必要があると思うのです。リクルートスーツが本来の意義を取り戻して欲しいと思います。

第233号:結果の出ない他責学生

続々と届く学生からの内定報告を聴いていると、やはり模擬面接や相談で見てきた感触通りの結果だと思わされます。採用選考活動は基準が曖昧でわかりにくいと言われますが、多くの結果を見ていると、企業は変われども、それは至極妥当な視点で判断されているのだなと感じます。就職活動は確かに運に左右されるものですが、決して運だけでは決まりません。前回も書きましたように、この時期の未内定者にとっては、今がまさに変革できるかの瀬戸際です。

 

内定者を月ごとに時系列で追ってみてみると、こんな感じに見えます。4月にすっと決まる学生たちは大学生としての活動内容が充実しており対人スキルも高く、いわゆる「優等児型」です。

5月になって決まる学生たちは4月内定組と変わらない資質や経験をもっていながら、対人スキルやものの見方にちょっとした「クセ」があり、最終選考でつまずくタイプ、つまり「個性児型」です。

6月に入ったいま、やっと決まってくる学生は、4月から挫折を繰り返しながらも諦めず、失敗から学んで自分を変化させていった者たちです。「努力児型」と言って良いでしょう。

 

そしてまだ結果が出る気配が見えず、これからしばらく苦労しそうな学生の共通点を一つだけあげると「他責的で自己成長(変革)していない」ということに尽きると思います。これを私は「怠惰児」と呼んでいます。努力をしていないというわけではありません。努力の方向が自分に向かずに環境のせいにしており、自責の念を持って自己改革を行わないという意味です。

 

これは前回触れた「ミドルレベル学生」と同じで、中途半端に能力があるのでプライドが高く、傷つくことが弱い現代の若者に特有の傾向です。地力はある方なので、ちょっとした機会で目覚めれば、すぐに結果が出やすいタイプでもあります。そのキッカケは、親や教員や就職課の相談員のような知己ではなく、初対面の社会人、つまり自分のことをまったく知らない大人に客観的に課題を指摘されたときが多いようです。問題はそうした社会人がなかなか身の回りにいない、ということですね。

 

実は、上記の「優等児」「個性児」「努力児」「怠惰児」の4タイプは、私が企業で社員の能力開発を担当していたときに作った類型です。発想力と忍耐力の2軸が基準で、両方とも持ち合わせているのが「優良児」、独創的だが飽きっぽいのが「個性児」、閃きは無いがコツコツ続けられるのが「努力児」、そして両方とも見られないのが「怠惰児」というわけです。新人研修をしながらアセスメントを行い、評価分析をしておりました。私は採用業務を担当する以前に能力開発を担当していたのですが、その時に見つけたこのノウハウは、そのまま採用選考基準としても使っておりました。

 

そして、大学教育の現場にどっぷりと浸るようになり、採用側から学生支援・教育側になったいま、改めてこの4タイプが見えてきました。それはこうした就職活動の結果だけでなく、担当している授業でも同様です。他責的な怠惰児がどんどん増えてきていることに危機感を感じます。就業力や社会人基礎力という「能力」は、これまで相当に大学でも研究されてきました。しかし、その根底にある努力する方向性の研究については、これからだと思います。大衆化してきた大学の難題に直面し、学生以上に悩むことになりそうです。私たち教員も自己改革しなければならないかもしれませんね。

第232号:ミドルレベル学生の成長機会

「ニュースなど見ていると、就職活動シーズンはもう終わりですね。就職浪人した方が良いかと親と相談し始めました。」今週、たまたま大学で耳にした学生と就職相談員の会話です。ああ、この学生も相談員も苦労しそうだな・・・。この時期はなかなか結果の出ない普通の学生にとって絶好の成長機会であり、ここでどう変われるかどうかが就活学生の人生を決めることになると思うのですが、意識や行動の切り替えはなかなか難しいようです。

 

この学生はハキハキとした対応をしており、一見、コミュニケーション力があるように見えますが、相手の気持ち・反応を見落とすタイプだと感じられました。自分自身の思い込みが強く、なかなか自分の失敗を認めずに環境のせいにすることが多いので、採用面接では注意して評価する必要のある応募者です。皆さんのご経験でも変に主張力のある学生より、素直に変わっていける学生の方が指導しやすいのではないでしょうか?

 

授業をしていても、最近はこうした学生が増えてきている気がします。その特長は以下の通りです。

1.情報に敏感であるが思い込みが激しい(耳年増満足型)

2.情報を鵜呑みにして根拠を調べない(コピー&ペースト型)

3.自己主張が強く発言力がある(一方向プレゼンテーション型)

4.自分の都合の良い環境を求めて移動する(ゲームリセット型)

5.なかなか行動変革(成長)ができない(発達障害型)

 

外部労働市場(転職市場)が発達した米国ではこうしたタイプは珍しくありませんし、寧ろ標準的なタイプかもしれません。いわゆるジョブホッパーではないかと中途採用面接でも慎重に判断します。こうした若者が日本にも増えてきたということは、グローバル化の影響なのかもしれません。最近、ビジネスの世界ではゲーム理論が流行っていますが、ゲームのように、ちょっとうまくいかなければリセットしてやりなおす感覚なのでしょうか。その価値観が変わらない限り、結果も変わらないでしょうし、安易な留年や転職は不利になるだけです。しかも今の就活シーズンの終わりは、トップレベル学生の終わりであって、ミドルレベル学生の本番はいよいよこれからです。

 

今週の授業で「採用担当者は敬語の間違いはあまり気にしないが、学生言葉は気にする。」と話しました。慣れない敬語の失敗は新しいチャレンジとして初々しく見えますが、学生言葉は場面毎で言動を切り替える能力不足と判断されがちだからです。それこそ仕事での即戦力性ともいえるでしょう。

 

最近、私が改めて認識を新たにしているのは、学生と教員とは襟を正した大人の会話ができなければならない、ということです。学生にフレンドリーに接するのは良いことですが、授業がすべてそのムードになってしまって友達みたいな先生だらけになってしまうのは困りものです。締めるべきところは締めて、大人の世界を感じさせなければならない、と思っています。

 

 

第231号:一般職に求められるものの変化

GWが明け、大手企業では総合職の内定出しが進み、辞退者対策(追加募集の有無)の検討に入ると同時に一般職の採用選考がヤマ場になってきました。一般職の採用選考基準について着目してみると、はレベルだけではなく求められる内容や環境が変化してきています。しかし、一般職を志望する学生の意識はあまり変わっていない気が致します。ここ数年のミスマッチの背景を整理して、採用担当者が求めている意識の変化について考えてみましょう。

 

一般職の就職活動の環境変化には主に以下の点があげられます。どれもこの15年ほどで大きく変わってきた点であり、景気が良くなっても元に戻らない構造変化です。

・仕事が減少・無くなった

⇒IT,アウトソーシング等による企業の業務改革(単純作業の削減)

・仕事が変化した

⇒準総合職の創設、コスト部門からプロフィット部門にして成果(売上)を求める

・代わりが増えた

⇒派遣社員導入による正社員の削減(人件費の固定費から変動費化)

・競合する強敵が増加

⇒総合職指向の非社会学系有名大学女子学生の参入(総合職を一般職の待遇で採用)

 

その一方、一般職を志望する学生はこうした環境の変化に気付かずにいるようです。この10年間、模擬面接をしておりますが、相変わらず「サポート役」として支援したいという意識に変化は感じません。(そもそも大手企業のセミナーもそうした点をしっかり伝えているようには感じません。努力しなくても学生が集まるからです。ハッキリ言って採用担当者としての努力不足を感じます。)

 

さて、こうした環境の中で一般職を志望する学生にはどんな意識を持って貰うことが必要でしょうか。私は売上向上意識と、経費削減意識の2点をもつことだと思います。

・総合職の仕事を知ろうとする努力をする

私自身、営業職時代に一般職の社員にサポートして戴いておりましたが、デキル一般職は、総合職である私の仕事を知ろうとし、自分のやっている仕事の意味や前後の流れを理解しようとしていました。つまり、言われたことを言われたとおりにやっているだけではなく、自分で理解/判断しているのです。その結果、トラブルを未然に防いでくれたり、トラブルがおきても対処が速いです。

・コストを下げる努力をする

これは自分の仕事を理解してきたら、いかに速く・無駄なくできるかを考えることです。これも言われたことを言われたとおりにやっているだけではなく、常にこの仕事は本当に必要なのか?もっと楽はできないのか?と考えることです。自分の仕事がなくなってしまうのではないか?などと心配する必要はありません。そうした人には必ずもっと高度な仕事が依頼されるようになりますし、逆にそうでない社員は、上述の派遣社員やアウトソーシングにいずれ置き換えられてしまいます。

翻って、皆さんの大学の一般職は、こうした意識をお持ちでしょうか?サポートしたいなら、サポートする人の仕事を知る努力をすべきです。是非、学生に問うてみて下さい。一般職のやり甲斐に改めて気付く学生も多いと思います。

第230号:就業力育成ビデオ

ちょうど1年前のこのコラムで、法政大学における文科省「就業力GP」の特任教員に就いたことをお伝えしました。この1年間、授業を通じたキャリア教育のプログラム開発をはじめ、様々な試行錯誤を行って参りましたが、その成果の一つとして「就業力育成ビデオ」を作りました。これは今後、ご希望のある大学には無償で提供して参ります。

 

このビデオを制作した目的は、主に以下の三点です。

  • 学生に仕事の現場をできるだけリアルに伝えること
  • 教員に大学の学びは社会で通用することを再認識して戴くこと
  • 企業に産学連携のキャリア教育に参画して戴くこと

まず、殆どの学生は企業で働いた経験を持っていません。良いインターンシップができれば理想的ですが、実施内容、期間、受け入れ企業等で、すべての学生にその機会提供をするのが困難なことは、言うまでもありません。アルバイト経験も、その多くが非正規社員労働で、採用選考で求めるものとは異なります。それを知らない学生の自己PRは、どんなに一所懸命に話しても採用担当者には響きません。

 

次に、「私の授業は就職には役に立ちません」と口にする大学教員がおられます。確かに大学の研究の中には仕事に直結するものではなく、物事の本質を究める知的活動という面があります。しかしそれだけに、応用範囲は広いものです。例えば人事制度や経営戦略の立案には、人間の心理が深く関わっています。就職活動や企業での仕事経験の無い教員には、そうしたことは未知の分野なのでしょう。

 

最後に、多くの企業は自社の仕事理解機会の提供をせずに求める人材要件のハードルを高くしています。仕事柄、数多くの企業セミナーを見聞きしますが、正直、表面的なものであったり、自社の宣伝で終わっているものが多く、仕事の大変さ(それは裏返せばやり甲斐です)を伝えきれておりません。充実した企業セミナーは、インターンシップと同じく、特定の少人数だけに実施されていたりします。

 

このような背景のなかで大学が学生にすべきことは、やはり授業時間を通じて仕事の現場と大学での学びの関係を伝える工夫をすることでしょう。このビデオでは有志の企業に協力を戴き、仕事の実例と現場をリアルに描写してみました。このビデオを見ながら、学生や教員に大学教育の実用性を感じて貰いたいと思っています。昨年度は、2本のビデオ(旅行代理店遍、産業機械遍)を制作し、今週から下記サイトでダイジェスト版の公開を始めました。一般の配布は来月末頃からの予定です。このビデオ教材はシリーズ化し、今後もリリースしていく予定です。

 

このビデオは文部科学省の就業力育成支援事業予算で作成したものですが、周知の通り、突然の通達で今年度から廃止となってしまいました。しかし、若者の就業力育成は、もはや大学だけの問題ではなく、広く社会の問題、更にはグローバル競争をリードすべき日本国の喫緊の課題です。そうした志に共感して戴ける大学・企業を募り、産学連携教育の一事業として継続していきたいと思います。

 

▼就業力育成教材ビデオ-1「ハタラクチカラ(社会人1年目の現場)」

http://3step.hosei.ac.jp/news/details/2012/04/18/id1400

第229号:内定の順回転と未内定の逆回転

企業の内定出しも始まり、学生の顔色にも大きく違いが出てきました。メディアは「勝ち組・負け組」の二極化でとらえることが好きですが、大企業の採用数は、全大学生数よりずっと少ないので、結果が二極化することは当たり前のことです。しかし、同じ大学の同じ学部でも、結果に差が出てくることがありますが、それは何故なのでしょうか?そのメカニズムがわかれば、未内定学生にとって現状打開のヒントになると思います。

 

勝ち組学生で典型的なのは、他者にない秀でた経験をもった学生です。例えば、日中英語の三カ国語に堪能でスポーツ万能で品行方正というような、天が二物も三物も与えたような人物です。しかし、ここではそうした超エリート人材ではなく、もう少し一般的な学生を考えます。というのは、採用担当者にとって評価が難しいのは、最優秀な人材ではなく、平均以上、優秀未満という「中の上」の人物の評価の誰に内定を出すか、という点であり、そうした僅差の応募者の中でも、内定を取れる人と取れない人の二極化が起きているからです。

 

その「中の上」評価の人物の結果が分かれる要因は、早く1つの内定を獲るかどうかです。勝ち組である内定獲得者には「内定の順回転(好循環)」が発生します。内定を獲たことで、面接のポイントがわかり、自分の話し方に自信がもて、態度にも堂々とした自信と落ち着きが現れ、その結果、次の内定が出やすくなるからです。その内定は、倍率の低い中小企業でも良いのです。

 

採用担当者の方でも、他社の応募状況を必ず聴きますが、その際に内定を持っている学生だと見る目が変わります。特に経験の浅い採用担当者の場合は顕著です。逆に、慣れた採用担当者が、ある大手企業の内定を持っている学生を面接すると、その企業の今年の採用基準がわかります(景気によって多少

採用基準はぶれるものです)。他社の選考基準をそのまま使っても問題無いわけですから、思い切って「他社の最終選考で不合格だった人を求めます」という募集広告を出せば、かなり楽な採用選考ができます。現実に、かつて「(内定をもっているけど)秘かに就職活動をしている人を求む」という募集広告を出した企業がありました。

 

逆に、未内定の学生は「未内定の逆回転(悪循環)」に陥ることが多いです。採用選考は、人物のほんの一面を見るだけなのに、全人格を否定されてしまったように感じて、ドンドン自信を失っていき、どうして良いのか自分でもわからないままに惰性で面接を受け続けている状態です。

 

一度こうした逆回転に入ると、なかなか自分では抜け出せなくなりますので、就職課やキャリアカウンセラー等のアドバイスが必要だと思います。また、悪循環に陥る学生には最初から有名企業ばかり受ける傾向も見られます。今年のように採用選考期間が集中してしまうと、応募時期が限られる焦りもあるのでしょう。事前準備ができないままに、多くの企業に「とりあえず」エントリーだけ行った結果、そのハードスケジュールをこなしているうちにドンドン逆回転の速度が上がり、休むことも怖くなります。

そんな場合、あえて志望分野方向性を変えたり、思い切って休んでみることも大事だと思います。自分を冷静に見ることができたなら、きっと自分の回転方向が見えてきて、逆回転を止め、順回転に転換するヒントも見えてくると思います。

第228号:楽観は性格ではなく意志と能力

いよいよ採用選考解禁が近づき、新聞雑誌上に毎日のように就職活動や雇用のテーマが取り上げられるようになりました。採用担当者も、エントリーシートの募集を締め切って書類選考をはじめたり、リクルーターを使ったりで、応募者集団の絞り込みに入りつつあります。街を行くリクルートスーツの学生さんの顔も、益々緊張感が高まってきたようです。しかし、こんな時だからこそ、学生の皆さんには得意の笑顔で頑張って欲しいと思います。それこそが採用担当者の求める「一緒に働きたくなる人」だからです。

 

採用担当者や社会人OBが、学生さんから「企業の求める人材は?」と尋ねられたとき、一番多い答えがこの「いっしょに働きたくなる人」ですね。これはかなり曖昧な表現で、採用担当者にとっては便利な言い方ですが、学生にとってはわかるようなわからない回答でしょう。それは人によってそれぞれ異なりますから。

 

しかし、これを「仕事仲間」という言葉に解すると、その包含する共通のニュアンスがわかりやすくなるのではないでしょうか?特に、新人としての仕事仲間とは、未熟でも大きく成長する可能性があり、将来、自分をサポートしてくれる、または会社を背負っていく期待の寄せられる人物です。具体的には下記のような就活行動をとる学生さんです。

 

・礼儀と元気がある・・・挨拶と笑顔がすぐに出る、初対面ですぐ名乗る

・成長意欲がある・・・セミナーや面接でノートをとりながら聴く

・学習能力がある・・・聴いた事に対して受け身ではなく積極的に質問をする

・対人能力がある・・・面接の質問を確認(会話)しながら進められる

・度胸と責任感がある・・面接で(正確ではなくとも)明確な態度で回答できる

・環境を楽しめる・・・面倒な作業もコツコツできる(行動することによって不安を消せる)

 

こう書いてみれば、なんだ当たり前のことじゃないか、と思われることでしょう。しかし、採用選考時期が近づいてくるほど、学生さんはこうした基本的なことを忘れてしまいがちで、選考会場に到着した時には緊張感でガチガチになっていたりします。当たり前のことが、当たり前にできなくなるのが、本番での状態なのですから。

もうひとつ採用担当者が求める人材をあげるとすると、可愛がりたくなる人です。それはどんな場面でも楽観的であろうとする意志と能力を持っていることです。人間は放っておくと(特に最近の若者は)悲観的になりがちで、失敗を極度に恐れています。しかし、失敗は未知の世界に挑戦した人だけが得られる成果であり、自分の限界に挑戦した人だけができる体験です。そして諦めずに続ける限り、それは失敗という結果ではなく、成功へのプロセスです。授業でも「大学生の失敗は財産だ、どんどんやれ!」というと学生は安心して逆に失敗をしなくなるものです。

 

日々の報道を見ていれば、学生を取り巻く環境は厳しいものに見えるでしょう。しかし、昨年の震災のことを思えば、環境ははるかに良いはずです。そうした楽観力で頑張れる人が、採用担当者の求める「いっしょに働きたくなる人」なのです。