第55号:夏秋採用の光と陰

今年の10月1日も例年通り、都心の電車はリクルート・スーツの若者集団で溢れていました。こぼれている笑顔を見ていると、すぐに内定式の帰りだとわかります。企業も学生も、ようやく今シーズンの採用・就職活動に一区切りというところですね。さて、そんな明るい光景の陰で、残念な話題もありました。企業による内定取消・学生の内定辞退のことです。

最近は採用シーズンの長期化で、内定を出してから入社するまで約1年間あります。これは変化の激しい今の経済環境の中では非常に大きな経営リスクだと以前にも述べました。今年の夏秋採用は、例年になく件数も多く、採用数も多い企業が目立ちました。春採用で十分に採れなかったのか、やっと人員計画が見えてきて採用数が増えたのか、事情はそれぞれでしょう。

そんな中で、とある有名企業から内定を取り消された学生が居りました。理由は、10月1日の内定式に参加して誓約書を提出したのに、他の企業にも誓約書を出していたから。要するに内定を複数貰っていて、まだ決めかねていた学生です。早くどちらかに決めなくてはと思いながらも、夏秋採用で内定連絡を貰ってすぐに内定式になり、迷った末に2社に誓約書を出してしまったのです。

この学生のとった行動は誉められたものではないでしょう。しかし、昨今の就職シーズンの早期化を見ていると、一概に責める気にもなれません。今の就職活動(特に夏秋採用は)は、事前に十分な企業研究ができないうちに選考に入り、内定してから企業研究をして意志決定をする、というのが普通になってきているのではないかと思います。10月1日に内定者を確定したい採用担当者の気持ちも分かりますが、そういった事情を配慮してあげるのもまた仕事ではないかと思います。このようなシーンを見る度に、日本の就職活動の不合理さを感じます。経団連の倫理憲章も、本来の目的は早期化防止ではなく、拘束の防止ではなかったかと思います。

採用担当者側に居る者としても、あまりに不合理な仲間の行動を見ると恥ずかしくなることがあります。内定辞退した学生の不満を、何の落ち度の無い大学就職部にクレームをつけにきたり、強引に呼び出して謝罪をさせたり。企業が自由応募を原則としているならば、学生の不始末を大学に言うのはおかしな事だと思います。文句を言いたいなら、それは親にでも言うべきことではないでしょうか。

採用担当者として内定辞退を受けるのは辛いことですが、夏秋採用で良い学生を採るということは、何処かの企業の内定を辞退させている可能性が高いはずです。学生にも辛い判断を強いていることでしょう。しかし、そんな事情は業界トップの採用担当者の方にはわからないことなのかもしれませんね。

 

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