第180号:模擬面接からみる学生の面接力レベル

中小企業の採用選考面接が増えてきたせいか、模擬面接の依頼が増えてきました。就職課のご依頼で行うものと、私の授業の受講者向けに行うものとがありますが、来訪する学生の模擬面接を見ていると面接力には何段階かのレベルがあります。大きく3段階に分けてみてみましょう。

 

1.未体験レベル

「とりあえず」模擬面接を体験してみたいという学生です。入室から面接まで一連の流れを知りたい、面接者がどんな質問をするのか知りたいというレベルです。面接における基本的な知識や体験をしたいという学生ですが、まだ模擬面接が可能な段階ではありません。

2.一方的発表(プレゼンテーション)レベル

体験談や自己PRを整理してある程度の発表ができるようになった学生です。面接者から投げられる質問を予め想定しておき、用意してきた話題を話せるようになってきます。しかし、面接者の質問に合わせて柔軟に対応できる段階ではないので、全ての質問に回答を用意しておこうとします。「(面接では)どう言えばよいですか?」と『正解』を求める傾向にありますが、やっと模擬面接を始められるレベルです。

3.双方向会話・質疑応答レベル

志望分野が絞られてきて志望動機が深まり、面接者の質問に対して自分の回答を柔軟に対応させて『会話』ができる学生です。自己PRにも個性が出てきて、本番と同じ模擬面接で評価が可能なレベルです。

 

実際の面接ではさすがにレベル1の学生はあまり見かけませんが、レベル2の学生はかなり多いです。この段階の学生には少し突っ込んでみたり、角度を変えた質問をしたりするとすぐに戸惑ってしまうので、採用担当者としての判定は楽です。

こうした学生の面接力レベルは基本的な対人スキルの発達段階と同じですから、大学でのゼミやサークル活動、アルバイトでも習得することは可能です。問題はレベル3までに至るには相当の時間がかかるということで、勿論、個人差はありますが、私がこれまで模擬面接で見てきた経験では、特別な指導をしない限り、レベル1の学生がレベル3まで至るには数ヶ月かかります。

 

模擬面接を企画される就職課の皆様にお伝えしたいことは、こうした学生の対人スキルの発達段階を見極めた上で設定された方が良いということです。私は採用担当者の経験のあるキャリアカウンセラー仲間とチームを組んで大学へ模擬面接にお伺いすることがありますが、数年前と比べてやはり学生の対人スキルが低下していると感じます。以前なら少なくともレベル2の学生が中心で、なんとか模擬面接が成立したのですが、最近ではレベル1の学生が増えてプロの採用担当者を模擬面接に駆り出してお伺いしても本番レベルの面接に至らないことが増えました。レベル1とレベル2(の初期段階)学生に対しては、個別の模擬面接ではなくセミナー形式の公開模擬面接やワークショップで基礎知識の習得をいくつか踏ませた方が効果的だと思います。

 

ちなみに、エントリーシートと同じで、採用担当者は模擬面接で学生の『評価』はできますが、『指導』までできるとは限りません。誰でも料理の判定はできますが、作り方まで指導するのは別問題ですからね。

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