第187号:放送大学の講義にて

先日(6月19/20日)初めて放送大学の講義を行いました。「大学教育と学生支援」という科目で、3名の教育社会学の権威の先生方とのオムニバス講座です。受講生の中には大学教職員の方も居られましたが、この講義を行ってみて改めて今の大学の課題を実感することができました。

 

ご存知の通り、放送大学はTV・ラジオによる一方向の遠隔授業ですが、私が今回担当した科目は面接授業という通常の大学と同じ対面型(スクーリング形式)のものです。その場に学生が居て講話の反応が見えないというのはなかなかやりにくいものですが、何とか私の担当である学生のキャリア支援の講義を終えてきました。

 

今回の放送大学の講義で最も苦労したことは、なんといっても受講生が多様で、講義の焦点が絞れない点です。若い方からご年配の方まで世代の幅は勿論、仕事に役立てたいという方、子供が大学生だからと言う方、一般教養として興味がある方等々、関心の幅は一般の大学とは比較にならない広さです。

冒頭に述べた通り、中には大学教職員の方も若干居られたのですが、そちらの方々のレベルに合わせて話をすると一般の方々はついてこられなくなってしまいます。(本当はそうした方に向けて専門的な話や討論をすることが望ましいのですが、その代わりに講義後に個別の質疑応答を行いました。)

 

この経験から私が感じたのは、これこそが本当に「大学全入時代」になった時の大学だということです。ここでいう大学全入とは、学力試験無しに誰でも入学して講義が受けられるという意味ですが、そのため学習目標レベルの設定が難しくなります。(もっとも、これは大学教員歴が短い私の力量の問題もあります。)そして、もし放送大学に就職課があったならその職員の苦労は想像を絶しますね。

 

この2年間の経済不況による大学生の就職難を見ていると、同じ大学内でも学生個人の内定状況にはかなり個人差が出てきているようです。そして、その原因は学生の多様化、もっとはっきり言えば、大学数急増と寛大な入試による大学全入時代の到来が原因だと思います。そうした学生を、卒業までに教育して如何に変容させるのかが大きな課題なのですが、何処の大学もまだ明確な答えは見つかっていないと思います。

 

ところで、放送大学の講義で逆にとても新鮮な出来事もありました。それは学生の皆さんが教室の前方から座っていて教師と学生の間に空間が無いことです。いまや何処の大学でも当たり前になった「馬蹄形着席スタイル(教師の前がガラ空きで教室後方と左右に学生が着席する)」ではありません。勿論、居眠りする学生もおりません。さすがは自らの意志と学費で学びに来ている社会人で、こうした向学心の高さは感動ものでした。これがあれば学力試験など無くても卒業までには十分な知識と学力がつけられると教師にもやる気を起こさせてくれます。今の大学生に欠けているもの、それも実感させられた放送大学の講義でした。

 

▼参考URL:放送大学 面接授業「大学教育と学生支援」

https://www.campus.ouj.ac.jp/ouj/modules/visit_tiny8/content/221n13B-dt.html#2276445

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