第188号:学生に求められるリーダーシップとチームワーク

企業の求める人材像が明確ではない、企業は採用選考基準を明らかにすべきだ、ということは各方面からよく言われることです。企業が無数にあることや、同じ企業であっても時期や経営状況や採用担当者によって選考基準が変動することなどがその原因でしょうが、最近の企業の採用選考手法を良く見てみると、おおまかな企業の求める人材像というのは浮かび上がってきます。

 

例えば、ここ数年の採用選考手法でもっとも顕著な傾向はグループ・ワークの導入でしょう。これは数年前から流行になってきましたが、リーマンショックを境に企業の位置づけが変わってきています。景気の良かった以前は、業界・企業理解を進めるためのシミュレーション・ゲーム的なものが多く、学生の就職活動支援や広報活動的なものが主流でした。しかしその後は、大きく変わり、評価・選考的な色合いがドンドン濃くなってきました。

特に不況による応募者の急増により、グループ・ディスカッションも、以前は6人の1グループにつき選考者が2名で時間も50分間程度で行ったのに対し、最近では5グループ(30人)を2名の選考者で30分間で行うという例も出てきています。これは明らかに採用効率の向上を狙ったものですね。

こうしたグループ・ワークになってくると選考もラフにならざるをえませんが、グループ・ワークでの選考基準である、リーダーシップ(自主性)とチームワーク(組織内行動特性)は比較的判断しやすいです。面接と違って、応募者を相対的に評価できますし、選考者は観察に集中できます。グループ・ワークで最初に不合格にするのは、頓珍漢な発言をする学生よりも、無反応・受け身の応募者です。

 

このリーダーシップとチームワークですが、今の学生のコミュニケーション力を見ていると、ますます低下しているように感じます。この二つの資質は、授業においてもハッキリ見られるもので、誰でも経験すれば確実に向上するものですが、逆に未経験の学生が就職ガイダンス等の解説だけで上達するようなものではありません。授業、ゼミ活動、サークル活動、アルバイト等、リーダーシップとチームワークを体験できる場ならば何処でも良いのですが、実体験が必須です。しかしながら、今の学生はそうした体験機会が減少し、「緩い絆」の小規模な交友関係が増えている様です。果たして、そうしたものを評価してくれる企業はあるでしょうか?

つまり、いまの採用選考手法でシビアに求められてきたのは、自己分析などの就職活動の成果ではなく、大学生としての充実したキャンパスライフを過ごしたかどうかです。これはコンピテンシー面接で行動事実(成果)が問われるのも同じです。採用選考は改めて学生の本質を問うようになってきたのですね。

 

さて、私の属する法政大学大学院で、こうした企業や社会の変化の中で、どんなリーダーシップやチームワークが求められるのか、人事部はどう支援するべきなのか、どんな学生生活が評価されるのかを考えるシンポジウムを開催致します。ご関心の有る方はどうぞお運び下さい。意見交換いたしましょう!

 

▼参考URL:7月17日(土)法政大学大学院 政策創造研究科 無料シンポジウム

『変革の時代におけるリーダーシップとキャリア開発

~社会人・企業人事部・大学生の課題と挑戦~』

http://chiikizukuri.gr.jp/blog/2010/07/post-43.html

 

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