第217号:ネスレ日本の「シーズンレス採用」

10月初旬、都心では内定式に向かうリクルートスーツの学生集団を多く見かけました。キャスターバッグを引っ張りながらにこやかに歓談しているので就職活動を終えた4年生達とすぐにわかります。一方で例年とは異なり、緊張した顔つきのリクルートスーツの3年生はあまり見あたりません。企業の採用活動自粛の効果が現れているのでしょう。しかし12月になれば、一気に企業も3年生も動きだすことでしょう。今は嵐の前の静けさというところです。

そんな中、この9月からネスレ日本が新たに始めた採用活動は注目に値すると思います。就職時期が早いとか遅いとか侃々諤々の議論をしている日本企業とは対照的な「シーズンレス採用」とでもいうべき興味深い試みです。この採用方針をご覧になった方からは「やっぱり青田買い(早期化)だろう」と伺ったこともありますが、早期化とシーズンレスは全く異なります。

 

ネスレ日本の新しい採用活動は「ネスレパスコース」というもので、新聞報道もされたのでご存知の方も多いと思いますが、就職活動の時期と採用選考の形式を学生が自由に選べるという点が特長です。(詳しくは下記の参考URLをご参照下さい。)

現在の日本の新卒採用は、同時期に集中して膨大に行われるので、企業にも学生にも負担が大きく、しかも同手法(エントリーシート、適性検査、面接等)で行われますので、評価出来る応募者の資質も実はかなり偏ったものになっている可能性があります。また、こうした採用選考手法は相当に学生や業者に研究されていますので、対策マニュアルが完備され、結果的にこれが学生を画一化してしまっている危惧すらあります。採用活動の大学受験化ですね。

 

さてそれはさておき、私が特に興味深いと思ったのは更に2点にあります。まずはこの採用選考で求められているものは、結局、有意義な大学生活とアカデミックスキルだということです。与えられた課題(チャレンジ経験、異文化経験等)は、どれもただ何となくアルバイトやサークル活動をしていただけでは通るものではないと感じます。つまり大学生活において、どれだけ自分の世界を広げたか、どれだけ大きな経験をしたか、そしてそれをしっかりと表現できるのか、ということが問われているようです。

 

次に、この企画が日本法人社長(CEO)の個人的な想いから発せられている点です。企業の採用活動のサイトで社長が求める人材を語っているのは珍しくありませんが、社長がここまで採用選考の手法や想いを現しているものはあまり見かけません。実は、私も当初はこの採用方針は海外本社からの指示に従って、日本法人がグローバルスタンダードに合わせているものだと思いました。しかし、直接同社の方に話を伺う機会があり、日本の採用活動が一斉に行われていること、面接という手法だけで人物がわかるのか?という社長のシンプルな疑問から日本法人で考え出された企画だと伺いました。

 

この新しい採用活動は、かなり手間暇のかかるものだと思います。しかし、良い採用活動は手間暇をかけなくてはいけないものです。それは単純で膨大な予算をかけた横並び型を無思考に行うというものではありません。この新方式が、どのように学生に受けとめられるか注視していきたいと思います。

 

▼参考URL:ネスレ日本新卒採用「ネスレパスコース」

http://www.nestle.co.jp/Recruit/newgraduates/Pages/newgraduates.aspx

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