第255号:「グッドラック」と「空飛ぶ広報室」

最近、テレビ番組で就職活動を扱うものが増えてきた気が致します。バラエティ番組のネタに採用担当者が出演するようにもなりましたし、たまに企業の採用広告(CM)も目にすることさえあります。これまでTVというメディアの費用は高額すぎて、採用広報の予算では高値の花でしたので、TV業界は本当に不況でスポンサーがとれないんだなあとも思わされます。そんな背景の中、最近のTVドラマは、だんだんとリアルなものになり、学生の就職活動の参考になるものが増えてきた気がします。

 

学生の就職活動にTVドラマは大きな影響を与えます。2003年にヒットしたANAを舞台にした『Good Luck!!』は視聴率が平均的に30%を越え、航空業界の就職希望者が急増してニュースにまでなりました。このドラマをご覧になった方も居られると思いますが、主人公の設定について著名な人事コンサルタントがキャリアカウンセラー向けの講演で次のような注文をつけていました。

 

「このドラマは面白いが、やはりドラマに過ぎません。大怪我をして再起不能を宣言された主人公のパイロットが奇跡的な回復を見せてカムバックするわけですが、これはキャリアとしては非現実的です。本来ならば、大怪我をした主人公はパイロットを諦め、パーサーとしてのセカンドキャリアに生き甲斐を見出していく・・・、という方が現実のキャリアモデルになるのです。」

 

当時、ちょうどキャリアカウンセラーの資格を取ったばかりの私も、やはりドラマはドラマでキャリア教育や就職指導には使えないなあ、と観客席で思っておりました。しかし、この4月から始まった防衛省とTV局を舞台にした『空とぶ広報室』(奇しくも同放送局の放映)では、このコンサルタントの話を聞いていたかのようなストーリーになっていて驚きました。

このドラマの主人公は、航空自衛隊の戦闘機パイロットとして嘱望されていましたが、不慮の交通事故でパイロットを罷免され、広報室に配置転換になりました。最初は落ちこんでおりましたが、やがて新しい広報の仕事にやり甲斐を見出して前向きに取り組み始めまていくのです。

 

歌やドラマは社会背景を映す鏡ですので、2003年のITバブルの余韻の頃は、誰しも大きな夢を描いていたのかもしれません。『世界に一つだけの花』がヒットしたのもこの頃で、小さくても自分だけの価値観を大事にしていて良かったのでしょう。しかし、それから10年が経ち、書籍『置かれた場所で咲きなさい』がベストセラーになり、こうした現実的なドラマが出てきました。夢のような失われた20年が終わろうとしているのかもしれません。

やっと倫理憲章も見直され、ロート製薬のように、非現実的なネット母集団形成の「とりあえず」採用を止めて、現実的に学生と向きあおう、という企業も出てきました。

 

ということで、この4月からの夢のような就職活動で結果が出なかった学生達にも、これからが現実の就職活動だと思って頑張って欲しいと思います。採用担当者も同じです。有望な学生達に辞退され、現実的な採用活動を継続する企業もあるわけです。現実を見つめるとは、夢を捨てることではありません。現実の中に新たな夢を咲かせるのです。

 

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