第274号:エンジャパン社の学生就職情報サイト終了

2月24日付けで報じられた、エン・ジャパン社の学生就職情報サイトのサービス終了は、新卒採用関連の業界人には驚きを与えながらも「さもありなん」と受けとめられています。業界が大きな構造変動の時期を迎えつつありますから。その直接の原因は、倫理憲章の見直しによる企業の採用活動期間の縮小だと思いますが、もう少し業界の背景を少し見てみましょう。

 

エンジャパン社といわれて私に思い浮かぶのは、社会人1~2年目の元気な営業担当者です。生命保険の業界のセールスレディーのように、足繁く売り込みに来られていました。大学就職課にも精力的に訪問し、就活学生のサイトへの登録を熱心に勧めていたことでしょう。同社は、新卒採用業界では後発でしたが他社を猛追し、マイナビ、リクナビに次ぐポジションを占めるようになりました。その同社の撤退理由は、以下のように述べられています。

 

「近年の新卒採用・就職活動は、SNS利用の拡大、就職情報サイトに依存しない各種コミュニティを通じた活動など多岐に拡がってまいりました。」(同社下記ウェブサイトから)

 

これは、就職情報サイトによる多数登録の新卒採用・就職活動に、企業も学生も疲弊して、愛想を尽かしたということです。学生は毎年行うわけではありませんが、企業は毎年同じ作業を行っております。そして、サイトの運営企業は登録者数の増強のため、1人の学生に数多くの登録を勧めてきましたので、結果として、企業の応募辞退者数・選考辞退者数・内定辞退者数も増えてきたわけです。

 

他にも、上位先行2社との違いとして、エンジャパン社の就職情報サイトは、就職という単一目的の専門サイトである点、集めた登録者を他の目的のサイトに引っ張っていくビジネスが展開できないという点も指摘できます。リクナビもマイナビも、いまや就職情報サイトだけではなく、旅行や書籍の販売にも案内していくことが可能です。特にエンジャパン社は株式上場企業ですから、不採算事情の継続には株主からの目も光っています。

 

就職情報サービスは変に肥大化してしまいました。本当に必要な苦労や投資なら、誰でも労をいとわずに取り組むと思いますが、あまりにも成果が出ない作業は、継続することはできません。その判断は、ふつうの採用担当者にはなかなかできません。自分で自分の仕事をを縮小することですから。エンジャパン社の判断も、現場ではなく経営者の妥当な判断でしょう。

ドワンゴ社の「入社試験手数料」の件でも、私が一番、感心したのは、会長が「うちの採用担当者はわかってない」と自ら経営判断をして実行したところです。

 

こうした変化は、この1年で相当に起きてくると思われます。そんな中で、本当に世の中に求められる仕事だけが生き残り、生まれてくるのだと思います。

 

▼参考URL:エンジャパン社ニュースリリース(2014.2.14)

http://corp.en-japan.com/IR/pdf/ir_release_20140224_1.pdf

 

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