先日、採用選考についての経団連の「採用選考に関する指針」が改訂・公開されました。今回の改訂では「広報活動開始前に行われる学内セミナーについて」の項目が追加され、「大学が責任をもって主催すること」「参加学生に対し、キャリア教育の一環であり、採用選考活動とは関係ないことを明示していること」などの条件を満たす場合、企業が学内セミナーへ参加することを認めるが加えられています。これは企業採用担当者にとって良い能力開発(または試練)になります。
「後ろ倒し」により、いま多くの採用担当者がどうしたものかと右往左往しております。採用担当者の発想力や行動力が求められるので、私は良いことだと思っています。日頃、「個性のある人材を求む」という採用担当者自身が身をもって体験するわけですから。その中で、リクルーター再編成と今回の「大学キャリア教育」へのアプローチが盛んになってきました。
大学キャリア教育自身が、まだまだ発展途上段階、またはカオス状態であると言っても良いですが、企業との連携が大きなポイントになることは間違いないでしょう。これまでも、企業採用担当者やOBを並べたオムニバス講座のキャリア教育はありました。これは大学も企業も最も楽で効果の上がるものですが、中には企業の採用セミナーをそのまま話すものもあり、それでは芸がありません。
そこで大事なのは、採用担当者が能力開発のスキル・視点をもつことです。企業人事部では、社員の採用活動と能力開発活動は連続していることが多いですが、その順序が「採用⇒開発」から、「開発⇒採用」になるわけです。それは、採用担当者が「求める人材の能力判定」から「求める人材の能力設定と育成」を行うということです。人事で能力開発の経験のある方には腕に見せ所ですが、そうでない採用担当者にとっては試練です。人を批判することは楽ですが、育てることは本当に難しいことですから。
大学が伸ばしている能力と企業が求める能力、曖昧模糊といわれる「求める人材像」も、こうしたキャリア教育が進めば自然と解消されてくることでしょう。日本の新卒一括採用は、批判されることが多いですが、大学と企業が連携して採用・育成してきたことは日本独特の良い点だと思っています。世界のやり方をそのまま持ってきても絶対に成功しませんし、逆に強みや個性を失うことになります。
今回の指針に合わせて大学側(就職問題懇談会)からも方針が出され、外形的なルールが定められましたが、これからは更に内容の進化まで踏み込んで貰いたいものです。ピンチはチャンスと良く言われますが、是非、良い方向に活かしていきたいものです。
▼参考URL:採用選考に関する指針(2014.9.13 経団連)
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/081.html
▼参考URL:大学内キャリア教育の申し合わせ(2014.9.16 就職問題懇談会)