大学の夏休みも終盤となりました。早い大学では来週から授業が始まることでしょう。大学生にとって夏休みといえばアルバイトですが、今はアルバイトの内容も目的も昔とはだいぶ変わりました。その過渡期は、バブル崩壊からIT時代の始まりである90年代です。アナログ時代からデジタル時代への変化と言っても良いと思います。その変遷を考えてみましょう。
バブル崩壊までのアナログ時代(80年代まで)は、学生のアルバイトは社会の中で中心的な労働力ではなく、正社員中心の中での補助的な存在でした。企業での仕事もネットはなく、パソコンも限定的な使い方をされていました。こうしたアナログ時代では、職場の社員のコミュニケーションも会話や電話が中心で、事務のアルバイトに就いた学生は知らぬ間に門前の小僧となり、社会人(正社員)の仕事ぶりを感じ取ることができました。
私は学生時代、お中元やお歳暮の宅配便のアルバイトを行っていたのですが、オフィス街を担当すると大企業の中まで入って配達することもありました、社会人のデスクやオフィスの掲示物などを見て、ビジネスの世界を垣間見ることができました。
しかしデジタル時代になると、こうした大人の世界は学生から隔離されてきます。情報漏洩防止のセキュリティ強化によってオフィスの中には入れなくなり、非正規社員の増大により仕事の内容も正社員とは切り離されてきました。その結果、正社員とアルバイトとの職場もデジタルに切り離され、アルバイトはアルバイトとしての仕事になり、どんなに頑張っても正社員の仕事を理解することは難しくなりました。
学生のアルバイトの目的も変わってきました。アナログ時代は何かの目的(スキーに行く、ギターを買う、旅行に行く、等々)のために行ったアルバイトが、アルバイトを通じてのコミュニケーション力向上、自己理解、友達作り等の自己啓発やコミュニティになってきています。手段が目的になってきたようです。
そしていま、インターンシップがそれに代わろうとしています。夏休みに頑張ったことは何ですか?という質問に「企業のインターンシップに取り組みました!」という学生が急増しそうです。日本で言うインターシップは期間も内容もご本家米国とは相当に違ってきてしまいましたが、アルバイトの敷居を越えて正社員の仕事の中にちょっとでも踏み入ることができるなら、それはそれで良いのかと思います。少子化で企業が求人不足になれば自然と競争が進み、インターンシップの内容は改善されてくるでしょう。現に採用時期の後ろ倒しで何をして良いかわからない企業採用担当者は、いまインターンシップのあり方を考え直しています。
上述の通りデジタル時代には門前の小僧は自然には生まれませんので、成長機会を意図的に作ってあげなければなりません。かつてアルバイトが社会の窓として機能していたように、インターンシップがそれに代わってくれれば良いと思います。職場と隔離された研修ではなく、職場から学び取れるインターンシップであって欲しいと思います。