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第57号:大学内セミナーでの個人情報の取り扱い

ピークを越えつつある学園祭とは反対に、キャンパスでは就職ガイダンスがますます盛んになって参りました。この時期は自己分析や業界説明等、企業の具体的な説明はまだなされませんが、採用担当者にとっては重要な知名度アップの機会です。私もたまに大学内での合同企業説明会のコーディネートを依頼されるのですが、最近は学生の個人情報の取り扱いに気をつかうようになりました。

採用担当者が大学での種々の就職ガイダンスに参加して、関心をもった学生から積極的にアプローチして戴くのはとても嬉しいことです。採用担当者の仕事のやり甲斐を感じる一時で、「お時間のある時に改めて訪ねてきて下さい。」と思わず名刺などを渡してしまいます。しかも、こういった縁で採用内定に結びつく件は、意外と多いのが実感です。(勿論、「これは!」と思った学生でないと名刺など渡しませんが。)

企業にとって早期に応募者の母集団形成をすることが重要なミッションになっている昨今、大学内セミナー等の機会で1人でも多くの学生の個人情報を集めたいというのは採用担当者の本音です。しかし、ここで改めて採用担当者に倫理が求められると思います。私も大学内で複数の企業のセミナーをコーディネートする際には、以下のような視点から参加企業に対して学生の個人情報の収集をご遠慮戴くようにお願いしております。

1.自身の個人情報の取り扱いになれていない学生の保護のため。

2.早期の就職ガイダンスは学生の職業理解が目的であり、企業理解ではない。

3.間接的に採用(就職)活動の早期化を煽ってしまうことを防ぐため。

4.学生が気軽に企業にコンタクトできるようにするため。

最近の多くの大学内セミナーでは、まだこの点が完全に管理されていないように思えます。アンケートと称して企業が学生の個人情報を集めることも珍しくないようですが、しかるべき時(まあ後期の試験が終わる頃でしょうか)が来るまで、そこは就職情報企業に任せてグッとこらえたいところです。

単一民族の日本ではプライバシーに対する問題意識がまだまだ低いようですが、個人情報の取り扱いがますます社会的にも大きな問題になってきております。社会の入り口である就職ガイダンスのところからお互い気をつけていきたいところです。学生にも自分の情報を自分で守る意識を持たせたいものですね。

 

第56号:奇跡の陰にある理工学技術(と就職面接)

中越地震での被災地にご関係の方々の心労、お察し致します。つい先日、長岡科学技術大学へ就職ガイダンスにお伺いしたところでしたので、ニュースで状況を見るたびに心が痛みます。今回、二つの「奇跡」がマスコミ報道されています。その中で理工系学生の就職面接を思い起こさせるシーンがありました。

ご存知のとおり、「奇跡」のひとつは上越新幹線での大きな怪我人が無かったこと、もうひとつは土砂崩れから救出された幼児の件です。新聞報道では、この二つは「奇跡」と言われておりますが、この奇跡の陰には理工学技術が大きく寄与していると思います。

とあるTVニュースでは、この新幹線事故を「安全神話の崩壊」という視点でキャスターがとりあげ、海外での新幹線ビジネスに影響が心配される、と声高に報道しておりました。しかし、そのインタビューを受けた新幹線の技術者がいろいろな具体的材料をあげながら、「私は技術者として今回の出来事が奇跡だったということは言えませんが、これまでの研究開発や技術の結果だと信じています。」と全く動じることなく発言されていました。奢った態度ではなく、事故を冷静にみている態度に、流石のキャスターもその後のトーンが変わりました。まさに理工系と文系の視点の違いを感じさせられたところです。

一方の土砂崩れの事故も、幼児の発見には最新のエレクトロニクス機器(人命探査装置、ファイバースコープ、音響探査機、夜間暗視装置等)が導入され、難しい分析を現場の技術者(レスキュー隊)が困難な条件の下で使いこなして生まれた奇跡だと思います。

自然の活動には人間はちっぽけな存在に過ぎませんし、今回は確かに幸運だった要素もあったことでしょう。しかし、人間の生活を守るために理工学の技術が発揮されたのは素晴らしいことだと思います。そういった普段の努力があって、初めて奇跡は起きるのだと思います。

さて上記の技術者の態度は、理工系学生が企業での就職面接で是非、見習って欲しい態度だと思います。採用担当者が圧迫面接(実際、マスコミで騒ぐほどのものなど無いと思いますが)などやってきても、自分の哲学を持っていれば恐れることはありません。そんな強い「哲学」をもったエンジニアの卵は是非、採用したいものですね。

 

 

第55号:夏秋採用の光と陰

今年の10月1日も例年通り、都心の電車はリクルート・スーツの若者集団で溢れていました。こぼれている笑顔を見ていると、すぐに内定式の帰りだとわかります。企業も学生も、ようやく今シーズンの採用・就職活動に一区切りというところですね。さて、そんな明るい光景の陰で、残念な話題もありました。企業による内定取消・学生の内定辞退のことです。

最近は採用シーズンの長期化で、内定を出してから入社するまで約1年間あります。これは変化の激しい今の経済環境の中では非常に大きな経営リスクだと以前にも述べました。今年の夏秋採用は、例年になく件数も多く、採用数も多い企業が目立ちました。春採用で十分に採れなかったのか、やっと人員計画が見えてきて採用数が増えたのか、事情はそれぞれでしょう。

そんな中で、とある有名企業から内定を取り消された学生が居りました。理由は、10月1日の内定式に参加して誓約書を提出したのに、他の企業にも誓約書を出していたから。要するに内定を複数貰っていて、まだ決めかねていた学生です。早くどちらかに決めなくてはと思いながらも、夏秋採用で内定連絡を貰ってすぐに内定式になり、迷った末に2社に誓約書を出してしまったのです。

この学生のとった行動は誉められたものではないでしょう。しかし、昨今の就職シーズンの早期化を見ていると、一概に責める気にもなれません。今の就職活動(特に夏秋採用は)は、事前に十分な企業研究ができないうちに選考に入り、内定してから企業研究をして意志決定をする、というのが普通になってきているのではないかと思います。10月1日に内定者を確定したい採用担当者の気持ちも分かりますが、そういった事情を配慮してあげるのもまた仕事ではないかと思います。このようなシーンを見る度に、日本の就職活動の不合理さを感じます。経団連の倫理憲章も、本来の目的は早期化防止ではなく、拘束の防止ではなかったかと思います。

採用担当者側に居る者としても、あまりに不合理な仲間の行動を見ると恥ずかしくなることがあります。内定辞退した学生の不満を、何の落ち度の無い大学就職部にクレームをつけにきたり、強引に呼び出して謝罪をさせたり。企業が自由応募を原則としているならば、学生の不始末を大学に言うのはおかしな事だと思います。文句を言いたいなら、それは親にでも言うべきことではないでしょうか。

採用担当者として内定辞退を受けるのは辛いことですが、夏秋採用で良い学生を採るということは、何処かの企業の内定を辞退させている可能性が高いはずです。学生にも辛い判断を強いていることでしょう。しかし、そんな事情は業界トップの採用担当者の方にはわからないことなのかもしれませんね。

 

第54号:夏の就職活動は元気が一番

今年の夏は過去最高の真夏日数を記録しており、就職活動を続ける学生さんには辛いシーズンでしたが、そろそろ夏採用の方も結果が出始めています。私もこの夏は数名の学生の就職活動を支援致しました。春のシーズンでは思わしい結果を得られなかったり、遅れて活動を始めたためであったり、学生の事情はいろいろです。夏の就職活動では元気が一番なのは誰しもよくわかっていることですが、肝心なのはその元気がどうすれば取り戻せるかです。

6月に神戸大学で「就職リターンマッチ」と称して行った企画に参加した学生さんからも、最近、大手企業から希望職種で内定を貰ったとの連絡を戴きました。本人の弁によると、「やはり面接には自信をもって臨むことで、リターンマッチ企画の頃は自信を無くしていたのですが、あれをキッカケにだんだんと自信を取り戻して面接でも緊張しなくなりました。」とのこと。やはりどんな試練があっても、へこたれずに頑張るとそれなりの成果は出るものですね。元気を出して前向きになれば、内定を取れる学生はもっと増えるだろうと思うのです。若者に元気が無いのが、今の就職率低迷の原因かもしれません。

さてその元気や自信はどこから生まれてくるか?それはスポーツに例えると分かりやすいのではないかと思います。スポーツの試合では気合いや精神論だけでは勝てません。地道な練習を積み重ねて初めて結果がついてくるものですね。レースや試合で最後に自分を支えてくれるのは、練習から身についた知識と技術です。それでもプレッシャーは感じますので面接でアガルことは避けられませんが、採用担当者は実力があって上がってしまう人と、そうでない人を見分ける目は持っています。

そんなことを考えながら、今回の学生さんの支援活動ではやや長い時間をかけて志望業界の知識や見方、社会人のキャリア形成についての会話を致しました。話す内容は就職課の方がされているものとそれほど変わらないと思いますが、“見知らぬ大人”と長時間の会話を行い、自分の考えを伝える機会は就職活動中の学生と雖も意外と少ないようです。結局、そこで身についたものは、採用担当者と同じ人種の“見知らぬ大人”と会話する知識と技術で、そこから自信が生まれてくるようでした。特別なプレゼンテーションスキルでもなく、ただ単に“見知らぬ大人”と会話する機会、それが今の若者に決定的に欠けているものではないかと改めて思わされました。もしかすると敬語の乱れもタテ社会の崩壊もここに原因があるのかもしれませんね。

第53号:「こじつけ」と「一夜漬け」

最近、多くの企業の採用選考に取り入れられている選考方式のひとつにグループ・ディスカッションがあります。あるテーマについて決められた時間で応募者が議論を行い、ひとつの結論を出すというのが一般的ですが、応募者の議論を聞いていると、本来大学生の特権(?)とも言える、「こじつけ」と「一夜漬け」のできない学生が増えているのではないかと感じてしまいます。

グループ・ディスカッションのテーマにはいろいろなものが設定されますが、参加者に不公平にならないようなテーマが選ばれていることが多いです。というのもグループ・ディスカッションで評価するものは知識の有無ではなく、コミュニケーション力、問題解決力等、個人の行動特性や知恵に関わる部分なのですから。ところが、グループ・ディスカッションのテーマを見て、自分の未経験の分野であった時、すぐに諦めてしまう学生がおります。例えば「大学生協の新たなサービスを学生の視点で提案してみて下さい。」というテーマが出た時、「私の大学には生協がありませんので、わかりません。」と言ったまま、議論に消極的になってしまうような学生のケースです。確かに大学生協の有る学生と比べたら、知識では不足しておりますが、それがそのまま提案できないことには繋がらないでしょう。

こんな時に学生の方に思い出して欲しいのは、大学の試験でヤマが外れた時のことです。そんな時にもすぐに諦めないで、何とか自分の勉強してきたことを総動員して題意に導くような「こじつけ」にチャレンジしてみて欲しいのです。「こじつける」ということは、Aという概念とBという概念の関係を何らかの形で理由づけるということです。それは自分の志望する会社と自分自身との関係を考えるというのと同じ作業であり、つまりそれは志望動機を考えるということに他なりません。

グループ・ディスカッションにおいても、このような姿勢でどんなテーマであってもチャレンジして欲しいと思います。特にグループ・ディスカッションは一人で行っているのではなく、何人かの仲間と知恵を共有しあって発想をより大きく広げるチャンスがあるはずです。

「こじつけ」も「一夜漬け」も準備不足からくるものなので、使わないにこしたことはありませんが、社会で仕事をして行くとき、完全に準備された環境で進められるということは、よほどルーチン化された単純作業です。多くの仕事は未知の部分を抱えながら進めていくものです。グループ・ディスカッションも同様に、まずはどんな時でもチャレンジする前向きな姿勢を見せて欲しいものですね。

 

第52号:工場実習とインターンシップ

この夏もいろいろな形式のインターンシップが各企業で実施されており、多くの学生が社会勉強をしていることと思います。インターンシップという言葉を聞くと、いつも思い出されるのは、理工系学生に伝統的にあった「工場実習」です。今では経験者も少なくなっているようですが、これはインターンシップという言葉が輸入される前からあった、日本の伝統的な学生の社会勉強でした。決して効率の良い社会勉強ではありませんでしたが、学ぶことは多かったと思います。

理工系学生の工場実習とは、所属する研究室の教授の指示によって特定の製造業の工場へ行き、見習い社員のように生産ラインでモノヅクリの現場を体験することです。期間は1ヶ月程度で、企業での待遇はアルバイトとされていることが多かったです。インターンシップと違って、特にカリキュラムが組まれて指導されるわけではありませんので、なんとなく単純作業のアルバイトで終わってしまったという学生も多かったですが、心ある先生は「何を学ぶかは自分で考えろ。」「何を学べるかは君の問題意識次第だ。」という言葉で送り出してくれました。

工場実習の経験者には、「そうは言われても単純作業で終わっちゃったよ。」「工場の人と仲良くなっただけだったなあ。」という感想も多いのですが、インターンシップでも工場実習でも、忘れてならないのはカリキュラムの充実度ではなく、参加する学生の学ぶ意欲ではないでしょうか。整備されすぎた環境の中では人間の創意工夫する力が衰えます。「必要は発明の母」という言葉通り、問題意識のあるところにアイデアが振ってきます。

しかし一方で、インターンシップという名称で学生をアルバイト要員として招集する困った企業もあります。過日のダイヤモンド・ビッグ&リード社のセミナーでも就職課の方から、そういった企業の対策はどうすべきか?というお問い合せも戴きました。インターンシップの定義を定めるというのは難しいことですが、そういった企業・業界は特定の分野に限られると思いますので、ブラック・リストを作って就職課ネットワークで共有すれば良いのではないでしょうか。学生向け個人商法では既に行われている対策だと思います。(最近は学生向けの就職情報サイトでもこういった情報が提供されています。)

また、ちょっと無情かもしれませんが、そういった失敗も社会勉強だ、致命的にならない程度の失敗は学生のうちにやっておいた方が良い、と指導する発想もありえます。無駄のないこと、完成されたもの、安全なもの、の中だけで学ぶことは社会勉強としては何か不足しているのではないかと感じるのです。夏休み、可愛い子には旅をさせたいものですね。

第51号:「就職課に対する採用担当者の声」

先日、ダイヤモンド・ビッグ&リード社主催の大学就職指導ご担当者向けのセミナーがあり、「大学就職部の役割を探る」というテーマで講演をさせて戴きました。事前にProfessional Recruiters Clubのメンバーに呼びかけ、大学就職課についてのアンケート調査を致しました。セミナーで一部を発表したのですが、講演後に詳細を知りたいというご感想を多く戴きましたので、ここでいくつかご紹介したいと思います。歯に衣着せぬ言葉もありますが、採用担当者の生の声ですので是非ご参考下さい。

  • 大学就職課についての満足・不満足について:

「一部の私立大学の就職課は主体的に外を見ようとし、採用担当者などの意見を真摯に聴き、そこからヒントを得て進取の取り組みをされています。一方では内にこもり、従来踏襲型で内外に対して主体的に動こうという姿勢が見られないところもあります。また、人事異動が極端に頻繁なところもあり、経験やノウハウの伝承が分断されてしまうのが、とても残念です。就職サポートに対する組織側の姿勢の希薄さを感じるとともに、これでは、学生に対しても、企業に対しても満足なサポートができないのもやむなしかなと思えるところもあります。」

「大学によって温度差がある。それは特定の大学様では学生の就職、並びに企業の採用ということに真剣に取り組んで頂き、それが画期的なセミナーなど行動となって表れている。その反面、学校の経営(自分の城)に目が行き過ぎ、学内の人事ローテーションが盛んになり、長期的な取り組みを出来るだけの人材並びに風土が確立されていないと感じる。」

「大学によって異なるが、窓口がオープンでない所がある。(窓口を特定の企業にしかオープンにせず、その他の企業に学内セミナー等の機会を提供してくれない。国公立に多い。)」

「就職課の影響が強すぎて、学生が自分で考えず、就職課のいいなり(就職課がこう言うからこれが正しい)になっている。概して就職課の態度が威圧的。カウンセリングというよりも「私は知っているが君たちは知らないだろう。だから聞いておかなければいけないんだ!」という押しつけ&不安感を持ちやすい。」

  • 大学就職課へ今後期待する役割、取り組んで欲しいテーマについて:

「学生への情報提供の場の形成を期待する。大学進学率が100%になろうとしている少子化の中にあって、今まで以上に大学をキャリアの通過点と捉える兆候がある。そこで、従来通りのアカデミックな学問を学ぶ場としての学校とは別に、より実社会を知りキャリアについて学べる場所の確立を期待している。そこには企業から何らかの協力を注ぎ、文系学生に対しても産学共同で日本の未来を担える人材形成の第一歩としたいと考える。」

「学生、採用担当者、その他関係者の声に真摯に耳を傾けること、そこで感じたことを実際に行動に移すことや学生に対するフィードバックやカウンセリング機能の強化。通常では、学生の関心が動かない良質の業界や企業の認知させるための活動。早期からのキャリアについての啓発機会の頻度向上。就職活動期以外で、企業の採用担当者を学生のモチベーションアップ(学生生活の糧となるべき啓発機会)に利用するなどの仕掛け。などを期待します。」

「学生が自分で考えて、自分で判断できるような就職活動の指導。就職課の押しつけや決めつけ、過保護的な指導は学生の考える力を損なう。」

第50号:採用担当者とキャリアカウンセラー-2

昨年、このタイトルで採用担当者とキャリアカウンセラーの似て非なる点を書きました。その後、私の主催するProfessional Recruiters Clubにおいてもキャリアカウンセラーの資格取得者が徐々に増えてきましたが、何故、採用担当者がキャリアカウンセラーを目指すのでしょうか?

採用担当者がキャリアカウンセラーの資格を取得する目的は多様ですが、以下のものが中心でしょう。

1.面接の応募者を見かねて:

毎日学生と接しているうちに、「もっとこう言えば良い面接になるのに」「もっとこう考えれば良い志望動機になるのに」「こんなことで日本の若者は大丈夫か?」という歯がゆい気持ちから見かねて応募者の支援側にたちたくなります。採用担当者には企業の能力開発者を兼ねている方も多いので、教育・指導的な見地になるのでしょう。

2.自分の仕事の幅を広げたい:

「採用担当者は季節労働者」とよく言われるとおり、年間を通じて同じような業務(母集団形成・採用選考・内定者フォロー)を繰り返すことが多く、そのためマンネリ化を感じて仕事に変化をつけたくなる方が居られます。特に向上心の強い方が、こんなに同じことばかりを繰り返していて良いのだろうか?と思われるようです。

3.自分の経験を活かして新たなキャリアを身に付けたい:

自分の仕事の幅を広げるだけではなく、それを自分自身の新たなキャリアとして仕事ができないか?と考える方も多いです。実際、Professional Recruiters Clubの中には、いつかは大学就職課で働きたいと考えている方も少なくありません。

4.必要性に迫られて:

新卒採用の早期化により学生の内定期間1年間近くに伸びてきており、辞退者防止対策、内定者教育等の新たな業務が発生してきています。それには学生の指向性やキャリア・プランを一緒に考える必要性があります。また即戦力の中途採用面接においては応募者の過去の経験を振り返ることが多く、キャリアカウンセリング型の面接スキルが求められます。

さて、こういった背景の元に採用担当者兼キャリアカウンセラーが増えてきているのですが、意外とその知識と経験を社外で活かす「場」がありません。日々の業務の中で活用する機会もあるのですが、そこには「採用担当者と応募者」という厳然とした関係があり、「クライエントとカウンセラー」とは似て非なるものです。

そこで新たな試みとして、Professional Recruiters Clubの中でチームを作り、相互の勉強会・情報交換会を行い、ご協力戴いている大学での就職ガイダンスのお手伝いを始めてみました。まだ試行錯誤を繰り返しているところですが、新たな学生のキャリア開発と採用担当者自身のキャリア開発とが同時にできればと思っています。活動状況についてはまた折りをみてこちらでご紹介して参ります。

 

第49号:4年生の就職活動リターンマッチ

3年生向けのガイダンスが盛んに行われる毎日ですが、とある就職サークルから4年生の就職活動への支援依頼があり、お手伝いしてきました。就職活動リターンマッチと銘打たれたこの企画は、まだまだ頑張っている就活学生向けのものでしたが、リターンマッチというよりは準備不足で初戦もまだ十分にこなしていない方が多かったです。適切な相談相手や指導者をもっていない学生ほど、就職活動に出遅れたり固定した自分の価値観から抜け出せないようです。

この企画ではまず参加学生の方々の自己分析と面接方法の再考を行い、最後は模擬面接まで行いました。最近はコンピテンシー面接のような実体験を求める面接が多いので、自己分析によるアピールポイントと実体験とが論理的に整合しているかがポイントです。この基本的な点が意外とできておらず、面接者として聞いた時にアピールポイントがはっきりしていない方が多々見受けられました。

今回参加された学生は、大きく3つのタイプに大きく分けられると思います。

1.内定ホルダー:

既に内定を持っておりますが、内定企業に納得できていない、または業界を変えて再検討中の学生です。こういった方は、自分の本当にやりたいことを再考するキャリアカウンセリング的な対応をすると、新たな道が見えたり迷いが無くなってきます。

2.スロー・スターター:

事情はいろいろありますが、本当に4月から就職活動を始める学生って居るんですね。面接という非日常的な空間に戸惑ってしまい、緊張感から実力を発揮できないようです。自己分析の会話ではしっかりしているのですが、模擬面接になると驚くほど話せません。個人差はありますが練習を積んで少し慣れればよくなります。

3.唯我独尊者:

一見、自分の確固たるスタイルをもっているように見えますが、他人からの評価を聞く耳を持っていません。人に評価される恐怖心をもっていたり、面接での自己アピールはどこか自分を脚色しているようで自分にウソをついている感覚に襲われるようです。頭の良い学生に見受けられますが、信頼関係のできた年長の指導者に当たる必要があります。

さてこの時期の採用担当者側の視点ですが、シーズン前と違って多くの企業ではそれぞれで今シーズンの採用選考基準を固めており、内定ラインを設定しています。つまり、この時期の採用担当者は目が肥えてきているのです。ですから「この時期にまだ採用活動をしている企業なんだから・・・」と甘く見て臨むとあっさりと門前払いになります。一方で、この時期に就職活動を行っている学生さんの多くは疲れ気味です。この企画に最後に参加者にお伝えしたのは、「失敗にへこたれず、それを次につなげる積極性です。」ということでした。この時期に一番、必要なのはやはりこれにつきますね。それは元気の無い学生さんの中でこそ光るものですから。

第48号:低学年のキャリア教育について

いよいよ3年生向けの就職ガイダンスがあちらこちらで始まってきている中で、チラホラ見かけるのが1~2年生を対象とした低学年向けのキャリア教育です。若年労働者の就業問題は、今では年金問題を出すまでもなく国家的課題になりつつあり、早期に若者の就労意識を高めていくべきだ、との声も聞きますが、その方法論はまだ模索中というところが多いでしょう。いろいろなアプローチがあると思いますが、その基本中の基本は「モデリング(観察学習)」、やはり自分の理想とするモデルを見つけることからはじまるのではないかと思います。

この時期に開催される低学年向けのキャリア・ガイダンスは、就職課の方が多忙なせいか、就職情報企業や学生サークルにアイデアから実行まで委託しているところが多いようです。いくつかのガイダンスを見学いたしましたが、どうも参加者数はいまひとつのようです。ガイダンスの内容はよくできていて、参加した学生の関心も高いようですが、やはり課題は動員数を如何にあげるかという点で、大学によってはガイダンスから講義に昇格させて強制的に聴講させているところもあります。いましばらくは主催者にとっての模索の時期が続きそうですね。

低学年向けのキャリア・ガイダンスでは、「なりたい自分をみつけよう」とか「やりたいことを見つけよう」というスローガンを良く伺います。初心に返ってこの言葉を考えたとき、私の頭にいつも浮かぶのは、「坂本龍馬」「野口英世」「豊田佐吉」「ファーブル」「シュリーマン」等々の偉人達です。初学生の頃に図書館で読みあさった偉人の伝記は今でも鮮烈な記憶に残り、いつか自分はこんな研究者・発明者になるんだ、というイメージをもったものです。これはまさにキャリア開発でいうところの、「モデリング」です。遠い世代・世界の偉大な人物なので直接に薫陶を受けることはできませんが、大きな夢を描くには十分なモチベーションになりました。

最近の子供達はどんな偉人伝を読むのだろうと、知人に聞いたところ、最近は多くの伝記が廃版になっていると聞き残念でしたが、NHKのプロジェクトXを見て感動する若者が最近多いと聞きます。これもモデリングなのでしょう。

低学年のキャリア・ガイダンスで何をやるべきか?今の雇用情勢を伝えたり、身に付けなければならないスキルを教え、足元をしっかり固めることも必要でしょう。しかし、一番大事なのは若者が高い空を見上げる意志と希望を持たせることではないかと思います。自分よりも高いところにモデルを見つけた若者は、きっと自ら努力もするでしょうし、敬語も自然に使うようになるでしょう。モデリングとはタテの人間関係を知ることに他なりません。低学年のキャリア・ガイダンスの大きなヒントがここにあるような気がします。