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第107号:エントリーシートの選択テーマ

エントリーシートの受付を締め切る企業が増えてきたのでしょう。学生からの添削依頼がヤマとなってきました。数多く読んでいると、学生生活の実態が見えると同時に世の中の動きが透けて見えてきます。統計学的に分析したらとても面白い社会調査になりそうです。

 

エントリーシートの定番質問である「大学生活でもっとも力を入れたこと」について、学生が取り上げているテーマを分類してみました。私が相談を受けている学生さんからの限られた手元資料だけなので、全体的な傾向とはいえませんが。

 

・勉強(研究活動、卒論・修論)について・・・26%

・大学公式活動(各種実行委員会、体育会等)・・・10%

・サークル活動・・・32%

・アルバイト・・・15%

・自己啓発(語学・留学等)・・・15%

*体育会は活動内容ではサークル活動に分類されますが、採用担当者の視点では一般のサークル活動とは異なる視点で評価しますので、大学公式活動に分類しました。

 

サークル活動が選択テーマのトップでした。「学生の本分は勉強である」というのは死語になっていたかと思いましたが、まだ大丈夫なのかもしれません。企業によっては「大学での勉強内容」という別項目の質問を設けている企業もありますので、その場合は「大学生活でもっとも力を入れたこと」は勉強以外のことを選ぶ傾向がもっと高くなります。

 

エントリーシートでも採用面接でも、学生からは「何を答えて良いかわからない」という問い合わせを貰いますが、こう答えなければならないというものはありません。寧ろ、どんなテーマを選ぶかは重要な選考基準です。それによって応募者の個性も見えてきます。

 

また、採用選考は応募者が他者と何が違うかを判断する作業です。ところが、エントリーシートを読んでいると、テーマの選択だけではなく記載内容まで似たようなものがあるので評価に困ることがあります。特にアルバイトについての記述では全く同じものがあったりします。おそらく学生の労働力に依存する産業、「学生労働力産業」とでもいう業界が増えているからでしょうね。学生個人は自分だけの体験と思い込んでいるので悩ましいことです。

 

第106号:写真展とエントリーシート

この週末に銀座のフォトギャラリーへ行きました。とある写真展に知人が出品していたのです。私も写真は好きで、就職でもカメラメーカーを考えていたりしました。企業選択のキッカケなんてそんなものですね。多くの写真を見ながら良い写真が撮れる理由はなんだろう?と改めて考えていました。それは今が盛りのエントリーシートの書き方にも通じるものがありそうです。

 

良い写真が撮れるタイミングは以下の要素から成り立っているでしょう。

・素材、タイミング

・伝えたいメッセージ

・表現方法、撮影技術(構図、トリミング、カメラワーク)

・撮影後の印画紙を焼くテクニック

 

報道・スポーツ写真のコンテストなどでは、特に「素材・タイミング」の要素が大きいです。どんなに腕が良くても、そのシーンにたまたま居合わせた(ベスト・ポジションを取れた)素人が傑作写真をものにしたりします。では良い写真とは結局、偶然・運・不運の産物なのでしょうか?

 

いや、そうではないと思います。何故ならプロの写真家はいつもカメラを持ち歩き、更に偶然が起きそうな場所を意識的に狙っています。日頃の機材のチェックや撮影技術向上にも余念がありません。だからこそ、コンスタントに良い写真が撮れるのです。

 

エントリーシートを毎日添削するようになりましたが、書かれている体験談には良くも悪くも、運・不運を感じさせるものがたくさんあります。「これはラッキーだね。」「これはしょうがないよね。」感慨深く読みながらも、さて、この場面に出会うのに彼女はどんな努力をしたのかな?さて、この場面で彼はどうしたのかな?書かれた体験談の中からできるだけ応募者の努力を読みとるようにしています。

(まあ、こちらがこういった努力しなくても、自然とわかる描き方をされている方は、スッと合格します。あまりに大量であったり、疲れてくるとそこまで努力を発揮できないこともあるのですが・・・。)

 

写真撮影では力強い素材に出会えれば技術など無くても伝わるメッセージを出せますが、エントリーシートでは体験内容(素材・タイミング)も、その表現方法(メッセージ、撮影技術)も頑張って欲しいものですね。

しかし、写真展を見てエントリーシートのことを考えるなんて、この季節の職業病でしょうか?そろそろ花粉症にも気をつけたいですね。

第105号:「どれだけ就職活動をしてきたか?」

大学センター試験もほぼ無事に終わったようですね。天候に交通機関、最近は英語の再生機器と試験のスタッフをされた方々は気苦労が耐えなかったことでしょう。大学は期末試験の準備に入り、学生もレポート準備や授業ノートの調達に走り回る姿が目に付くようになりました。就職活動もこの位、気合いを入れて目の色を変えてくれたら良いのですが、なかなかそうはいきません。それは採用担当者の勝手な希望なのですが。

 

メディアの報道や業者の情報等では、今期の学生の就職活動の出足はノンビリしてきたと言われています。就職環境の急速な改善のせいなのか、「今年は売り手市場」との報道のせいなのか、原因はよくわかりませんが、私の就職ガイダンスの経験でも同感です。

春先はかなりの勢いで学生さんがセミナーに集まってきたものですが、夏から秋にかけて企業の業界セミナーや大学でのガイダンスが増加するのに反比例して学生の集まりが落ちてきておりました。一部の大学の就職課や教員の方々からは、この状況の危機感を訴える声も耳にします。「学生の準備不足で困る。」・・・ etc.

 

確かにその通りではあるのですが、よく状況を考えてみれば超早期化の現状ではそれも仕方のないことであります。セミナーで学生集客が今ひとつの企業の採用担当者も似たような発言をされることがありますが、我ながら勝手な発言だなあと思います。「大学で学んだことをどのように企業で活かしたいですか?」まだ3年生の秋でまさにこれから大学生活の集大成に入ろうという学生には答えも見つからないことでしょう。理系面接などでは研究テーマ(大体が卒論・修論テーマ)を訪ねますが、学部3年、修士1年ではまだ配属もテーマも決まっていませんね。

 

採用選考って、学生が「どんなキャンパスライフを過ごしてきたか?」と総合的に判断するものだと思うのですが、大学も企業も気づかぬうちに「どれだけ就職活動をしてきたか?」で判断していませんかね?気のせいだと良いんですが、「準備不足」って学生を怒る前に気をつけたいものです。

しかし、若者を甘やかさずに伸び伸びと育てるって本当に難しいことですね。

第104号:就職の構造変化が確定した1年の始まり

新年、明けましておめでとうございます。まだ正月明けのせいなのか、就職環境の急速な改善のせいなのか、就職活動中の最近の学生を見ているとノンビリ感が漂っている一方で企業側はドンドン厳しい状況になってきています。今年の就職活動を総括するには早過ぎるかもしれませんが、間違いなく多くの企業が採用活動に失敗することはもう明らかです。

 

といっても、正確には全ての企業が失敗するのではなく、成功する一部の企業と失敗する企業に分かれてくるということです。その成功と失敗の分かれ目は、これまでの採用手法を変革した企業とそうでない企業との違いです。少し前のメルマガで紹介した採用する前に育成する「養殖型採用」のような新しい手法をとらない限り、企業が新卒人材を確保するのは難しくなります。(正月からのTV-CMでは某金融企業が小・中・高校・大学への寄付講座を社会貢献と宣伝しておりますが、あれはどうみても商品説明会です。金融教育の前に行うべきことがありますね。)

 

学生は少子化で間違いなく減っておりますし、学力低下も著しくなっています。先日集計したProfessional Recruiters Clubの意識調査でも、採用担当者の意見の過半数を占めています。学生は減り、求人が急増しているわけですから、上記の通り、今シーズンは採用方法を変えない限り、採用活動に失敗する企業が出てくるということです。しかもこの構造的要因はしばらく変わりません。

 

しかし、大学に寄付講座を作って提供するのは大きなハードルがありますのでこういった手法が取れるのは一部の大企業に限られるでしょう。中小企業については、いわゆる第2新卒の方に重点を置き、退職率が高く採用数も多い業界からの転職規模者を、即戦力ではなくある程度の教育を施してから採用する方向に向かうと思われます。新卒採用の場合は、採用時期(入社時期)が限られますので、とても新卒不足分を翌年まで待つことはできないからです。

 

いずれにしても、求職側にとっては待ちに待った”やり直しのできる時代”を迎えつつあるわけです。フリーターとして正社員採用の機会を失った若者にはこういった機会を積極的に活かして欲しいです。企業にとってはしんどい1年の始まりですが、もうそのコスト増には十分耐えられるだけの内部留保を上げております。従業員の報酬にはまだ十分に還元されておりませんが、せめてこれからの社員への投資は積極的に行って欲しいものです。

第103号:ハードルが若者を強くする

今年の就職戦線は学生有利の売り手市場が本格的に認知され、企業採用担当者の苦戦が続いております。セミナーや応募エントリー等もなかなか集まらないとの声が聞こえてきます。企業からの積極的なアプローチと反対に、学生の動きは昨年と比べると少々スローな気が致します。売り手市場になるとどうしても学生は受け身になり、「用意された環境」を「利用」する立場になります。それは学生にとって必ずしも良いことではないかもしれません。

 

就職環境のこの数年の劇的変化は驚くばかりです。学生の就職年次の違いによる運・不運は、本人の努力や能力を越えるほど激しいものかもしれません。ただ、何度も書いているように、こういった景気・市場の影響を受けるのは、上位・下位(という表現は妥当ではないかと思いますが、他の表現方法を思いつきません)の学生ではなく、中間層のごく「ふつう」の学生だと思います。上位・下位の学生はいずれも周囲の環境にあまり影響されないと言う意味では共通ですが、中間の学生はその逆です。

 

その中間の学生達を如何にその気にさせて企業に惹きつけるかというのが採用広報活動で、前回のメルマガのとおり、今シーズンは多くの企業が一般社員をリクルーターとして動員して大学に送り込んでいます。大手企業の中には数百人のリクルーターを組織化してターゲットとする(という表現も妥当ではないかもしれませんが、ご容赦下さい)大学を選んで送り込んでいます。面白いもので、企業によって動員されるリクルーターの意識は異なり、大手企業ほど「なんでこんな仕事をしなければならないんだ!これは人事の仕事だろ!」というクレームが多かったりします。

 

閑話休題、就職活動の学生はこんな恵まれた(?)環境になると、環境をなんとかしようという努力は少なくなりがちですが、逆に言うとこんな中で自分から環境を切り開いていく学生は目立ってきます。例えば個人情報保護法の影響で、自大学のOBに直接会って話を聞くハードルは高くなってきておりますが、何らかの手段を講じてOBとコンタクトしていく学生は間違いなく対人スキルの高い人でしょう。企業にとっては面接でなかなか測定出来ない行動力やコミュニケーション力の指標になります。

 

さて年も押し詰まって参りました。年が明けて試験が終われば、いよいよ就職活動の本番ですね。大学も企業もますます忙しさの渦に巻き込まれていきますが、就職活動がいつのまにか急成長する「就職産業」になっており、今が異常な就職早期化であることを忘れずにいたいと思うこの頃です。同じ労力をかけるなら、いかに大学との連携した人材育成&評価を考えるか、という点にかけたいものです。どうぞ良い年をお迎え下さい。

 

第102号:採用戦力になっている内定者

就職・採用活動の長期化により、入社までの内定期間も長くなりましたので採用担当者は内定者に対しての辞退防止のフォロー策にも気を遣うこの頃です。この時期になると3年生(修士1年生)向けの来シーズンの採用活動も盛んになって参りますが、最近は内定者を採用活動に引き出す企業も多くなりました。入社前教育として集合研修や教材を渡すくらいならまだ良いですが、「戦力」として扱うならば、せめてアルバイトとして扱って欲しいと思うこの頃です。

 

今は昔、私たちの世代が就職活動を行っていた頃は解禁日が10月1日であり、(4年の)夏休みに内定を持っている友人が居ると羨望のまなざしで見られたものでした。のどかな時代で入社までの内定期間の約6ヶ月、内定した企業の採用担当者に「何か入社前にやっておいた方が良い勉強はありますか?」とこちらから尋ねてみても、「学生のうちに思いっきり遊んでおきなさい。」と言われることが多く、入社前に膨大な課題を与えられるのは金融機関に内定した学生くらいでした。

 

ご存知の通り、入社前に内定者を最大限に戦力にしているのは人材ビジネス(人材派遣・紹介、就職情報等)業界でしょう。学生自身の日常の活動やネットワークがまさに即戦力になる産業ですから。大学内で後輩を集めて先輩体験談を行ったり、就職活動支援サークルを作ったり、ときには企業の人事部を訪問して就職イベントの提案まで持ってきてくれます。人材ビジネスに内定した学生にとって、これらは確かにとても良い「インターンシップ」でしょう。しかし企業サイドから見たとき、彼らは明らかに有望な戦力になっているわけですから、待遇面での考慮も忘れないで欲しいと思います。

 

私も以前、学生サークルから起業した就職情報のベンチャー企業とお付き合いがありました。熱心な内定者が稚拙ながらも学生らしい提案をもってきたので、広告でも出してあげようかと、いざ企画書や名刺をよく見てみると連絡先が個人の携帯電話番号・メールアドレスになっていることに気づきました。学生本人に確認してみると、内定企業のボランティアとして自主的に活動しているとのこと。しかし、たとえ本人が納得していたとしても、企業としては無給で働く学生個人と取引するわけにはいきません。その学生さんに法的なことも説明して、アルバイト社員になって貰ってから改めて出直して戴きました。

 

これは特殊なケースだったかもしれませんが、今は内定者を自社のセミナーに参加させることは多くの企業が始めてきております。これから就職活動を始める学生には先輩体験談はなによりの情報でしょう。しかし、法律やビジネス面で知識の少ない学生には、大人がしっかり配慮してあげなければいけないと思います。逆にこういった面をしっかり学生に教えて配慮し、協力を仰ぐやり方ならば、それは内定者にとっても非常に良い社会人教育になると思うのです。

 

 

第101号:採用担当者はマニュアル通りが嫌い

ICU(国際基督教大学)の大学院生が企業採用担当者の面接における意識調査を行いたいとの依頼があり、Professional Recruiters Clubを中心に約50名の採用担当者にアンケート調査を致しましたのでその結果を少々ご紹介致します。この研究はドイツ・米国・日本の採用面接において各文化による印象管理の相違を明らかにしようということだそうですが、いわゆる採用の面接本に書かれていることが、本当かどうかを調べてみたいとのことでした。

 

▼カジュアルな服装はあんまり気にしないが好印象にはならない。

服装についての印象は「どちらでもない(43.4%)」「悪い(41.5%)」の回答で、「良い(1.9%)でした。カジュアルな服装はデメリットになってもメリットになることは殆ど無いとのことですね。これかファッション業界等で集計すると傾向が変わるかもしれませんが。

 

▼ノックは2回でも3回でも気にしない。

入室時のノックの回数ですが、2回ノックは「良い(30.2%)」「どちらでもない(56.6%)」、1回または3回ノックは「どちらでもない(77.4%)」で、殆ど気にしていないということですね。採用担当者は応募者の入室待ちの時は、選考書類の確認に集中していることが多く、ノックの回数まで気にしていないと思います。マナー研修講師は「2回はトイレのノックですので止めましょう。」と良く言われますが、これはやはり笑い話にとどめて良いと思います。

 

▼給料や手当について質問するのは好まれない

「どちらでもない(49.1%)」「悪い(49.1%)」の回答ですが、これはこの質問自体が良くないというよりは、もっと就職に関する大事なことを聞いて欲しいということだと思います。給料等の実態は企業間・企業内でも差がありすぎて回答にもあまり意味がないでしょうから。外国のように給与が個別契約で一人一人異なる国では逆に印象が悪くなることはないと思われます。

 

▼マニュアルを見るのは良いが、マニュアル通りに回答されるのは嫌い

マニュアルを読んでいることについては「どちらでもない(45.3%)」「悪い(37,7%)」でやや印象が良くないようですが、実際の面接の回答でマニュアル通りの暗記回答では「悪い(43.4%)」「非常に悪い(30.2%)」でした。やはり「生きた会話」をしたいというのは大切なことのようです。

 

正直な所、アンケートでは採用担当者が全く気にしていない設問があったり、設問文言だけでは一概に判断できないこともありますが、大きな傾向として見るには参考になるでしょう。

マニュアル・ブームは情報過多社会の若者の傾向で、考える労力を省くという非常に危ないことです。学生と日々触れ合っていての個人的な感覚ですが、今の若者は「言葉にしないとわからない」「よろしかったですか?と過去形で丁寧表現をする」等、米国化が進んでいるようです。日本人は「空気を読める高等民族(?)」だったのですが、なかなかそうはいかなくなってきたようですね。

 

 

第100号:いざ戦場へ、そして休戦へ

国際情勢は某国の核実験によって一触即発の危険な状態に陥った・・・。現実世界もアクション映画のような昨今ですが、企業採用担当者は一足早く戦場に足を踏み入れております。10月に入り大学での業界研究セミナーが始まり、早くも学生とのコンタクトが始まって参りました。未だに4年生(修士2年生)の採用活動も終わっておりませんが、早くもターゲットは2008年卒業生へ・・・。

以前のメルマガで、就職戦線は下記の通りに展開すると書きました。

・「空中戦」・・・インターネット上での広告・学生登録

・「地上戦(郊外戦)」・・・大学近郊での企業合同説明会(就職情報企業主催)

・「地上戦(市街地戦)」・・・大学内での企業合同説明会(大学内組織主催)

以前はこの順番で行われてきたのですが、国立大学の独法化以降、大学内での就職ガイダンスやキャリア教育が大流行になり、空中戦と地上戦が同時発生しているようです。

今年になってますます顕著になってきた傾向は、情報の洪水化です。企業の採用予算が増えて例年以上に就職広告が増えてきておりますが、反対に学生は減少してきていますから、どうしても飽和状態になります。そのため、企業もターゲットを絞り、効率の良い早期の囲い込みを行おうとしますので、最近は「結果の二極化」から「情報の二極化(大学間情報格差)」が起きているようです。特に中小企業では最初から濃い小集団の形成に努めるようになるでしょう。

この傾向が進むと、企業は更に深いところから大学と関わろうとします。それは就職レベルでのアプローチではなく教育レベルのアプローチです。既にANA、キヤノンが特定の大学と連携して社会のニーズに適した学生の育成に取り組み始めました。この取り組みが成功すると、近い将来にはANA、キヤノンに入社したい学生が、その大学を志望するようになり、おそらく偏差値も上がることでしょう。その結果が、大学は優秀な人材を集めることができ、企業も戦争無しに学生と採用することができます。

採用する前に育成する「養殖型採用」の始まりですが、これこそが休戦協定なのかもしれません。

 

第99号:パーマネント・アドレスの重要性

10月に入り、大手企業と就職情報サイトでの学生登録が本格的に始まりました。通勤電車内の中吊り広告にも登録用のアドレスを記入したURLを見かけます。大学から卒業生の在籍確認や連絡先の確認を戴くのもこの時期ですが、個人情報保護法の影響で思うとおり情報提供ができないのは大学も企業も同じです。こういった状況では大学が独自に卒業生リストを整備する必要がありますが、その第一歩はパーマネント・アドレスの提供でしょう。しかし、なかなかこれに対応していない大学が多いのは何故なのでしょう?

パーマネント・アドレスとは、大学が学生に与える電子メールアドレスを卒業も恒久的に使えるようにすることで、卒業生の囲い込みに熱心な米国の方では常識的に行われておりますが、日本の大学では対応しているところは少ないです。何故、これを行わないのは不思議なのですが、予算や管理工数の問題だとしたら、それは相当な誤解です。メールアドレスの運用に使われるコンピュータの性能や管理手数はどんどん低価格かつ高機能になってきております。インターネット上に多くある、無料のメールアドレスの容量をみればすぐにわかることでしょう。

パーマネント・アドレスがあれば、卒業生との直接のコンタクトもメーリングリスト(同報メール)だけで済み、通信連絡費のコスト・ダウンにもなるでしょう。確実に卒業生から返事があるかどうかは、メールの問題ではなく、学生個人と大学との精神的な交流の深さの問題ではありますが、連絡ルートが有ると無いとでは大きな違いです。

パーマネント・アドレスを更に発展させたものが、先日書きましたWeb2.0のmixiのように、卒業生のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトを作ることになりますが、それについても価格・技術の面で導入しやすくなりました。これを入学時からちゃんと作れば、4年になってからの就職先報告の回収率も上がることでしょう。

卒業生リストの整備は、就職課にとって緊急の課題であると思いますが、まずはパーマネント・アドレスの設定から始めることを強くオススメ致します。個人情報保護法を理由に多くの企業が卒業生リストを出さなくなるのは常態化してくると思いますが、大学の方でこれがちゃんと整備されているとしたら、今までとは逆に企業の方から卒業生を紹介して下さい、と相談がやってくると思いますよ。

(大学で無料人材紹介を初めても良いではないですか。大学の株は間違いなく上がります。)

少子化の影響でこれからは新卒だけではなく転職市場が主流になってくるとしたら、ますます卒業生とのパイプをもつことが重要ですね。

 

 

第98号:名実ともに全入時代

だんだんと秋が本格的になり、採用担当者も来春の採用活動に向けた「仕込み」に入る頃です。そんなとき、ふと飛び込んできたニュースは大学の入試受付変更に関するものでした。「来春の入試の指定校推薦は高専を含む国内すべての全日制高校を指定校にする」。なんのことかすぐには理解できなかったのですが、全国の高校全部を推薦指定校にするとは、結局、推薦を廃止する、または入試を廃止する、ということなのですね。採用担当者が今でも大きな拠り所にしている大学入試偏差値が、音をたてて崩れていくようです。

この時期は今春の採用活動の総括を終え、新たな企画をたてて母集団形成の準備を始めます。どんな学生をターゲットにするべきか、どんな広告をうつべきか、どんな会社案内をつくるべきか、何処の大学を重点的に訪問するのか、どんなメッセージが学生に響くのか・・・、メディアが多様化している今日、限りある採用予算でどのような配分をするかはとても悩ましい問題です。如何に資質の高い学生と効率よく出会うのか?採用担当者の考えるのはただその1点です。

そういった戦略を考えているこの時期に、このニュースの採用担当者へのインパクトは大きいと思います。AO入試が増えたとはいえ、現在でも大学の偏差値が企業採用担当者にとって最も有効な指標であることには変わりません。それを大学の側から放棄したということは、企業のターゲットリストからも外されることは間違いないでしょう。このニュースを聞いた高校教員が「生徒に配る指定校リストには掲載しなかった」と語っているのと同じ心境です。企業にも、知名度をひくためにいち早く来期の採用手法のネタを明かして(新聞等に広報して)学生の応募意欲をそそる手法はあります。広告を数多く出稿している大手企業ならではのやり方です。今回の大学の告知もそういった意図ならば理解もできますが。

先日、懇意にさせて戴いていた大学のキャリアセンターの方が、急な人事異動で入試広報に異動されました。いろいろな企画を一緒に考えて成果を出してきただけに残念なことですが、今の大学にとって応募者を集めることは経営上の緊急課題ですから優秀な人材を最重要のポジションに配置する事情はわかります。そのご担当者は企画力に優れた方でしたので、きっと良い仕事をされると思います。しかし、入試広報ではなく入試”広告”の仕事にならないことを祈るばかりです。その大学とは今後も長いお付き合いを続けたいものですから。