今週のビジネス雑誌(週刊エコノミスト)に大学の教育力についての特集がありました。定期的に扱われる話題ですが、「就職に強い大学」というキャッチコピーを見ると、採用担当者としては我々の実感と合っているか気になってチェックしたくなります。今の大学は学生の意識も学力も多様化しているので、こうした全大学を対象にしたアンケートは総花的になりがちですが、大学の新しい教育手法や取り組みには注意していて、思わず「よし!今度、就職課を訪ねてみるか!」と食指を動かされることもあります。しかし正直なところ、年々、その取り組みが低次元になっていると感じます。
今回の特集では、大学の「教育力格差」が広がっているとの視点から、「初年次教育」の重要性を指摘されています。これは妥当なことだと思うのですが、問題はその内容です。この特集で、初年次教育の目的は以下の9点が挙げられています。
1.学生生活や学習習慣などの自己管理
2.高校までの不足分の補習
3.自大学の理解
4.人として守るべき規範の理解
5.リポートの書き方や文献検索法などのスタディスキル(学習技術)
6.クリティカルシンキング(論理的に考えること)など大学で学ぶ思考方法の獲得
7.大学の中での居場所や友人の獲得
8.高校までの受動的な学習から能動的で自律的な学習態度への転換
9.専門への導入
*週刊エコノミスト8月31日号「娘、息子を通わせたい大学」から引用
このうち、1~4と7の項目を見て、これは本当に大学が教えるべきことなのか?と感じます。これらはどう考えても大学入学前の教育課題ですし、親の躾の問題であり、大学が背負うのは非常な負荷です。(しかも、浮き世離れしているオエライ最高学府の先生にこれらを教えられますか?)初年次教育とかリメディアル教育と称して、それをストレートに社会や親に言えない世の中は変だと思います。
と書きつつ、現実的に今の大学にはこうした教育が必要な学生が居ることは、私自身も身に染みてわかっています。授業では幼児化した大学生を相手に日々悪戦苦闘しています。まさに親の躾代行です。
閑話休題、採用担当者の視点では、こうした項目を重視した初年時教育の充実をアピールされても、やや冷めた目で「ああ、この大学はターゲットから外しておこう」と思うことがあります。というのは、こうした初年次教育の効果がわかりませんし、逆に確実にわかるのはこうした初年次教育が必要な学生が居る大学なんだな、ということです。(親向けには良い広報なのですがね・・・。)
かつての会津大学や慶應SFCが登場したときのような、遠方でも「ちょっと訪問してみよう!」と採用担当者が思わされるような大学教育の登場を期待したいと思います。日本の雇用が日本の大学を諦めて海外移転する前に。