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第97号:Web2.0型採用戦略

企業の採用広告においてインターネットはもう必要不可欠のメディアになってきております。そのためインターネットの技術的な進化による新しいサービスがたくさん出てきておりますが、なかなかこれについていくのは大変です。書店では「Web2.0」関係の書籍がベストセラーになり、TVのニュースでは「SNS」が頻繁に解説されておりますが、みなさんはどこまで理解されているでしょう?これにちゃんと追いついているのは若者の方でしょうね。

つい先日、mixi(ミクシィ)という企業が株式上場しました。既にみなさんもご利用されていると思いますが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)という技術を使った双方向性の高く参加者同士が出会いやすい仕掛けのサイトを運営しています。加入者が既に500万人ということですから、これはは立派な社会(コミュニティ)ですね。

このサイトの特長は紹介制であることで、既に加入している会員の誰かから紹介状を送って貰わないと入れません。そしてこれがWeb2.0の世界で大事な「信頼性」を保証しているのです。ITに詳しくない方のために、ちょっと就職サイトを例に説明してみると、以下のとおりです。

・Web1.0 ⇒ 情報提供者側(企業・広告代理店)から学生への一方的な情報提供

・Web1.5 ⇒ 情報提供者に匿名学生からの反論情報(2ちゃんねる、みんなの就職活動日記)

・Web2.0 ⇒ カリスマ就職学生側からの情報提供&交換(信頼性の高い個人日記:ブログ)

つまりマスコミ側からの一方的な情報提供だったのが、就職活動をしている現役学生の発信する個人情報の方がどんどん台頭してきているということです。それに決定的に欠けていたのが「信頼性」で、Web1.5の時代は情報が多いものの信憑性に欠けるものが殆どでした。ところが、最近は(人物は特定出来ない程度に)個人情報を開示して、リアルに就職活動を公開する学生が出てきました。そのため、10000人の信頼性のない情報よりも、数人の信頼性のある情報(ブログ)に閲覧が集中し、いわゆる「カリスマ就活学生」が登場してきました。就職情報提供企業の方も、最近はそういった学生を集めてブログの集合体のようなホームページを運営するところが出てきています。

さて、こんな時代になると企業の採用戦略は非常に難しくなり、採用担当者に求められるセンスが高度になってきます。これまでは企業の都合で立てられた採用戦略が、これからはWeb2.0型就活を行う学生の動きを見ながら戦略を考えなければなりませんから。それでなくても少子化は始まっているし、いやはや大変な時代になってきたものです。

*参考文献:

「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫:筑摩書房

「Web2.0でビジネスが変わる」神田敏晶:ソフトバンククリエイティブ

 

第96号:面接官出張、どこでもAO入試

ニュースで「面接官出張、どこでもAO入試」という記事に目をひかれました。採用担当者として全国の地方都市をまわり、「出張面接」を行っていたことを思い出します。いよいよ大学の学生確保にも火がついてきたなと感じますが、これからますますこういった施策は増えてくるのでしょうね。

私が在籍していた企業は産業界での知名度は高くても、一般の社会・学生には殆ど知られておりませんでしたから、採用担当者として如何に応募者を増やすかが大きな課題でした。自社で待っていれば応募者が山のようにやってくる有名企業が羨ましかったです。そのため、首都圏から飛び出て多くの地方都市に向かい、企業のセミナー&選考の出張も数多く行いました。地方の出張面接で行うのは一次選考(書類選考、一次面接)までで、それをパスされた方には後日、首都圏の本社で二次面接・最終面接を行います。

「出張面接」は地方にある営業所の会議室を借りて行うのですが、小規模であるために学生との距離も近く、なかなか良い採用活動ができるのですが、たまに採用担当者の中でも出張を面倒くさがる者が居り、面接官を派遣するのに苦労することもありました。採用担当者は常に臨機応変に対応することが求められるのですが、なかなかそれが出来ず、面接室・必要書類当、準備万端整っていないと選考ができないというウルサイ面接官も居ります。(そんな面接官ほど人を見る目が偏っていたりします。)今回のAO入試では教員の方が出向かれるようですが、職員の方は苦労されてないかちょっと心配になりました。

これからは空前の少子化時代で人材の需要と供給が逆転します。本社の机で待っていては採用活動も難しくなることでしょう。高校野球を回って有望な選手を発掘するようなスカウト型採用がこれから増えてくると思います。私は海外の大学まで出張して面接をすることもありましたが、良い学生なら交通費(海外渡航費)も出して日本に呼んで役員に合わせるということも行いました。地方に、海外に、これから採用担当者は視野とフットワークを広く持たなければならないと思います。

ところで、今回の記事を良く読んでみると、これは採用担当者の行っている「出張面接」とはちょっと異なるところがあるようです。入試と銘打っておりますが、面接の指導があったり、「選考」というよりは「広報」の方が比重が高いような気がします。他社のやっていないことをやって注目をひくというのも、重要な採用ブランディング戦略です。如何に新聞の一面に自社の名前を出すか、ということに燃えている大手企業の採用担当者も居りますからね。

 

第95号:生涯学習センターのキャリア・セミナー

8月に入った途端に日本列島は猛暑が続いておりますが、如何お過ごしでしょうか。学生が夏休みに入り、都心では朝の通勤ラッシュがずいぶんと楽になりました。余裕のでてきた電車を見回してふと気づくのは、車内の大学広告の多さです。学生募集が殆どですが一般社会人向けの公開講座もあり、興味を惹かれるテーマには思わずメモを取ってしまいます。

公開講座の開催の多くは、大学の生涯(公開)学習センターに類する組織が企画されていますが、最近はこの部署でのキャリアに関する支援もチラホラと増えてきています。その内容を見ていると、各大学の方針がみえて興味深いです。大きく分けると「教養系」と「資格系」になっていることが多いです。

  • 教養系:

学内の教員が講師として大学の研究成果、大学の授業を一般向けにアレンジしたもの

  • 資格系:

専門学校等の学外の講師を招いて特定の資格講座をアレンジしたもの

それぞれに講者の求めるニーズは異なり、受講者はそれぞれの関心とニーズで参加していますが、これは企業採用担当者のニーズとも似ています。あまり専門性は気にしないで人間性や教養を求める企業もあれば、具体的なスキルを求めて「手に職」を重視する企業もあります。(一般に、企業は新卒に資格は重視しないと言われますが、中堅以下の企業では資格重視のところも結構あります。)

夏の電車の中でまた気づくのは、受験予備校の夏期講習に通う小中学生です。かくいう私もその一人でしたで都心の大学の会場に通っておりました。その予備校の先生の話で今でも強烈に覚えているものがあります。「大学というのは夏休みが2ヶ月もあるんだよ。春休み長いから、大学生というのは1年間の半分しか勉強しないんだ。」この言葉を聴いたとき、「よし絶対、この大学に入るぞ!」と誓ったものでした。

閑話休題、夏休みは日頃の環境を変えて学習する良い機会ですね。夏期一斉休暇で大学事務も閉じるところも多いと思います。是非、職員の方々もこの機会に他大学で学んでみては如何でしょうか?3年生の多くがキャンパスを飛び出してインターンシップに取り組んでいるように、日頃とは違った環境・人脈によって再発見できるものが多いのではないかと思います。

末文になりますが、暑中お見舞い申し上げます。皆様のご自愛をお祈りしております。

*参考セミナー:

上智大学公開講座:「大学教育とキャリア支援 」

日時:8月21日(月)14:00~17:00

場所:上智大学中央図書館 L-921会議室 (9階)

▼詳細は下記まで

http://www.sophia.ac.jp/J/extfiles.nsf/vwFile/moushikomi_06summer.doc/$FILE/moushikomi_06summer.d

 

第94号:授業を通じて教える就職活動

非常勤講師を担当している大学の前期授業が終了しました。学生一人一人のレポートを見ながら成績をつけていくのは大変な作業でしたが、改めてわかったのは授業を通じて就職活動の基本はしっかり教えられるということでした。同時に、多くの学生は自分の可能性を眠らせたままキャンパスライフを過ごしているのだなあと感じました。これはおそらく日本の最大の資源である若者のエネルギーを眠らせているということですね。

私の担当している「キャリア開発論」という講義は、いわゆるキャリア教育にあたるもので、それは以下の3つの分野を中心としています。

1.マインド系(人生哲学、リーダーシップ等)⇒心の成長

2.スキル系(プレゼンテーション、グループ・ディスカッション等)⇒対人スキルの向上

3.ビジネス系(マーケティング、資料作成等)⇒社会状況の理解

特に講義ではマインド系を中心として、自分自身のキャリアモデルを探し、自己成長の方向性を定めることに重点をおいております。そのため、レポートでも重視して指導していたのが、受け売りではなく自分の意見を書くことです。

ところが、学生は最初ピンときておりませんでした。毎回書かせているレポートでも講義で話した内容をそのまま「理解したこと」として書いてくる学生が半分以上で、これでは学生が何を考えているのかわかりませんでした。これが就職活動なら、企業セミナーで聞いたことをそのままエントリーシートや面接に書いているようなもので、あっさり不合格になってしまいます。いわゆる「生徒」であって「学生」になっていないのですね。就職ガイダンスと同様、授業でも「知識ではなく見識を書け」「講義を聴いてから考えるのが学生だ」と毎回、口をすっぱくして伝えていたところ、最初は戸惑っていたものの、レポートの内容にドンドン個性が出てきました。

他にも議論(グループ・ディスカッション)の仕方や効果的なプレゼンテーション、はては感じや敬語の使い方まで教え込みましたが、これらは決して就職テクニックのためだけではなく、学問や仕事をする上での基本的な「技術」です。そもそも採用試験というのは、社会で通用する基本の技術や知識(ビジネス系)をちゃんと身につけているか、それを相手に伝えられるか(スキル系)、そしてそれをどのように活かして企業や社会で活躍して自分の人生を描きたいのか(マインド系)を知るために行うものです。大学に授業を通じて、いくらでも身につけることができるものですね。これは私が担当しているキャリア系の授業に限らず、どんな科目を通じても教えられることだと思うのです。

前期の授業を通じて、更に今後の課題も見えてきましたが、日本は人材の資源大国だと思い知らされました。この貴重な資源を眠らせずに発掘したいものですね。

*参考文献:

「できない大学生たちが、なぜ、就職で引っ張りだこになったか」カワン・スタント:三笠書房

「学生と読む『三四郎』」石原千秋:新潮選書

 

第93号:採用活動としてのインターンシップ

はやいもので巷では2008年卒の学生(学部3年生、修士1年生)向けの就職ガイダンスが始まってきました。例年ならこの時期は自己分析・業界研究等、就職活動の初期段階のセミナーが多いのですが、今年は採用面接のスキルとかエントリーシートの書き方等、かなり具体的な就職テクニックの問い合わせを受けていて驚いています。この背景には夏のインターンシップの存在があるようです。

今年は就職ガイダンスにちょっとした異変を感じています。前回のメルマガで4年生向けの「就職リターンマッチ」について書きましたが、最近は4年生向けのガイダンスに3年生が顔を出しているのです。とある大学では、20名ほど集まった学生の殆どが3年生で面食らいました。参加者に事情を聞いてみると、「来年のために今から聞いておこうと。」という用意周到な方も居られましたが、最も多かった回答は「インターンシップの選考対策のためです。」というもの。

周知のとおり、今は3年生に向けての夏のインターンシップ募集をかけている企業が多いです。これまでインターンシップでシビアな選考をする企業は大手の一部でしたが、最近は多くの企業が事前の軽い選考(エントリーシートによる書類選考や短時間の面接)をするようになってきたようです。それが結果的に3年生の就職テクニック研究に走らせているようです。

インターンシップの捉え方は企業によってマチマチです。長期のものから短期のものまで、給与の出る社員同様のものからアルバイト作業のようなものまで、多種多様になってきていますね。最近の調査では学生は短期のものを多く受講することを好み、長期間に渡って1社に拘束されるものは嫌う傾向があるとのこと。これではインターンシップの本来の意義は達成できなくなるのですが、企業側の方でも「ワン・デイ・インターンシップ」という恐るべき非常識な言葉を定着させてしまったので、いたしかたないですね。

こういった短期のインターンシップで、しかも大人数で共通のプログラム(多くは簡単なグループ・ディスカッション等のワークショップ)をこなすものはキャリア教育としてのインターンシップではなく、採用活動のための母集団形成に他ならないでしょう。このようなセミナーを数多く受け、深く一つの企業・業界を掘り下げない学生さんは、就職活動でも多くを回りすぎて志望動機が浅くなかなか内定が取れない学生とイメージが重なってきます。どんな経験でも無駄にはならないと思いますが、彼らが来年の「リターンマッチ」セミナーに顔を出さないことを祈っています。

 

第92号:内定の取れない理由

この時期には内定の取れない学生の相談が多いですが、採用定員に満たず採りたくても採れない採用担当者の相談も多いです。この世に内定必勝法などあり得ませんし、採用担当者の考え方や方針も異なりますが、内定者に共通してみられる点、不合格者に見られる共通の点はあります。

経済状況が好転し企業はバブル期に負けない新卒採用意欲を示し始めていますが、春は大手企業に応募が集中し、辞退者数が多く追加募集が増えてきています。採用予定は増やしても選考基準は緩めないという方針は変わらず、正規社員と非正規社員の労働力を組み合わせるいわゆる「雇用ポートフォリオ戦略」で乗り切ろうという企業が多く、これからは第二新卒市場もますます本格的になることでしょう。早期退職(転職)の新卒社員がますます増えそうですが、これからはそれは決して悪いことだけはありません。

その結果、育成のための投資(能力開発投資)をされる正社員(新卒・中途採用)とされない非正規社員(派遣、契約)の待遇格差はますます広がり、日本社会では新卒採用されないと将来のキャリア形成がますます難しくなりそうです。

閑話休題、そうは言いつつも採用担当者は良い学生が居れば是非、採用したいという意欲はまだまだあり、これからの夏秋採用にチャンスは多いです。しかしながら、現時点で就職活動を継続している学生(最近就職活動を開始したノンビリ学生は除く)を見ていると、就職活動に対する大小の誤解(採用担当者の心の理解不足)により、結果の出せない学生が多いです。とある大学で「就職活動リターンマッチ」のセミナーのご依頼を受けたのですが、下記の10のチェック・ポイントをお伝えしました。是非、内定の採れない理由を明らかにして勝利をつかんで欲しいと思います。

チェック・ポイント10:

1.自分が通らない理由が推測できているか?

2.自己理解のための自己分析と就職活動のための自己分析を区別できているか?

3.業界志望、企業志望、仕事志望の違いは明らかになっているか?

4.面接者に元気・やる気は伝わっているか?

5.話す技術はちゃんと身につけているか?

6.話す内容の他社・他者との差別化はできているか?

7.話す内容の体系(論理関係)は考えているか?

8.ホンネとタテマエの違いを理解しているか?

9.「どう答えたら内定するか?」と考えていないか?

10.就職活動の最初と比べて人間が大きくなっているか?

*この時期、特に4番は大事です、採用担当者は元気な学生に出会える機会が無く困っています。

 

第91号:中途採用化する新卒採用

「4月から始めたばかりで・・・」「先月、留学から戻ったばかりで・・・。」「40社回っていますが、まだ1次面接が一つも通りません・・・。」「今の内定先で本当に良いのか迷っています・・・。」等々。

これはある大学で開いた就職相談で同じ部屋に集まった学生さんの相談内容です。相談内容がかなり多様化していますが、これは企業採用担当者にとっては今後の採用活動は中途採用化するということなのです。

昨年と比較してこの時期の学生の相談はかなり多様化しています。しかし、よく聞いてみるとそれは相談内容の多様化というより、相談時期の多様化であるようです。就職シーズンが早期化し、いろいろな情報が溢れているものの、あまり気にしないマイペースの学生が増えてきたということでしょうか。今年は売り手市場だから慢心しているというよりは、4月になってからやはり就職しようとという気になったという目覚めの遅い学生が増えているようにみえます。

さて、学生の就職活動のスタート時期が多様化するというのは、企業採用担当者にとっては悩ましいことです。企業の採用活動は効率化(いかに速く安く応募者と出会えるか)との戦いで、上述のようにスタートする学生がまちまちになると、採用活動の始期も終期も定めにくくなり、五月雨式に対応しなければならなくなります。そういう視点では、日本の新卒採用環境(新規学卒採用)は世界でもまれに見る効率の良い市場だったのですが、その環境が変わってきたのでしょう。

このような環境では、現在のような大規模な就職セミナーや広報活動を行って効果の出るのは大手企業に限られ、無名・小規模の企業の新卒採用は中途採用と同様に通年化するでしょう。場合によっては、新卒採用を中止して本当に中途採用だけに切り替える企業も出てくるかもしれません。現状では如何に内定者が出せても辞退者が多く、採用活動自体が水泡に帰することになっていますから。

3年ほど前のメールマガジンで、「早期化・長期化・集中化・多様化・通年化」というテーマで書きましたが、これがいよいよ現実化してきたということですね。採用担当者にとっては辛いことなのですが、そもそも採用担当者が長期化・通年化にもっていったのですから、自業自得ということなんでしょう。

もっとも、高度成長期の人手不足の時期は新卒採用ができるのは大企業に限られていましたし、少子化という大きな流れが時代を元に戻したのかもしれません。かつて人気だったサラリーマン(正社員)の身分の安定性が、いま改めて求められてきたように。

 

第90号:就職マラソンは疲れます

5月の末になり、採用担当者の今年の見通しもついてきました。やはり順調に目標人員を確保できた企業は少なく、今後の追加募集をどうするか悩むところが多いです。(もっとも、現時点でまだ「確保」できたと安心している企業は多くありません。まだ公務員・大学院試験等の伏兵が控えておりますので。)そのため、これから採用活動を続ける企業は多くリターン・マッチのチャンスがあるわけですが、様子を見ていると学生も企業も”就職・採用活動疲れ”が見えるようです。

今シーズン、採用需要増大の影響を大きく受けたのは、業界中堅企業や、知名度が低い産業用途分野の企業でしょう。通常であれば大手で惜しくも不採用になった学生が今年については殆ど落ちてきませんし、学生の意識もホリエモンの影響なのか、ベンチャー指向から大手指向になっているようです。

そのためこれから募集をかける企業の最大の悩みは如何に新たな母集団を作るかなのですが、これからどんな手段を使っても今以上に良い学生が応募してくることは考えにくく、今シーズンの新卒採用を手仕舞いして中途採用に視点を切り替えるところもあります。

翻って今の学生の就職活動を見ていると、昨秋から継続しており流石にもう確定したいと思う学生が多いことでしょう。良い条件がこれから先にあるかもしれないと思いつつも、いつまでも流動的な状態にあるのは辛いことです。しかも、第一希望でない企業から内々定を得たら遠慮(辞退)しつつ走り続けるプレッシャーは相当なものだと思います。

つまり、今は内定ゴールをもう少し先に伸ばしたい企業が居ても、ランナーの学生は「もう勘弁して下さいよ。」と脚を止めようとしている構図になっているようです。(一方で、そろそろ走り出そうかという学生も居ります。)

マラソンは日本人の得意種目ですが、それには強い精神力、体力のペース配分が不可欠です。更に現代では選手個人の努力だけではなく、選手をサポートするチームも求められるようになってきました。

長期化した就職活動がマラソンと同じなら、今の学生を支援するチームは大学の就職課(キャリアセンター)なのでしょう。また、マラソン大会を主催している企業も学生を長く走らせたいなら、途中で給水地を設けたりして大会運営のスポンサーになることが必要でしょう。ゴールを設定して待っているだけでは学生がゴールまでたどり着けないかもしれません。

もっとも疲れ果てている採用担当者と学生を見ていると、この壮大なマラソン大会に意味があるかどうかはまた別の問題です。できることならお互い感動的なゴールシーンを見たいものですが。

 

 

第89号:新卒確保は福利厚生から教育投資へ

新緑の季節です。GWにちょっと田舎までドライブして参りましたが、水田には水がはられて田植えが盛んに行われておりました。今では機械化が進んでおり、大勢の人手を介する風景は見られませんが、何事も一斉に行う日本人の動きを見ていると、改めて日本人の精神的なルーツは稲作における集団活動なのかなあ、と感じました。企業が学生を集めるこれからのポイントもそこにあるように思います。

就職戦線も第二期に入り、採用担当者は内々定者の数確保に躍起になっております。少子化と求人増が同時に発生しておりますので、どこも苦戦するのは仕方のないことですが、メディアでも言われているとおり企業側はバブル期のように選考基準を緩やかにすることは少なく、当時の痛みは忘れていないということでしょう。

企業が学生を惹きつけようとする内容も当時とは変わってきております。今では語り草になっている、豪勢な独身寮、ホテルでの豪華な内々定者懇親会や海外旅行等はなくなり、替わって入社後の研修内容や人事配属に重点が置かれるようになってきました。つまり福利厚生から教育投資への変換です。これは今の学生にとって第一の企業選択ポイントが「自分が速く成長できる」であることを企業が受け入れはじめ、同時に企業側の、できるだけ早く戦力にしたい、できるだけ早く能力を見極めたい、(そして優秀な社員には)できるだけ長く定着して欲しい、という思惑が一致してきたということです。

企業が行う教育投資は新入社員の集団帰属意識も高め、社員の定着率の向上に効果があります。私が居た海外企業(ITコンサルタント)での研修で思い出されるのは、世界中の新入社員を米国本社に一同集めて集合研修を行い、「仲間意識」を醸成していたことです。ITバブル全盛のときに、何故こんな非効率なことを?と研修担当者に尋ねてみたら、「IT全盛企業だからこそ、最初にやらないと仲間意識が生まれないんだよ。日本企業もよくやってるよね。」との返事。一本とられましたが、まさにこれは村中総出の「田植え」ですね。

先日、大学AO入試の「合格」をこの5月末に出すとの報道があり、物議を醸しています。まさに季節感にぴったりの「青田買い」ですが、その是非はともかく、「青田買い」するならしっかりその後の育成まで手間暇をかけて丹精をこめたいものです。バブルを経て紆余曲折して参りましたが、大学も企業も「速く成長したい」という若者の願いにうまく応えて相互発展していきたいものですね。その中に日本文化の強さと魅力が醸成されてくるのでしょう。

 

 

第88号:辞退対応七然

今年も大手人気企業の最終選考結果が出る時期になり、採用担当者にとって胃の痛い季節がやってきました。今シーズンは売り手市場と言われることもあり、大手金融機関や製造業の採用増加数を目にすると、中堅企業の採用担当者はそれだけで目眩がしそうになります。普段は愛想良く会社説明会を開いている採用担当者も、連日学生からの辞退連絡を受けると気持ちが滅入り、段々と人間不信に陥ってきて態度が変わってくることも珍しくありません。

採用担当者の内定辞退連絡に対する態度と採用担当者のタイプをいくつかあげてみましょう。

・態度泰然:辞退をものわかりよく受け入れ、激励までしてくれます。相当な人格者です。

・態度平然:辞退に動じることもなく淡々と受け入れる。無駄なことはしないタイプです。

・態度冷然:辞退者に対し急に冷たくなります。冷静に見えていても意外と根に持つタイプです。

・態度唖然:辞退に言葉を失ってしまう。新人の採用担当者か、人を信じすぎてしまうタイプです。

・態度騒然:辞退の怒りを回りの社員にぶつけて発散します。ストレスを自分の中に貯めないタイプです。

・態度猛然:辞退に燃えて説得して翻意を促します。諦めの悪いタイプです。

・態度憤然:烈火の如く怒り、学生を呼び出して説教します。感情的で一番怖いタイプです。

応募者の内定辞退に対する企業の態度は、基本的には採用担当者個人の考え方(精神状態?)で異なるものですが、全体的にみていると業界によってカラーが見られます。大きく二つに分けると「信用重視業界」と「契約重視業界」です。お察しの通り、前者の代表は金融業界、後者の代表はIT業界です。日本型・米国型と言っても良いかもしれません。日本型企業は基本的に信用重視で社員も新卒中心で転職も少ないですから内定辞退と聞くとかなり厳しく説教されますが、IT業界は元々中途採用の転職組が多く「去る者は追わず」という考え方が強いので内定辞退にも比較的あっさりしています。

最近は内定防止のために入社承諾書・誓約書の提出を求める企業も増えてきているようです。法的拘束力はありませんが、法律を知らない学生には十分な辞退防止の威力があることを採用担当者知っていますので、この書面の意義は契約重視ではなく信用重視のために用いられているということなのでしょう。

日本は急速に信用社会から契約社会に向かっておりますが、内定辞退について学生と採用担当者が悩んでいるということは、まだまだ日本には信用が残っているということかもしれません。辞退連絡に七変化する採用担当者にとってはたまりませんが・・・。