「未分類」カテゴリーアーカイブ

第47号:世代別のキャリア開発アプローチ

企業の採用人事は選考と内定者のフォローに神経を尖らす時期になりましたが、大学では早くも3年生を中心とした来シーズンの就職指導が始まってきました。並行して2世代の学生を支援するのは大変な労力ですが、世代や学生のレベルに応じたアプローチを考えたいものです。

先日、3年生に向けた職業ガイダンスで企業の最新採用動向と自己分析についての講演を行いました。「最近の企業の選考基準を考えると、自己分析には無理にやらなくても良い部分もあるので今からあまり肩に力を入れる必要はありませんよ。むしろ行動の方に比重を置いて下さい。」とお伝えしたら、多くの受講者から「なんだか大変なことをやらなくてはいけないと感じていましたが、少し気が楽になりホッとしました。」という感想を戴きました。

この時期には、たまに就職スタッフを対象とした学生の就職指導についての話を求められることもあります。キャリアの開発支援をする場合、1つの手法だけでは指導者側のペースになりがちですから、できればクライエント(学生)の状況に応じて、コンサルティング、コーチング、カウンセリング(前者ほど指導的要素が強い)等のアプローチを使い分けたいものです。指導側レベルや都合にクライエントを合わせるというのは、スキルやテクニックの指導には良いかもしれませんが、心の発達には向きません。

私見ですが、一般のキャリアの開発支援を行う場合には大きく分けて下記の4つの各世代でアプローチを変える必要があると思っています。キャリアカウンセラーもこの全領域をカバーするのは困難でしょうから、今後は自分の得意分野(専門分野)を明確にする必要があるでしょう。

1.家庭~小中学高校生(10代以前)

2.大学生~新社会人(20代)

3.中堅社会人(30代)

4.中高年社会人(40代以降)

大流行になっている「低学年からのキャリア教育」についても、職業意識を早期に持たせたり考えさせたりする機会をつくることは大事ですが、その手法を高学年と同じにやっていては成功しないと思います。その結果、主催者が考えたほど参加者が集まらなかったり、上記の例のように学生にプレッシャーを与えたり、早期にテクニック論に走らせてしまうことになってしまうかもしれません。

先日、中央職業能力開発協会から若年者に会わせたキャリア開発手法およびキャリア・コンサルタントのスキルについて報告書がでました。またキャリアカウンセリングの資格が増えるのかと思うと勉強で頭が痛くなりますが、これもクライエント(学生)にっとっては望ましいことだと思います。

参考資料:若年者向けキャリア・コンサルティング研究会報告書(中央職業能力開発協会)

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/04/h0428-2b.html#top

第46号:新卒の雇用ミスマッチ

就職活動もいよいよ後半戦になりました。大手企業の採用活動は一段落したようですが、中堅企業についてはこれからが本番になるでしょう。この時期になると、学生にとっては就職活動を続けることは精神的にも辛いとですが、大事な頑張りどころですので応援してあげたいものです。同時に、なかなか自分にあった仕事が見つからないと戸惑う学生には、仕事選びの考え方を改めて伝える機会だと思います。

現在の厳しい就職状況をみていると、メディアではいつも「雇用のミスマッチ」という文字を見つけます。求職者の持っている専門性や指向性が、求人企業のそれとズレているということであり、厚生労働省でもこの対策に必死になっております。では新卒採用に「雇用のミスマッチ」というのはあり得るのでしょうか?私見ですが、職業経験の無い新卒学生はあまり気にしなくても良いのではないかと思っています。

人が職業を選択する場合、やりたいことがあってそれに就く場合と、就いてみて経験した後にそれがやりたいことだったと思う場合とがあると思います。この2つのスタイルは、個人によって異なりますが、同様のことを採用面接で質問しています。「貴方は、今の大学・学部を何故選んだのですか?」という問いがそれにあたりますが、その回答で「××先生について学びたいと思ったのです。」「こういった職業に就きたいと思ったからです。」と卒業後にやりたいことを明確に回答する学生は100人に数人居るかどうかです。同様な質問で、高学年になってから「貴方は今のゼミ・研究室を何故選んだのですか?」という質問をすると、その理由を回答できる学生は数十人に増えてきます。つまり、その組織に入って初めて自分のやりたいことが見えてくる、逆に学んだことをどう社会で活かすか、という発想がうまれるわけです。

実際、企業の就職でも同じで、OB体験談で語る社会人のキャリアの体験談で「最初からこんなキャリア・デザインをしていたのです。」と講演される方もおられますが、楽屋で裏話をすると「いや、綿密に計算していたわけではありません。」と本音を話される方が殆どです。最近のメディアの風潮では、自己分析、やりたいこと、本当の自分、を探させるカウンセラーや就職塾のようなものが多いです。しかし、それは本当に必要なものでしょうか?

「雇用のミスマッチ」の最大の問題は、この言葉を流行らせてしまったところにあるのではないかと感じることがあります。この言葉がメディアで声高にいわれているから、「就職活動が厳しいのは私のせいではない、社会のせいだ。」と考える学生を増やしてしまい、結果的に、やりたいことを探し続ける学生、何となくフリーターになってしまう学生を許容しているように思えます。

今から就職活動に頑張る学生に一番必要なのは、どこかのTVCMではないですが、

「考えるな、Just Do It!」

という言葉ではないかと思います。そうしてぶつかってきた学生に対して、初めてフォローのカウンセリングやコーチングの出番になるのだと思います。

 

 

第45号:グループ採用企業の課題

GWを前に企業の内定出しも進み、採用担当者としては内定者の入社意志の確認に神経を使う時期になりました。学生からの相談内容もこれまでの自己紹介や面接対策から、内定を貰った企業に行くべきか辞めるべきかという相談が増えてきています。最近、ちょっと気になる相談は、グループ採用を行っている企業の内定者からのものです。ネット時代になって応募者の採用選考プロセスがしっかり管理できるようになった反面、新たな課題が出てきたようです。

企業のグループ採用とは、一般に複数の関連会社(子会社)をもつ本社(親会社)がその知名度を活かして関連会社全体の広報活動および採用応募の窓口を行うものです。企業にとっては知名度の低い関連会社の採用広報を支援でき応募者の管理も効率化できますが、応募者にとっては募集内容が関連会社間で待遇が違っていたり、最終的に自分が何処の会社になるか不明確という不安な面もあったり、たまに法律的な問題(雇用条件を明確にせずに内定を出す場合等)になることもありました。

今回の学生さんの相談は、グループ採用企業内の数社に応募していたところ、幸いにもその中の1社に内定したというもの。ところがこの応募者は同グループ内の他の関連会社が第一希望で、並行して採用選考を受けていたのですが、先に内定した企業から入社意志確認の誓約書の提出を求められてしまったのです。勿論法的には、誓約書を出したとしてもその後の採用活動を拘束することはできませんが、グループ内の他企業を受けることは、すぐにわかってしまうのではないか、と心配しておりました。仮に、第一希望の企業に内定したとしても、先に内定した企業を辞退するのにグループ内他企業に入社するのは言いにくいことでしょうね。

本来であればグループ採用を行う企業は、こういったグループ内の併願問題については事前に応募者へ明らかにすべきことなのでしょうが、残念ながらまだ徹底している企業は少ないようです。最近ではグループ企業内に人事アウトソーシングの専門会社を作り、応募者のデータを一括管理するところも多いですから、企業側の方で学生の併願状況を把握することは技術的には容易になったことでしょう。しかしその情報の取扱には細心の注意が求められます。

今回の相談のように、応募者の受付情報を一括管理してグループ内の関連会社に配信することは許されても、その応募者の採用選考が進んで関連会社毎の採用面接結果情報をまとめて共有することは許されるか、という点は問題です。まだこれについては判例も無いようですが、先日、企業人事労務関係者の勉強会でこの問題を議論したところ、とある企業では倫理上の問題から例えグループ内企業であっても採用選考情報(つまり誰が内定したかという情報等)については情報交換を禁止しているとのことでした。

ITが進み、個人情報の取扱がますます容易になってきておりますが、だからこそこういった情報を扱う採用担当者には最新の注意が求められてきています。間違っても、自社の内定者に対して「君は、うちの親会社を受験しているよね?どうする気なの?」なんて質問はうっかりでは許されないでしょう。

GWを前に企業の内定出しも進み、採用担当者としては内定者の入社意志の確認に神経を使う時期になりました。学生からの相談内容もこれまでの自己紹介や面接対策から、内定を貰った企業に行くべきか辞めるべきかという相談が増えてきています。最近、ちょっと気になる相談は、グループ採用を行っている企業の内定者からのものです。ネット時代になって応募者の採用選考プロセスがしっかり管理できるようになった反面、新たな課題が出てきたようです。

企業のグループ採用とは、一般に複数の関連会社(子会社)をもつ本社(親会社)がその知名度を活かして関連会社全体の広報活動および採用応募の窓口を行うものです。企業にとっては知名度の低い関連会社の採用広報を支援でき応募者の管理も効率化できますが、応募者にとっては募集内容が関連会社間で待遇が違っていたり、最終的に自分が何処の会社になるか不明確という不安な面もあったり、たまに法律的な問題(雇用条件を明確にせずに内定を出す場合等)になることもありました。

今回の学生さんの相談は、グループ採用企業内の数社に応募していたところ、幸いにもその中の1社に内定したというもの。ところがこの応募者は同グループ内の他の関連会社が第一希望で、並行して採用選考を受けていたのですが、先に内定した企業から入社意志確認の誓約書の提出を求められてしまったのです。勿論法的には、誓約書を出したとしてもその後の採用活動を拘束することはできませんが、グループ内の他企業を受けることは、すぐにわかってしまうのではないか、と心配しておりました。仮に、第一希望の企業に内定したとしても、先に内定した企業を辞退するのにグループ内他企業に入社するのは言いにくいことでしょうね。

本来であればグループ採用を行う企業は、こういったグループ内の併願問題については事前に応募者へ明らかにすべきことなのでしょうが、残念ながらまだ徹底している企業は少ないようです。最近ではグループ企業内に人事アウトソーシングの専門会社を作り、応募者のデータを一括管理するところも多いですから、企業側の方で学生の併願状況を把握することは技術的には容易になったことでしょう。しかしその情報の取扱には細心の注意が求められます。

今回の相談のように、応募者の受付情報を一括管理してグループ内の関連会社に配信することは許されても、その応募者の採用選考が進んで関連会社毎の採用面接結果情報をまとめて共有することは許されるか、という点は問題です。まだこれについては判例も無いようですが、先日、企業人事労務関係者の勉強会でこの問題を議論したところ、とある企業では倫理上の問題から例えグループ内企業であっても採用選考情報(つまり誰が内定したかという情報等)については情報交換を禁止しているとのことでした。

ITが進み、個人情報の取扱がますます容易になってきておりますが、だからこそこういった情報を扱う採用担当者には最新の注意が求められてきています。間違っても、自社の内定者に対して「君は、うちの親会社を受験しているよね?どうする気なの?」なんて質問はうっかりでは許されないでしょう。

 

第44号:学生の相談からみる現状

4月の中旬になり採用選考も本格的になりましたが、今年も内々定を取れる学生と取れない学生とに二極化しているようです。今回は、ダイヤモンド・ビッグ&リード社でのキャリア・セッションにおける相談内容をご紹介しましょう。来訪する学生の希望者に対しては企業でと全く同じスタイルで模擬面接を実施しておりますが、内々定の取れない学生には下記の点がよく見られます。

・正解探しから抜け出せない

熱心に多くの企業に応募する学生にありがちなのですが、「どういえば受かるのですか?」という正解探しから抜け出せていません。採用選考で正解を求められるのは初期選抜の段階だけで、最低限の基準をクリアした後は、個性の比較になります。内々定を取った学生の回答はその個人と一体となって意味があるので、同じことを他の応募者が話しても同じ結果にはなりません。極めて基本的なことなのですが、特に自己主張の強い性格の学生にはこのことを理解するのが難しいようで、言い方をあれこれ探して変えているうちに、自分の言いたいことがわからなくなる循環に陥っています。気づかせるのに最も時間がかかるタイプです。

・自己主張したいポイントにオリジナリティがない

採用面接で悩ましいのは、最終的に相対評価になりますのでどんなに良い志望動機や自己PRでも他の応募者と同じ回答では差がつかないという点です。一次面接をクリアしてもなかなか内々定を取れない学生にあるパターンで、第一印象ではそつなくまとまっていて減点するところはなくても、加点ができない応募者です。例えば今年は「リーダーシップ」を持った学生を求める企業が多く、「貴方が何かリーダーシップを発揮した実例をあげて下さい。」という質問が増えています。学生の回答でワンパターンになっているのは、「私はみんなを引っ張っていくタイプではないのでリーダーシップはありませんが、相手の話を聞くのが得意でメンバーの意見の調整役やまとめ役をこなしてきました。」というもの。「リーダーシップ」にはいくつかのタイプがあるのですが、何か指導的な役割をこなしていないとリーダーシップが無いと思いこんでいる学生が多いです。「私の考えるリーダーシップ」という点を明らかにすると、自分の意見がでてくると思うのですが。

・回答内容の関係が明確になっていない

採用面接ではいろいろな質問を行いますが、その回答内容が一貫していないことがあります。基本的な「志望動機(結論)→自己紹介・PR(理由)→エピソード(実例)」という流れができておらず、それぞれの質問の内容で主張したいことが別々になっている、または明らかになっていないケースです。

一方、「エントリーシートに、こう書いてしまったので志望動機はこう言わないと・・・。」とか「一次面接で、こう言ってしまったのでこう言わないと・・・。」という点に悩む学生もおりますが、これは採用選考を通じて学生の企業理解が深まることを採用担当者はわかっているので、変更した回答内容の筋が通っていれば気になりません。

限られた時間での採用面接では、全ての会話はその人を理解するためのものです。応募者は全ての回答を自分が何をアピールしたいのかという意図から回答して欲しいものです。趣味を伺うのも世間話をしているわけではないのですから。

第43号:就職ガイダンスからキャリア教育へ

桜咲く日本の4月は新しいシーズンの始まりですね。企業人事部は新入社員の受け入れに、大学就職ご担当の皆様は新入学生の受け入れに慌ただしく追われる季節です。大学生のキャリアに関する講演やトレーニングを行う私の方にも今期のお問い合せを戴くことがありますが、最近は就職ガイダンスというよりもキャリア教育という視点でのご依頼が増えてきました。時には教授と協力して正規の授業の講義として行うこともあり、徐々にではありますが、大学改革もようやく春を迎えつつあるのかな、と感じます。

この春は多くの企業業績も上向いておりますが、少数精鋭の号令の元、採用と能力開発に関わる人員は削減されたままで、両方の業務を兼務している方は多いです。今はまさに新入社員の研修プログラムが始まったところですが、企業と大学とは似た課題を抱えているようにみえます。例えば現在、若年社員層の能力開発の基本路線は外部業者を使ったアウトソーシングを導入することであり、優秀なインストラクターを確保することがポイントですが、これは大学就職担当の方が職業ガイダンスの講師を選定するのと同じことです。そして厳しい競争を越えた上級社員になると、コーポレート・ユニバーシティという名の社員講師(その企業の役員やトップレベルの業績を出している実力者)が直接指導したり、留学として社外の修行に出したりしますが、それは大学上級生のゼミや、交換留学にあたるのかもしれません。

さて、こういった新入社員・学生向けのアウトソーシング中心の能力開発スタイルには2つの課題があるかと思います。

まずは、星の数ほどある業者のメニューや、講師をどう組み合わせて全体のプログラムの方針を考えるか、ということです。大学の就職ご担当の方からは、「今年はこんな内容で実施するつもりですが、他に何かご提案はありますか?」というお話をよく伺います。各プログラムは十分な内容で、新しいメニューを追加する必要は無いようですが、気になるのはそこには全体に流れる思想はあるか?各メニュー間の関係はとれているのかな、という点です。

次に、そのメニューを受講していく新人の進捗状況はどのようにフォローするのか、という点です。企業においては、ここをフォローするのがOJT(On The Job Training)という各配属現場の先輩社員による指導やナレッジ・マネジメントというITのシステムです。小規模な大学であれば、学生全員に面談を行ってきめ細かく指導することもできるでしょう。しかし、ある程度の規模を越えた時、就職担当者だけでは対応は不可能になり、それを支援するシステムやチームが必要になってきくるのではないかと思います。

また、就職活動からキャリア開発活動へ、就職ガイダンスからキャリア教育へ、という課題の答えもここにあるのではないでしょうか。時節柄、就職年次だけではなく、新入生からキャリア開発教育が必要だ、という声を多くの大学からの方々からお伺い致しますが、まだ日本のどこの大学もこれといった切り札は持ち合わせてはいないでしょう。しかし、大事なのは暗中模索しながら実行することで、それはまさに個人のキャリア形成と同じことではないかと思います。同じやるならば、企業の能力開発も大学のキャリア開発も、同じ豪華なフルコースのメニューを作るだけではなく、例えスープの一皿だけでも暖かい我が家だけの手料理のメニューを作ってみたいものですね。「ガイダンス」から「教育」へ進化させる秘密のレシピもそこにあるのではないでしょうか。

 

第42号:模擬面接を行って-2

前回は大学就職部主催の模擬面接のことをお伝えしましたが、今回は学生サークル主催で行われた模擬面接について書きましょう。ダイヤモンド・ビッグ&リード社のご協力を得て会場を借り、ある大学のテニス・サークルを母体とした就職活動中の学生の集団に、模擬面接を行いました。集まった学生達は積極的に企業説明会を回り、自己分析や志望動機もずいぶんと練れてきていますが、まだまだ固定化した概念から抜け出せない方も多いです。

自己紹介や志望動機に慣れてきた学生でも、いざ模擬面接を行ってみると、会話の内容が曖昧な点があり、評価できない時があります。会話の内容は、しっかりと「結論」→「理由」→「事例」という構造になっているのですが、個別の表現が相対的になっており、その経験の具体的な点が理解できないときです。

例えば、以下のような自己PRをよく伺いますが、これでは全くポイントになりません。

「私はリーダーシップには自信があります。大学でも最も厳しいと言われる××ゼミに入り、ゼミ幹事としてリーダーシップをとり、他大学とのディベートにおいて優秀な成績をおさめました。またテニスのサークル活動ではトレーニング・キャプテンとして効率の良く上達するメニューを考案し成果をあげました。」

・最も厳しいと言われる××ゼミ→何が基準で厳しいかわからない。

・ゼミ幹事としてリーダーシップをとり→どんな役割かわからない。

・優秀な成績をおさめました→どんなレベルかわからない。

・効率良く上達する→効率、上達の度合いがわからない。

・成果をあげました→どんな成果かわからない。

揚げ足取りのような指摘で恐縮ですが、採用面接においての鉄則は応募者のことが分かるということです。「分かる」ということは言葉通り、他者と分別されて理解する、ということであり、面接での抽象的・相対的な表現を具体的・絶対的な表現の理解に変えていく作業とも言えます。上記のような自己PRがあった時は、それについての「状況」「役割」「行動」「成果」を曖昧な表現でなく回答して戴くまで質問を行います。(ただ、あまりに回答が要領をえないと、「判定不能」ということで面接を終了します。)最近、流行っているコンピテンシー面接も、誰が見ても客観的に変わらない行動・事実にフォーカスした質問を行い、それが自社の求める人材像と一致しているか、という観点で行われています。

さて、模擬面接を行っていると、短期間に上達する人と、そうでない人が居ります。その差は何処にあるのでしょうか?これは人のアドバイスや意見を素直に受け入れられる(自分の見方を変えられる)かどうかのようです。有名校で頭の良い学生ほどよくある「正解探し」の方法論に目がいってしまい、自分が通らなかったので自分の考え方を変えよう、という意識になりにくいようです。それまでその方法で成功してきているだけに意識を改革するのは難しいのかもしれません。

こんな時は、ゆっくりと長い会話をしたり、グループ・ディスカッションを行ったりしていると効果があるようです。要は自分を冷静に客観的に見て貰う機会をつくることですね。しかしこうしてみると、就職活動中の学生にとって模擬面接ほど有効なキャリアカウンセリングはないかもしれません。

 

第41号:模擬面接を行って

先日、大学からのご依頼で、Professional Recruiters Clubのメンバー数名と模擬面接を行って参りました。いろいろな業界から現役面接担当者が腕まくりをしてお伺いしたのですが、残念ながら多くの学生の方々がまだまだ準備不足で、こちらの期待するレベルまでの面接はあまりできませんでした。まだ時期が少し早いので仕方のないことかもしれませんが、基本的な心構えの不足は今すぐにでも直して欲しいものですね。

模擬面接は本番さながらに、学生の挨拶、立ち居振る舞い、笑顔から、面接における会話中の敬語、論理構成等を見ていくものです。客室乗務員やアナウンサーを採用するのならともかく、実際の選考では多少のマナーや敬語の失敗などは気にしません。しかし、「だからまだできていなくても良い」と考えるのと、「だけどマナーもできるだけ頑張ろう」と考えるのとは大きな違いがあると思います。その心構えの有無が、事前の準備になって現れるものだと思います。つまり、マナーがちゃんとできるということは、それ自体を見るというよりは、それによって準備をしてきたな、ということが評価できるのです。そして、実際に準備をしてきた方は、より高いレベルまでのトレーニングができるのです。

今回の模擬面接においては、事前に準備をしてきた学生は3分の1ほどで、その他の学生さんは、とりあえず受けてみよう、という様子でした。前者の方は、面接の本題である論理構成や質疑応答に入っていけるのですが、後者の方はそこまで話の内容(自己紹介・志望動機)がまとまっておらず、表面的な敬語やプレゼンテーション・スキル、自己分析の仕方の指導に終わってしまいがちです。現役の面接担当者が来たことで、良いキッカケになったとは思いますが、これでは折角のチャンスが勿体ないと思いました。不合格にならないポイント(一次選考の合格レベル)は指導できても、更に他者との比較による合格レベル(二次面接以降の合格レベル)までは指導できません。

しかし、この模擬面接を見ていて、最近の企業説明会での参加学生の1シーンがふと想起されました。今はちょうど企業説明会が最盛期を迎えており、学生は多くの企業を足繁く回っております。しかし、事前にその会社のことを予習することは少なく、とりあえず行ってみてその説明会の雰囲気が良かったら応募する、という学生が増えています。これは全く今回の模擬面接を受ける態度と同じではないでしょうか。最近の企業説明会では選考を伴わないものも多く、学生に予習を求めないものがありますが、そういった風潮がますます学生の「とりあえず思考」を増やすことになっているのかもしれません。(そういった事前準備をしていない学生を選別するためにエントリーシートを使うなら、お互い壮大な労力の無駄ですね。)

ということで今回の模擬面接では、「企業セミナーに参加するなら、最低限その企業のホームページを見て、質問を一つは持っていって下さい。」ということまでをお伝えしました。これも必要なものがすぐに入手できる情報過多の時代がその背景にあるかと思いますが、受け身ではなく積極的にチャンスを活かす若者になって欲しいと思います。マナーや敬語については、短時間に習得することもできますが、その下にある基本的な心構えを築いていくのは時間がかかります。就職指導のご担当の方も、この点にいつも頭を悩ませていることでしょうが、できるだけ早く気づいて欲しいものですね。今度の模擬面接では、カルチャーショックを与えるような圧迫面接をやってみましょうか?

 

第40号:エントリーシート超高速評価法

時節柄、大学就職課や学生サークルから、エントリーシートの書き方の指導についてご依頼を多く戴くようになりました。エントリーシートの一番大きな役割は言うまでも無く、応募者を一定のレベルに保つための選抜機能です。学生の方々は多くのエントリーシートを前にして汗だくで書いておられると思いますが、それを受け取る採用担当者もネジリ鉢巻きで評価しています。今回はその舞台裏を少しご紹介しましょう。

エントリーシートの利用目的については、企業毎でかなり異なります。書類選考に使っていたり、単なる面接の補助資料であったり。選考方法についても、採用担当者が総出で全てに目を通している企業もあれば、外部の業者に評価をアウトソーシングしたりと千差万別です。書類選考を行う場合、大量のエントリーシートを高速に評価するためにはいくつかのコツがあります。(これはある企業の例です。)

1.見出しを見る。

2.数値(アラビア数字)を見る。

3.実例(固有名詞)を見る。

第一段階は、「読む」のではなく「見る」のです。見やすいエントリーシートは要点がまとまっていて内容も充実していることが多いので、ザッと見て見やすいエントリーシートをまずピックアップするのですが、その際にチェックするのが上記の3点です。「見出し」があるということは、結論が先にあるということです。「数値」(漢数字よりアラビア数字の方が見やすい)があるということは、説明内容に具体性があるということです。「実例」はアピール内容の具体性ですが、ここにキーワードになる固有名詞があるということは、説明内容が概念化(簡略化)されてわかりやすいということです。

こうして第一段階をクリアしたエントリーシートを、じっくり読み始めますが、ここではどちらかというと加点法より減点法が中心です。つまり、ユニークなことが書いてあるか、ということよりも書くべきコトがちゃんと書いてあるか、を読みます。あまりに的はずれなことを書いていたり、かなり特殊な言葉や奇怪な表現があったりすれば敬遠します。たまにエントリーシートの設問にも風変わりなものを見かけることがありますが、それは応募者が極端に多い一部の業界で、逆に一般的な回答よりもユニークな回答を求めているのでしょう。

最近、ちょっと気になるのが小学生の作文のような書き方です。自己分析で過去の自分を振り返るのは良いのですが、その実例に小学校や中学校の時の原体験を書き、「本当の自分」を語ろうとしているものがあるのですが、やや幼児性を感じてしまいます。

ここでご紹介したのは、ある企業の方法のひとつに過ぎませんが、実際、エントリーシートだけで応募者を評価するのは困難です。先日、発表になった経済同友会の「企業の採用と教育に関するアンケート調査」でも、企業が最も重視する採用選考方法・基準は、「面接結果」になっておりました。まずは採用担当者が不合格判定を出せないエントリーシートを書くのが一番ではないでしょうか。

 

第39号:採用プロセスから雇用プロセスの勝負へ

2月に入りいよいよ採用担当者が腕まくりする時期ですが、今年は就職倫理規定遵守で4月以降にスケジュールを仕切り直しする企業も出てきています。それで時間に余裕ができたからというわけではないでしょうが、新卒採用の方法に新しい考え方や方法を導入しようとする企業がチラホラ出てきました。これらは採用方法の工夫だけではなく、採用後の人事システムに踏み込んだ雇用プロセスの変更という考え方です。

応募者の意欲を高めるために、採用担当者はいろいろな工夫を行います。仕事理解を進めるために企業セミナーにより具体的なケース・スタディを入れたり、インターンシップを導入したり。中には企業説明の前に「働くことは何か?」というキャリアデザインのような職業教育を行うセミナーまで登場してきています。こういった採用プロセスの工夫は学生から見ると面白く、個人重視で扱ってくれる優しい企業と映り、応募意欲の向上に確かに繋がっていきます。そういった派手な動きの中で、地味ながら今後の採用市場に大きな意義をもつと思われる改革が出てきました。三洋電機の新卒採用対象者の拡大策です。

既にご存知かと思いますが、三洋電機では来年より大卒後3年以内の社会人をこれまでの卒業見込みの学生と同じく「ポテンシャル採用」として同様に扱うそうです。この方式は日本の大手製造業で初めての試みで、日本の雇用慣行にとって画期的なことではないかと思います。現在、殆どの企業の新卒採用対象は「卒業見込み」とされており、社会人経験の浅い「既卒」の若者を除外しておりますので、一度、入社した企業が肌に合わないとわかっても簡単に転職することはできません。しかしこの方式の会社があれば学生にとっては不要な就職浪人を避けることができたり、入職時におけるミスマッチを早期にやり直すことができたりします。

この方式は、結果として3年以内の退職者を益々増やすことになるかもしれませんが、学生が企業を知るにはどんなに懸命に企業研究をしたとしても(採用担当者が採用プロセスを工夫したとしても)、実際に働くことに勝るものはなく、より良い就職活動につながってくると言えるでしょう。反面、ひとつの企業で頑張る意識を衰えさせる懸念もありますが、企業が従業員の自立という言葉を使い始めた以上、仕方のないことです。また、最近は新卒採用数が景気動向で大きく左右され、就職のしやすい年、そうでない年の差が大きくなり、学生の資質よりも卒業年による運不運が就職に大きく影響してきていますが、この方式ならリターンマッチが可能です。

これからは新卒採用と中途採用の垣根無くなるという大きな流れがあり、こういった雇用プロセスの改革をする企業は徐々に増えてくると思われますが、それこそが企業と個人の関係を考える人事の大事な仕事です。お祭り騒ぎのような採用プロセスの工夫ではなく、地に足の着いた雇用プロセスを改善して優秀な人材を惹きつけるのがこれからの採用担当者の仕事になるでしょう。折角、採用した人材を三洋電機に取られないように頑張らないといけません。

 

第38号:3年以内に3割が辞めるのは異常なことか?

先日の厚生労働省の発表では、今春の大学卒業者の内定率が73.5%となり現在の計算方式になってから(平成8年から)過去最低になったということでした。就職指導をされる方には厳しい数字ですが、別の面からの数値を比較してみると、あながち悪いとも言いきれないと思います。統計数値は貴重な情報ですが、他の関連指標との比較や環境の変化、統計期間の設定等に気を付けて判断したいものです。

内定率の低下の背景にはいろいろな事情があるかと思いますが、この数値の見方が難しいことは皆様の方がよくご存知だと思います。いわゆる「母集団の設定」で内定率は左右されますし、経済不況と学生の意識の多様化によって就職指導も過去とは比較にならないほど難しくなってきています。それにもっと大きな数値の変化は、大学生の全体数の増加です。1992年の4年制大学卒業者数は44万人であったのにたいして、2002年にはこれが55万人と、なんと11万人も増加しています。サービス産業の台頭が高等専門教育を受けた学生を求めているとはいえ、これだけ大学生が増えれば進路が多様化するのも当然なことであり、卒業=就職という公式が変わってくるのも当然でしょう。

またよくいわれる「7・5・3の法則」も怪しいものがあるかと思います。「新卒大学生は就職して3年以内に3割が辞める時代です。」と、多くの就職評論家がこの数値を取り上げており、第二新卒が急増しているかのように訴えておりますが、15年前の1988年でも29.4%の新入社員が入社3年以内に退職しています(旧労働省資料)。(この数値を使う方が15年前の数値を知らないことは多いです。)今まで知らなかった数値が出てくると急増しているように感じてしまいますが、問題は環境と質の変化の方ですね。

15年前というとちょうど私も社会人4年目頃で、まだまだ転職者は少ない終身雇用全盛の時代です。志をもって新たな分野に挑戦すべく転職・退職した者を、企業や社会はどちらかといえば裏切り者とか落伍者というようなイメージで見ていました。キャリア自立を従業員に求める今とは雲泥の違いです。

というわけで、この大学生が急増して卒業後の進路が多様化している時代に、内定率が下がるのは当然のことでしょう。勿論、ここで何の目的もなくフリーターになってしまう学生を肯定するつもりは全くありません。そもそもフリーターは、「なる」ものでも「目指す」ものでもなく、無職の「状態」を指すものです。何かの志をもって励んでいる若者を、フリーターという統計に入れてしまうことも問題だと思います。

学生の生き方が多様化していく時代、内定率=就職率だけではなく、内定率=意識自立率(目的発見率)としてこちらは100%を目指したいものですね。数値を楽観的にみようというわけではありませんが、自信をもって職業指導をしようではありませんか。